考えさせられる記事だった。これはいろいろ考えるなぁ… 私はメタルのことは分らないし、この媒体?さん?がどういう立ち場の人なのかも分らないけど。https://t.co/nFt4GWCUcm— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2018年5月29日
まず思ったのは、これはいったいどういう立ち場の人が書いているんだろうか…ということ。広告は入っているようだが、すべてアフィリエイトっぽいので、普通に1メタルファンのサイトのように見える。プロフィールを見たら漫画家さんとある。しかしすごい量の記事と情報量で、ものすごい音楽に愛情を持った人なんだろうなということは誰が観ても確実にわかる。
大手のコンサートプロモーター/主催者さんは大変だ。ウチの場合など、ウチの公演に何かあったら私が誠心誠意、心をこめてお客さんに説明するしかないわけだが、この「LOUD PARK事務局」の構成員にクリエイティブ・マンさん以外に、どこの誰がどこのくらいかかわっているのか知らないが(放送局とか専門誌?)、主催者でもない第3者に、こんなにあれこれ言われてしまっていいのか…という疑問がいやおうもなく立ち上がってくる。っていうか、この人が書いている、これらの理由が開催中止の理由とは限らないではないか…と思うのだ。
分かりにくいかな… たとえば私が「もうヴェーセン呼ぶのやめました」と発表する。そしたらファンの人が「なぜ野崎はヴェーセンを呼ばなくなったのか」という記事を書く。もしかしたら私と個人的に話しているような私に近い人、バンドに近い人が書くかもしれない。音楽ライターの人が書くかもしれない。で、その記事を大量の人が読み、それがヴェーセン来日の実情だと周りは理解してしまう。つまりはそういう危険性だ。
うーん、全然規模が違いすぎて比喩にならないか。つまりこの記事は、当事者でも何でもない一般論としてファンの人が書いているにすぎない、ということなのよ。しかしながらその内容があまりにも鋭いので、しかも愛情に溢れているから、これだけ多くの人にシェアされているのだと察する。いや、私はメタルのことはよく分らないので、何を言えたもんかと思うのだけど… で、これをネタに音楽業界人たちが、私のFBのウォールのあちこちで議論が巻き起こしているのだった。なんだか、いろいろ考える。1ファンのこのブログ主はともかく、近くにいた彼らはいったいどういう立ち位置なのだろうか、と。
でもね、また話は戻るけど、ウチがそんな事態になった時、ファンの人があれこれ書けば書くほど、当事者である私は「分ってないな」と思うと想像すんだよ。もちろん、当事者よりも外部の人の方が冷静にビックピクチャをより理解している、という可能性もあるかもしれないよ。が、多くの場合において、当然の事ながら、一般に公表している情報なんて氷山の一角で、実際は多くの事が水面下で起こっているのだから、氷山の一角しか知らない一般の人が、どれだけ理由を分析しても限度があるのだ。そしてその水面下のことは、主催者でなければ、分らない。
ただウチはいい。というのは、それがたとえ当事者によるバイアスがかかった思いとはいえ、その主催者の思いを私もそのまま発言できるからだ。水面下のことだって、自分の判断である程度は公表できる。個人でやっているメリットはそこにある。それにチケットを買おうとしてくれていたお客さんも、いったい私が何とその事態を説明するのか、多少は聞きたいと思ってくれるであろう。そして私がこう言えば,それが一応、実情に一番近いものだとお客さんたちは、ある程度認識してくれるわけだ。
だからこの記事がバズって、いろんな人がこれを読み、主催者の目にも止まるだろうに、主催者さんは今、何を考えているんだろう、と私にはそっちの方がすごく気になった。どうか、主催者さんや、LOUD PARK事務局の人、参加予定だったアーティストさんたち、そして今年の中止を決めた人が、必要以上に傷ついていませんようにと願う。ただでさえ言いたいことはたくさんあるだろうに、その言えない事にストレスが倍増してませんように。それとも「よかった、オレたちが言いたいこと言ってくれた!」と思うのか。
…いや、いずれにしてもプロの人たちはそんなの慣れっこか。
イベントが中止になる/ならないというのは極端な例だけど、そうじゃない案件だったにせよ、主催者としては、あれこれ自分以外の人が公演やツアーの話をしているのが耳に入り「分ってねぇーな」と思うことは、多々有るもんだ。でもある程度のことはグッと飲み込み、主催者としてお客様の意見をしっかり受け止め、次への反省へつなげなければならない。それも主催者の責任の1つであり、次の公演にも来ていただくための布石になるからだ。そんな時、本当に嬉しくなるのは同業者の「分ってくれてる」コメントだ。結局のところ分ってくれるのは同業者しかないないんだよな…といつも思う。だから私はLOUD PARK事務局に応援の旗を振りたい。何にも分っていない私だけど…
そして、まずこの記事を読んだ人に私が言いたいのは、ただ一つ。主催者はいろんな事情をかかえていて、それは音楽業界内ですら言えない事がほとんどなんですよ、という事。それを常に認識していてほしい、ということだ。それがまず前提としてあるのを忘れないでいてほしいな、と思う。
そして、それを前提にした上で、さらに話をこの記事に戻すと、とはいえ、この記事がバズっているのは、ここに音楽業界、特に日本の洋楽市場がかかえている大きな問題がかなりするどく指摘されているからなんだよな、と思うわけだ。本当によく書かれている記事だ。すごく分りやすいし。何より愛情がある。
私はメタルのことはよくわからないが 「世界で一番世代交代が出来ていない国日本」っての、めっちゃ響く。ワールド界隈も実際ひどい。
まず日本ではクラシックのホールは、滅多にワールド・ミュージックをブッキングしない。そこがまず大きな問題だ。だいたいはホールがやるのはクラシック(しかも本格的なものよりもテレビのバラエティに出ているような人たちがやるエンタテイメント系のクラシック)、次にジャズ、それに落語/歌舞伎/能楽などの伝統系が続く。それ以外に世界の異なる音楽を紹介しようという気概のあるホールさんはホントに数少ない。例えばロンドンのバービカンで見られているものは、すべて東京のオーチャード見られてもいいと私は思うのだが、内容をぜひ比較してほしいと思う。バービカンだけじゃない。ニューヨークやパリの名門ホールで見られているものは、普通に東京でも見られていいはずなのだが、まったくそれが実現できていない。
大手のカンバセーションが潰れて、今やプランクトンさん1社が大きなプロダクションものを一手に引受け、私のような個人プロモーターが小規模なものを抱えて孤高奮闘しているが、それでも限界がある。トーキョーで見せなきゃいけないものの20%くらいしか、来日が実現できてないのではないだろうかとすら思う。いや、もっと低いかも…
そもそも日本の音楽マーケットは、成熟しているようで、あまり成熟していないんじゃないかという気もする。単に分母が大きいため、どんなジャンルにでもマニアが一定数存在しているから成熟しているように一瞬見えるだけだけど…。そもそも日本の音楽業界ではタイアップなしで売れたアーティストは1人もいない。つまり戦略のプロがいて、初めて音楽が売れるのだ。それなのに音楽ファン、そしてアーティストたちというのは酷なもので、多くの人が「レコ社はなってない」「宣伝の仕方が悪い」「マネジメントのセンスがない」などと音楽業界で働く人たちのやり方を批判する。そのくせ、ほとんどすべての大衆はレコ社が作り出したメガ・ヒットが大好きだ。その証拠に洋楽も邦楽も「昔の名前出ています」的アーティストのコンサートが人気を博している。
それにしてもこのメタルブログ、よく書けている。「日本のメタルのファン人口を増やさなくてはならない」の部分では新日プロレスの「マニアがジャンルを潰す」を思い出した。これはメタルに限ったことではない。すべてのジャンルに言えることだ。マニアがジャンルを潰すのだ。
では、音楽業界が自信を取り戻すのはどうしたらいいか。それは…このメタル・ブログにも書かれていることだが、例え能率が悪いと言われようと、例えどんなに面倒くさかろうと、新しいファンを開拓していくことでしか生き残りはありえないと思うんだよね。一歩一歩地道な努力をする。足下のマニアに目を向けずに前をみて進む。それしかないのだ。今やみんながみんな最短距離を行こう、行こうとするけれど…
今、音楽はリスナーにとっては最高の時期を迎えていると思う。ただ「音楽業界」にとってはいろんな事が変化の時期で、ホントに厳しく難しい時期だ。音楽業界だけに限ったことではないのだが、今、世界は大きな変化の波にゆれる小舟のような存在なのだ。必死で新しくビジネス・アイディアやシステムを開発しても、その数年後にはそれらはまったく機能しない。先行投資しても回収なんて出来やしない。じゃあ、と言って安全を取り、保守的になって「様子見」している間に、日本は世界にこれほどまでに取り残されてしまった。
まぁ、それが業界の現在の状況なんだとは私も思う。私自身について言えば、どんなに小さくてもいいから、誰にも知られていない新しいアーティストを手がけると自信につながると思っているので、ごちゃごちゃ考えず、とにかく新しいアーティストを呼べるよう努力を続けるだけだ。私の根拠のない自信は実はそういうところから来ている。これは自分でなければ呼ぶことの出来ないアーティストだった、と言えるアーティストが何人かいる… っていうか、ウチにおいては、すべてそうかもしれない(いつも書くことだがグレン・ティルブルック以外/笑)。そういうのがあるから、まぁ、自分は続けて行けるんだろうな、と思う。その積み重ねだ。
が、辛いよな… 大手さんは何によせ規模をある程度大きくしないといけないわけだから、私のように赤字覚悟で新人やってみたら、数万黒字になった。よかった、万々歳!というわけにはいかないのだ。
先日インド祭に参加していただいた明治時代から続く王子の老舗パン屋さん、明治堂さんは、お店の名物カレーパンだけではなく、たった1日のこのイベントのために、クロワッサン・カレーパンまで作って出店してくれていた。そしてそれらをクールにすべて売り切ると、マスターは来年の北とぴあ文化祭の国名を確認し、かっこよく会場を去って行った。真のプロフェッショナルというのは、こうやって攻め続けて行く人のことを言うのだと思う。かっこいいよな…
みんなで頑張って行きましょう!