能町みね子さん『私以外はみんな不潔』を読みました。早朝の空気のような研ぎ澄まされた世界。

装丁も素敵。カバーをとると本作中に出てくる「ペンちゃん」も登場する

ピュアでヒリヒリする子供時代の感覚、私はこんなにヴィヴィドに覚えてない。 主人公は早くから文字が書けて読めて、絵も上手で、お母さんが裏紙を使って作ってくれたノートをベースに300ページにもおよぶ本を作っていたという…

これフィクションの体だけど、間違いなく能町さんの子供のころの話だ。そういう意味では高野秀行さんの『またやぶけの夕焼け』と似ているが、あっちは完全に普段の高野ワールドの延長なのに対して、こっちは今まで読んだ能町さんのどの本ともまったく違うのが興味深い。そこがすごい。

もっともわたしは能町作品では『オカマだけど〜』(爆笑)と、グリーンランドとウチのバンド:ナヌークが出てくる『逃北』(こちらも最高に楽しい)の2冊しか読んだことないから、能町さんのこと、それほどわかってないのかもしれない。とにかくエッセイである、あっちの2冊とはまったく違う世界。なんというか、すごい世界感がこの本の中に存在している。パワフルな1冊だ。

いや〜、研ぎ澄まされた感じで、普段斜め読みっぽい私も一語一句のがさないように、味わうようにがっつり読んじゃった。この世界にぐっと入り込んでしまった。すごい本だったわ。完璧に本の世界に入れる。そしてあっという間に読み終わる。

先生やクラスメイトを見るシビアな目。うーん、5歳にしてこの感覚か!? すごすぎる。いや、5歳だからこその感覚なのかもしれないが。子供にありがちなヒヤヒヤするようなエピソードもたくさんあり、とにかく読むことを途中で止めるのが難しい。

あのトイレとか汚いと感じると怖くなる感覚とか、とにかく鮮烈。このあと小学校編、ティーン編とか続かないかなぁ。いいや、これはこれで良いのか。

それにしてもこの帯の写真もそうだけど、能町さん、子供のころからめっちゃ可愛い! 装丁もすごく良くって、編集者や装丁担当者の愛を感じる。素晴らしい作品です。

 

PS
自分も幼稚園の制服(スモッグ)の袖口のきつい感じ、手がしもやけっぽくなる感じ…そういうのをありありと思い出してきた。何度か読み返したい。