「バンドにエイド」アーティスト紹介:ティモ・アラコティラ

心が綺麗な音楽家。ティモ・アラコティラ。こちらは南青山マンダラで行った「Timo Alakotila and piano」のローンチ公演。

大好きな日本でこのアルバムのレコード発売記念コンサートをしたいというティモの熱意に負けて、この公演を組んだ。正直、こんな小さい公演じゃ、彼も私も何もペイしない。でもやって良かった。そう思える素晴らしい公演だった。少人数ながらもわかってくれるお客さんがいて、ティモも私も幸せである。札幌公演もあったが、こちらは札幌のスタッフに丸投げ。札幌もすごく楽しかった、とティモは言っていた。本当にありがとうございました。



最初はティモのソロかー 地味な公演になるだろうなぁ、お客さんが来るのかなぁと思ったけど、思ったよりお客さんが入ってくれて、ホッ。っていうか、お客さん分かってるよね。この公演、チラシを印刷する予算すらなく、プロモーションもやり用がなく…本当にどうなることかと思ったのだけど、お客さんが入ってくれて、本当に良かった。

これで気をよくした私は「うん、やっぱり地味でも良い音楽のためにがんばらなくちゃだめだ!」「これこそ本当の自分の仕事だ」と奮い立ち、JPPの新作『Skywire』の発売を決めたのだった。あれはめちゃくちゃ良い作品だ。そして、またこれが全然売れず(笑)またもや撃沈。そんな風に「小さな成功に狂喜乱舞」→「音楽の力に励まされ」→「次なるプロジェクトに取り組むも撃沈」みたいなことを繰り返す馬鹿な自分がまだここにいる。でもいいんだ。こうやって私の音楽人生には素晴らしいミュージシャンとの出会いがある。

ティモは北欧の伝統音楽界でもっとも尊敬されている作曲家、編曲家、プロデューサーだ。誰もが「北欧音楽界で一番忙しい音楽家」と彼のことを呼ぶ。彼と演奏したいとこぞっていろんなアーティストが彼の周りに集まってくる。みんなティモと一緒に音楽を演奏したがる。おそらく参加したレコーディングは北欧のアーティストの中でもピカイチ。共演数はもちろん、ある程度定期的に回してるユニットの数もいれたら本当に莫大な数だ。全部は私も追いきれていない。そういや最近出たヴェーセンの3パートの譜面もティモが監修していた。とにかくみんなティモに頼っているのだ。

そんな大先生なのに、静かで大人しく、とてもとても謙虚な人だ。謙虚を額縁にいれて飾るとティモになる。そしてとてもピュアな魂の持ち主だ。本当にティモみたいなピュアな音楽的存在の生き物を目の前にしちゃうと、なんて自分は汚くて汚れた存在なだろうと思う。ティモは天使みたいな人だ。この天使度に匹敵するのは亡くなったデレク・ベル(チーフタンズ)くらいかも。ティモのことを考えると涙が出ちゃうんだ。なんかね。

この日のセットリスト。


ティモはこの時のソロ来日の言い訳?として(笑)東京マラソンに参加することに決めたのだった。大好きな日本でマラソンして、そしてコンサートをする。だから自分で航空券は払うよ、と言って、本当に自分で航空券を買ってきた。ライブでできたわずかなお金は滞在費とビザのお金に消えた。そして私たちには、素晴らしいコンサートを作った、という実績だけが残った。まぁ、これはこれで良しとするだろう。お金は他で稼げばいい。

ティモは自分に厳しくしないと自分みたいな人間はすぐだらしなくなっちゃう、と考えているような人で、自分にすごく厳しくてストイックなのだった。JPPで東京駅の前にあるホテルに泊まった時もよく皇居の周りを走った、とか言っていた。ジョギングやマラソンはティモのライフ・スタイルにあっているのだと思う。


いただいた差し入れ。いつもありがとうございます〜


東京マラソンの登録とか、いろんなこと、私も一通り体験したよ。なかなか興味深かった。


ゼッケンをもって誇らしげなティモ。ティモのお友達のY子さんと一緒にティモが走っているところを見たくて追いかけたのだけど、全然見ることができず。私たちはがっくり肩を落としたのだった。いろんな意味で予測が甘かった(笑)。ティモはそんな私たちにお寿司をご馳走してくれた。お台場でお寿司(笑)。

こちらはアルト・ヤルヴェラ(フィドル)、マリア・カラニエミ(アコーディオン)と一緒に来日した時のもの。札幌にて。


こちらは某関西のホールさんにて。JPPの来日時。ペリマンニの民族衣装で言われたので、このスタイル。黒いベストはペリマンニの象徴なのだ。


ワークショップもいいんだ。ティモは。人柄があらわれる。音楽に対する献身的な態度があらわれる。


こちらはノルディク・トゥリーの来日時。アルト(フィドル)そしてハンス・ケンネマルク(フィドル from Sweden)。


しかしノルディック・トゥリーは売れなかったなー まぁ、おっさんばっかりだからしょうがないのかな。でも今でもあんなに素晴らしい音楽は他にはないと思っている。どうやったらあぁいう音楽の素晴らしさを伝えられるんだろう。自分の無力感を感じる。ひしひしと…


天国みたいなすごい音楽だった。今からでももう一度くらい呼べるかしら。


このハーモニウム。アメリカから200年以上も前に来たもの。これをヘルシンキから日本まで運んだ。ツアーが始まる何日も前にティモが空港までハーモニウムを届ける。そこから通関して、初日の公演の場まで運ばれる。なんだかんだで人間の3人分くらいの経費がかかる。つまりノルディックトゥリーは三人バンドだけど六人分の飛行機代がかかる。しかも足がついていないから自分で歩いてくれない。このハーモニウムでなくてもいいとティモは言ってくれていた。レンタルも可能だよ、と。サンフォニックスさんに一台良い感じのハーモニウムがあって、それを借りたことも一度あったかな。でもやっぱり自分の楽器以上のものはない。またこのハーモニウムが日本にくることはあるんだろうか。写真は小諸美術館での公演にて。


今回JPPでもノルディック・トゥリーでもなくティモのトラックを『バンドにエイド』に採用したのは、実は彼とはこの2020年の秋に大きな企画もののツアーを計画していてそれが発表前に流れてしまったからだ。構想3年くらい。地味なティモをどうやって売るか、考えに考えて最高の企画を組み立てて1年以上スケジュールを押さえていたのに、本当に本当に申し訳ないことをした。なので、『バンドにエイド』が多少でもキャンセル料の足しになれば、ということがある。

加えてティモのトラックがあることで、CDが作品としてもいいものができると思ったんだ。ピアノソロのトラックがあるだけで、この『バンドにエイド』もきりりと音が引き締まる。一流の音楽を集めたって感じになる。

曲はティモとすぐ「あのソロピアノのCDから選ぼう」となったのだが、最後の最後まで「Primavera」と「Sciatica」の接戦となり、結局「Sciatica」に落ち着いた。明るくてリリカルで、なんかティモの心の中みたいな曲である。

ちなみにこちらがボツっちゃった「Primavera」


世間では『プリマヴェーラ』と言ったらこの絵だよね。これもインスピレーションだったりするのかな…今度あったら聞いてみよう。


あ、そうそう、ティモは昨年発売になった無印良品BGM24にも1曲参加してくれている。CDはこちらで購入いただけます。

ティモ、本当にいつもありがとう。まずはこの2020年の秋飛んじゃった某企画が再スケジュールできるように…。私だけの決定で進められる企画じゃないし、上手くリスケできたとしても、あと2年くらいは先になるだろうけど…なんとか実現したい。ティモも頑張って企画を練ってくれていたのだし、それを無駄にしたくない。とにかく頑張ろう。