いやー やっちゃいました。1日映画4本はたぶん今までやったことないな。2本は時々やるけど、3本も記憶にない。でも基本座っているだけなので、雨の1日をすごすには最高だったかも。
音楽映画の世界でも割と地味めなラインアップの4本。これが有楽町の4mのスクリーンで見れるということ自体がもう快挙!! 本当に企画してくれたピーターさん、Oさん、そしてご来場くださったお客様に感謝! 本当に本当にありがとうございます。
1本目は当然『サウンド・オブ・レボリューション〜グリーンランドの夜明け』。お客さんと見ると感動もひとしお。でも字幕とか見てると自分で何度も考えちゃう。あの字幕は翻訳家の方が訳してくださって、そのあと私がチェックし、あーでもない、こーでもないと変更していただき、納得のいくものとして仕上げたけれど、あそこはやっぱりあぁすればよかったな…とか思うことしきり(笑)。いや、つまんないことなんですよ。あれを縦書きで入れればよかったとか、こういう単語の方が伝わったとか。本当に翻訳者の方にはよくやっていただいたんです。
ちなみに和泉さんの字幕翻訳で特に好きな箇所。…というか、字幕があがってきて「おっ、そう来たかー」と思って感激した箇所をちらっと紹介すると… デンマークによる政策で閉鎖されてしまった炭鉱の街クルリサットを歌った歌の歌詞。最後「クルリサット」と街の名前がリフレインされるんだけど、それを「クルリサット」とかカタカナで入れてもあんまり意味もない。それを「炭鉱の町よ」と入れてくれた翻訳者のセンスがナイス。そうじゃなければ人の名前かと思っちゃってもおかしくない箇所なので、本当にこれはナイスと思った。歌詞を書いたマリクの意図をしっかり拾ってくれている。
あとバンドにプロコルハルムの前座が来た話のところ。ペールの言葉。「私たちの演奏はそこそこだったと思う」「そこそこ」って言葉がいい。「まぁまぁ」とか「完璧ではなかった」とか言っちゃうと、またニュアンスが違う。それを「そこそこ」っていう日本語にしたのが、もう抜群の匙加減だと思う。
本当に字幕に協力くださった日本映像翻訳アカデミーさん、和泉珠里さん、ありがとうございました。そうそう、あの翻訳の手配などをご紹介してくださったトーキョー・ノーザンライツの大谷さんにも感謝です。今回もかけるメイディアの件でもお世話になった。大谷さん、ノーザンライツの皆さん、やっと有楽町で上映することができました! ありがとう、ありがとう!!
本当にこの映画と出会えてよかった。よく「野崎さん、もう映画はやらないんですか?」と聞かれるけど、もう映画はこれ1本で十分。生涯この1本。この映画と一緒に私は死にます(笑)。本当に本当にありがとうございました。この映画の次の上映は平日の夕方14日になります。上映後には、野崎がピーターさんとトークするので、こちらもお楽しみに。
そして2本目に見たのは『大海原のソングライン』。これめっちゃ気になってたのでした。海は世界をつなぐもの…って言うのは、ケルトの世界でもよく言われることなんだけど、改めて。
参加したアーティストたちへのフェアな還元する(出演料という一発ではなく利益を分配しているそうです。詳しくは公式ページを)、プラスチックなどは使わないなど明確なメッセージを打ち出した作品。台湾人の女性プロデューサーとオーストラリア人のティム・コール監督がタッグを組んで、今でも延々収集活動をしているのだそうだ。映像の美しさと、海の波のような心地良い音楽。いや〜、これは素晴らしい! それに基本全部「海の音楽」だから気持ちいい!
なんというか「ソングライン」っていうコンセプトにも興味があったんだよね。元々はオーストラリア大陸のアボリジニの、歌で人間の思想がつながっていくということを言っているのだけれど、英国の名門ワールドミュージック誌のSONGLINESや、実はアイルランドでも「ケルティック・ソングライン」というドキュメンタリー(当然ホスト役はドーナル・ラニー)が作られたりと「ソングライン」というコンセプトには私もとっても興味がある。いつか予算があったらそういうコンセプトの公演を作ってみたいなぁ!
3本目は『スケッチ・オブ・ミャーク』。もう10年前の映画なんだねぇ。久保田真琴さんによる宮古島のおばあちゃんたちがつなぐ伝統のドキュメンタリー。もうおばあちゃんがかわいいのなんの。今回みた4本の中で自分の映画はともかく(笑)涙が出たのは唯一この作品だった。ちょっとポーランドの農村マズルカ・リバイバルにつうじる、やばいものを感じてしまったから。あぁ、やばい。グッときた。
そういえば沖縄で『サウンド・オブ・レボリューション』をかけてもらった時、下地イサムさんに宮古のことを教えてもらったっけ。(その時のレポートはここ)
こういう土地や歌や文化に妙に沁み入ってしまうのは、東京に住むものの感傷なのかなぁ。おばあちゃんたちの顔のシワ一つ一つが本当に魅力的。何かを信じて生きている人は強いなぁ、とも思う。こういった純粋な人たちから見たら、私なんてガツガツして自分のやりたいことやって、ゴミや二酸化炭素いっぱいだして、まるで悪魔みたいな存在に見えるだろう。最後のマズルカ・フェスティバルならぬアリオン音楽財団が主催した東京草月ホールのコンサートのシーンにも涙。ステージにあがる素人のおばあちゃんたちの可愛さ、MAX。いや、私は田舎には住めないし、私にはこんな風に自分を殺して謙虚に文化の担い手なんてなれない。だって荒波超えても自分のやりたいことがありすぎるから。でもこんなのにめっちゃ惹かれるし、憧れるんだ…とかなんとか、もうなんていうか涙がでるほど共鳴しちゃうのであった。