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2016年3月29日火曜日

読みました! 名著「アラスカ物語」

読みましたよ。世紀の名作「アラスカ物語」新田次郎作。北極に行って探検家になりたいんだ、と友達に言ったら、だったらこれは絶対に読んだ方がいい、と薦められたのだ。

実は新田次郎自体はじめて読んだ。私はそのくらい本を読まない。でも新田次郎は有名だよね。皇太子さまも愛読しているという山岳文学の大巨匠。

文庫本を持ち歩いていて「今、これ読んでんだ〜」と人に見せると、「いいよね、新田次郎。それもいいけど、●●も面白いよ」とか、大抵のまともな大人の人たちは、すでに新田次郎を2、3作、読破済みだ。うーん、ホント読むべき本も読まないで、バカな大人になっちゃったな…私。

で、読んでみたよ。なるほどすごい文豪だということは一発で分かる。彼の作品の悪口を言う人はいないだろう。時代を超えて読みやすい文章、テンポがいい構成… いや、ホント非の打ちどころのない大傑作だと思う。

日本の社会から流れ流れて、アラスカにたどり着いた男、フランク安田。最初のシーンはなんと彼が北極を単独歩行するところから始る。(この風景の描写は素晴らしかった。まさに現在のわたしの極地マイブームを直撃!)そして、あれこれあった末、アラスカの地に住み着き、環境の変化によって餓死寸前のエスキモー村を救うことになった。実話だという。インディアンの酋長と交渉するシーンとかドキドキするし、民族感のトラブルとか状況とか、北極研究にいそしむ私にとっても興味深い話も盛りだくさん。いやはやスイスイ読めちゃいました。

が、ただあまりにも主人公がヒーローすぎると思った。なんかかっこよすぎるだろ、この人。で、また奥さんになるエスキモー女性も人間が出来すぎている。特に砂金を見つけるシーンとか、ちょっとありえない感じの展開だ。うーん。が、確かにイヌイットの間では、そんな風に芝居がかった逸話になって伝えられているのかもしれない。それは非常にイヌイット的だ。

結局のところ私が読んでいて一番盛り上がったのは、最後におまけのように添付されている新田次郎の取材日記の方だった。「アラスカ物語」は、こういう小説形式ではなく、実際に作者が体験したエピソードを中心に追いかけて行くようなノン・フィクション本だったらもっと面白かったのに、と言ったら贅沢だろうか。まったく私ったら巨匠に対してなんて感想を書いておるんじゃ!?(笑)

というか、これはジャンルが違うんだよね。なんというか、「時代小説」っていうんだろうか。wikiによれば、新田次郎本人は山岳文学家としてより、歴史作家として認められたかったらしく、作品がNHKの大河ドラマで映像化されることを、とても強く望んでいたのだという。となると、やはりこのスタイルで書きあがえるのが良かったのだろう。

私がこういう時代小説みたいなものを普段まったく読まないせいだね。だからこういう話の語り方に違和感があるのかもしれない。

一方で、新田次郎が実際にアラスカに調査に行く話や、子孫に会おうとして拒絶さえ苦労する話は、短いながらも、私にはすごく興味深かった。それがつまらない空港でのエピソードですら… 大先生、海外が得意だってわけでもなさそうで(笑)ホントに苦労しながら取材されてる。

イヌイットの生活やライフスタイルについての記述は、今,原題においてもとても勉強になる。インターネットがない時代に、これだけのものを調査し描くのは大変なことであっただろうと想像する。また新田次郎は常に書き下ろしという形態を重視していたのだそうだ。

本来職業作家において一番生産性をあげるためには、雑誌に連載を書いて、それを書籍としてまとめるという方法が一番割りが良いのだが、そうするとどうしても話と話の継ぎ目が不自然になってしまう。かつ毎月のページ数が内容のテンポや展開に影響を与えないわけがない。そういうのを嫌って、すべて「書き下ろし」にしたのだと言う。

職業ライターとしての「発注いただきますライフ」と、絶対に譲れない「芸術家としての文豪ライフ」を両立させるのに、先生も苦労したのだと思う。新田次郎は安直な真ん中の路を選ばなかった。だからこれだけ完成度が高いものが作れたんだと思う。(まさに誰かが言ってたドストエフスキーは「罪と罰」を「割が悪い」と思って書いてねいだろ、ってのを思い出す)

なーんて1冊読んだだけなのに、私もウルさいよね。

そして時代小説を書くという世界は、想像するに、書いている途中、いやもしかしたら実際はこうであったのではないか…みたいな検証や迷いはいっさいに振り払って、一気に絵を作りあげる必要がある。そういうことなんだろうな。

もっともこの本にも、途中、1つ1つの章の終わりに「この件については、〜だという説もある」という注釈もコーナーが入ったりしている。

しかしすべては置いておいて、こういう人物が歴史上実在した、ってのがすごい。興味を持った人は是非読んでみるといいと思う。しかし植村直己といい、フランク安田といい、イヌイットと日本人はとっても相性がいい。

新田次郎が3ケ月かけて執筆にじっくり取り組んだこの作品は素晴らしいものになった。ちなみに本作の準備のための取材は1ケ月に及んだそうだが、書くにあたって、そこで拾った80%のネタは捨ててしまったのだと言う。そのヘンにも作者のこだわりが感じる。まさに捨てたからこそ、物語がはっきり見える。捨てられた80%の方に興味津々なのは、おそらく読者の中で私だけだ(爆)

何はともあれ大傑作。なんといっても文章が綺麗だよね。ホント読みやすい。こういうのがクラシック本として、世間から広く愛されるんだね。Amazonのレビューにも力強い感想が並ぶ。この本こそが、自分の人生の指針だと。何度も何度も読み返している、と。

週末は新田先生の「八甲田山」に興味がわき、You Tubeで映画を全部みたあと(えらい長い映画だった)Wikiなど興味深く読んでいたら、4時間くらいたってしまった。ま、日曜日だからいいか、と思いつつも、どうしても知識欲みたいなものが止まらない。でもって、私にとっては、一番面白かったのは、事実(であろう事)の羅列であるwikiだった。いろんな解釈は多々あれど実際に起こった事が何だったのかを私は知りたい。そういう意味では私は読書家ではないのかもしれない。情報が得られるなら、媒体は本じゃなくてもいいのかも。だから時代小説みたいなものとか、大河ドラマみたいなものとか、あんまり向かないのかもしれない…などなどあれこれ考えさせられた「アラスカ物語」でした。