「スイミー」第10次是枝監督マイ・ブーム到来?!

今までいろんなインタビューに立ち会ったのだけど、時々「神インタビュー」に当たる時がある。

自慢じゃないが、うちのミュージシャンたちのインタビューのクオリティは高いと思う。そもそも面白いやつが多いし、それにぴったりの媒体さん、そしてミュージシャンの話を興味を持って深いところから引き出してくれるライターさん、そして何よりいつもお世話になっている最高の通訳さんに恵まれウチのインタビューは最高だ。

もっともこの境地にいたるまで、私もたくさん失敗した。たーくさん(笑)。で、たま〜に、他社のインタビューに立ち会うたびに「ウチの方がいいインタビュー仕込んでる」と最近は自信を持ってしまう。いかんな。謙虚にならねば。たまたま私は周りの方たちに恵まれているだけだ。

記者会見から個別インタビューまで、今やいろんな種類のインタビューもYou Tubeなどで見れるし、かつインターネットが媒体の中心になれば文字数の制限も厳しくなく、いろんなインタビュー記事や動画に出会えるチャンスも増えた。

だけど、だいたいは「ウチの方がいいインタビュー仕込んでる」だ。人のインタビューを見ていると、大きな媒体ほどインタビュアーの質問がゆるくて、ダメダメなことが多い。

数日前、偶然見つけたこのインタビューは、そんなインタビューの中でも、いやー 本当に素晴らしいと思えるクオリティのものだったので、ここで紹介することにした。

いや、ほんと、あまりに素晴らしくて、もう何度目かの是枝監督マイブームが始まってしまったほどだ。このインタビュアーさん、すごい。

日本語も素晴らしく上手だけど、何よりものすごく良く是枝作品を見て理解している。最初の方はちょっと遠回りな感じだったんだけど、途中からぐいぐい入り込んでいく。そして是枝監督の新しい言葉を引き出していく。

客観的な真実というのは、主観的に生きている人間には理解できないと思います。
客観的な真実をもし手にできたとして、
それを客観的な真実として人には伝えられないし
「僕は客観的な真実を手にしている、わかっている、これを人に伝える」
これが多分一番危険だと思います。
 

というわけで、カトリーヌ・ドヌーブ主演の「真実」改めて、おすすめです。素晴らしい作品でした。映画館で見た時の感想はこちら。このインタビューを聞いてからもう一度Amazon Primeで見たことは言うまでもありません。さらに細部が楽しめました。

あと、もう一つ。これ、私のベスト・オブ・是枝インタビュー。これも最高だからぜひチェックしてみて。

外国メディアの記者会見なんだけど、この時の新作映画(「万引き家族」)の準備における取材で一番印象に残っているのは…と質問され、親の虐待をのがれて施設に入れられ、そこから学校に通っている子供たちを取材した時の話をされる監督。

ちょうど自分たちが取材している時に学校からランドセル背負って帰ってきた女の子がいたんだって。

で、「今、何勉強してるの?」と聞いたら、彼女がランドセルから国語の教科書を出して「スイミー」を朗読し始めた、と。で、施設の人たちが「皆さんお忙しいんだから、やめなさい」と言うのを聞かずに、その女の子は最後までお話を読みあげ、最後に是枝組が拍手をしたらすごい嬉しそうにしてた、と。

その子の朗読している時の顔が忘れられなくて…と答える監督。で、「万引き家族」のあの男の子に「スイミー」を登場させることにしたそうなんです。なるほど。


で、さらにすごいのが、その質問の後、26:10くらいから別の質問を挟んで「(今回首相からのお祝いがカンヌの受賞についてなかったようですが)この完成した映画を見る人として、監督の中に、官僚や政治家たちのことが頭にあったのでしょうか」という、まぁ、当時安倍政権下ではありがちな意地悪で斜めな質問に答えて、監督の言葉。

「テレビをやっている時代から、これは先輩に言われたことなんですけど、誰か一人に向かって作れ、と。テレビみたいに不特定多数の人たちに流すものほど一人の人間の顔を思いえがいて作れ、と。それはずっとそうしてきています」

「母親でもいいし、田舎のおばあちゃんでもいいし…」。

そしてしばらく考えたあと「僕はスイミーを読んでくれたあの子に向かって作っていると思います、今、わかりました」と質問者の目をまっすぐ見て、自分でうなづきながら言った時の是枝監督が、かっこよすぎる!!!(28:12ごろ)

あぁ、表現者ってこうじゃなきゃだめだ。わたしはなんだか海よりも深く自分のことを反省したのだった… 

この多くの人に見てほしい、聞いてほしいと思う時ほど、一人の人に向かって作る、って割とクリエイターの中では話させれている常識で、私も頭ではわかっているからときどき試してみるんだけど、だめなんだよねぇ…  

例えばお客さんのSさんの顔を浮かべる。今度来日するこのアーティストはSさんの射程距離にいないので、おそらくSさんはコンサートに来てくれそうにない。

じゃあSさんをこのコンサートのチケットを買ってもらえるのはどうしたらいいか…とか。ところが、そういう作戦が、悲しいかな当たった試しがないんだよなぁ。ダメだなぁ!

でもそんなわけで、ついに「スイミー」も買っちゃった。今まで持ってなかったんだよね。





写真の谷川さん、若い! そして私が買ったやつは124刷!!! ありえん。124!!! どんだけのヒットなんだ。絵本のロングセラーって、ほんとにすごいなぁ。

ところで韓国のインタビュアーさんの話題で出てきたファビアンヌの三色三角ペンあった!!!(笑)韓国のインタビュアーさんみたいに私はこの三角ペン買わないけど。是枝監督マイブーム、まだもうちょっとつづいちゃいそうだ。

さて「海街ダイアリー」でもBGVにしながら今日はゴロゴロするか。昨日ワクチン注射した腕がいたいが、あれおくれ、これおくれのメールも多く、また久々にディストリビューターからCDの発送をもとめられているので、これだけは死んでもやってからじゃないとゴロゴロできない。

それにしても、あの映画も泣けるんだよなぁ!