ひのまどか『バーンスタイン』読みました。愛に溢れるマエストロ。

 


読んだ〜、ひのまどか先生!! 私にとってはひの先生の本は『バルトーク』に続く第2弾。いや〜、これまたとにかくプロローグから引き込まれます。タングルウッドで、熱心に教育活動に励む晩年のバーンスタイン。

すでに気管支炎で声はほとんど出ず、身体はボロボロです。医者に止められながらも、タバコをやらないと死んでしまうとばかりに看護師が席を離れた一瞬を見計らって、一服!! ふぅ〜っっ(苦笑)。

それにしても、相手にしているのは経験不足で、どうにもまとまらないオケ。あまりにどうにもならないので、一人だけ一番優秀な学生を代表として自分の部屋に呼び、バーンスタインは彼を直接指導しはじめるのでした。

自分の身体はボロボロなのに、若者の力量を諦めず、熱心に指導を続ける巨匠。最後に「もう大丈夫だ」「君なら私の代わりができる」と伝えると、涙を流す若い男子学生。その子を「同情はいらない」「泣くな」と叱るバーンスタイン。

「いいえ、嬉しくて泣いているんです」という学生をバーンスタインは固く抱きしめる。あぁ!!!

そんなシーンから始まるんですよ。良いでしょう!!!?

もうそっから私もひたすら泣く! 今、プロモーションをお手伝いしている本『親愛なるレニー』でもやはりバーンスタインは亡くなる直前まで、命の限りを尽くして後進の指導にあたっていた。

『レニー』では、札幌のPMFのシーンが特にグッと来たけど、このひの先生の本でも、タングルウッドのこのシーンが胸を打つ。

いやーーー なんというか、濃ゆいというか、なんというか、パワーに溢れる人生だ。稼ぐお金も桁違いだし、お家も豪華、巨大エンタプライズをも生み出し、でも昔からのスタッフも大事にし…。音楽の世界が華やかだった時代を駆け抜けた人。

でも、今もそうだけど、著名な音楽家がチャリティに精を出し、世界にメッセージを届けることは容易なことではないんだよね。そんな苦労もこの本では描かれていた。バーンスタインはでも愛を振り撒くことを諦めなかったし、自分の意思を貫いた。

バーンスタインすごい。負けないバーンスタイン。ユダヤ人だという誇りを持って、社会に向き合っていく。

でもって、ここでも興味深いのは、先日のモリコーネのドキュメンタリーでもそうだったけど、彼が本当に目指したのはクラシックの作曲家としてのキャリアだったってこと。(いや、十分そのキャリアもすごいと思うけど)

やっぱりクラシックの世界では、指揮者よりも、プレイヤーよりも、作曲家しかもコマーシャルでない作品の作曲家という存在が大きいんだなぁと、改めて感じた。その辺の感覚って、私にはどうもわからな買ったのだけど、少しずつ実感できるようになってきたかも。

そしてモリコーネ同様、バーンスタインも師匠の視線は常に気にしている。どんな世界でも若い時の師匠は一生の師匠ということなのか…。

あ、あと『親愛なるレニー』でもそうだったけど、バーンスタインの有名な『キャンディード』の話題でリリアン・ヘルマンの名前を見つけ、なんか感激。リリアン・ヘルマン知ってるよー あの鼻持ちならないおばさんね!(ファンです。『未完の女』の感想はここ。)

クラシック関係の本って、だいたいの固有名詞は私はわからないから、わからないままに読み飛ばしてるんだけど、よ〜く知った名前が出てきて嬉しくなっちゃった! リリアン・ヘルマン、大ファンです。『未完の女』の感想はここ。(教えてくれた日向敏文さん、ありがとう)

知っているといえば、『レニー本』を先に読んでいたので、ヘレン・コーツや、ハリー・クラウトなど、お馴染みの名前も登場すると嬉しくなってしまう。

ヘレン・コーツは元々はバーンスタインのピアノの先生だったってレニー本にもあったけど、本当にずっとお母さんみたいな存在だったのかなぁ…って感じました。周りのアドバイスもあったけど、ヘレン・コーツをずっとバーンスタインは私設秘書みたいにしてた。

そしてあれだけの巨匠なのに生涯通して、結構マスコミの言うあれこれに心を痛めていたとか、これまたとっても人間的なんだわな。

引退宣言とほぼ同時に亡くなってしまったのがすごい。最後の最後まで、ものすごい熱量の圧巻の人生を貫いた。この熱量出せないんだったら、死ぬみたいな感じなんだろうか。

一方で、奥様の死後は、その喪失感みたいなものからは立ち直れてなかったんじゃないのかな…とも。でも取り巻きをゾロゾロつれて派手な生活をしつつも、世界を駆け抜け社会的発言もしてたマエストロの姿は、やっぱり眩しいのであった。

一方で、これまた『親愛なるレニー』で読んだ、和子さんと邦彦さんとの交流の存在が、またキラキラと輝く。うーーーん。

昨年の『ウエストサイド・ストーリー』に引き続き、秋に公開になるだろうと言われているNetflix制作の『マエストロ』もとても楽しみ。


しかしガーベラって、売ってるやつはひょろーっと背が高いのに、ウチで育てるとずんぐりむっくりなんだろう。まぁ、でも、鉢植えだとすごく長い時間、花を楽しめるからいいんだけどさ…

それにしても『親愛なるレニー』ですよ…。バーンスタインと知られざる日本人二人の手紙を軸に当時の様子を描きます。最後の「コーダ」での展開が圧巻。著者の熱意がすごいと読んだみなさんからよく言われます。ぜひ。

著者の吉原さん、3月日本のプロモーションのために来日します。こちらもぜひ。イベントもあり、すでに申し込みも始まっています。

3月12日(日)下北沢B&Bにて
「音楽家の言葉から世界を観る」 with 林田直樹さん 19:00〜
詳細はここ

3月15日(水)丸の内Have a Nice Tokyo!にて 19:00〜
「ビジネス・パーソンに送るクラシック音楽講座」with 松田亜有子さん
詳細はここ


3月16日(木)代官山蔦屋書店にて 19:00〜
「ミクロの愛とマクロの世界を物語る」with 篠田真貴子さん 
詳細はここ


全然関係ないけど、「バーンスタイン顔指揮」って動画が好きで、何度も見ちゃう。チャーミングな巨匠だなぁ!!