和田靜香『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心していくために考えた身近な政治のこと』を読みました


おなじみ和田靜香さんの新刊、タイトルが長い。すっかり音楽ライターを卒業し、こういった赤裸々貧乏女子な本におけるキャラクターが定着している和田さん、ご活躍である。

実際、この本、めっちゃ面白い。さすが和田靜香。最初から最後までスルスル読める。全然無理がない。なんだろう、文章のテンポがいいのかな。

とにかく何度もこのブログでも書いているとおり、音楽業界の女性のライターで一番文章が上手いのは和田さんだと私は思う。とにかく文章が上手いんだYO!(いきなりヒップホップ調になるのは本書参照のこと)。

しかしこういう長いタイトルが今流行っているのかな。先日和田さんがポリタスTVに出演したのだけど、その時津田さんがつけた「草の根民主主義」というのが一番端的にピッタリくるような気がする。そして「パリテ」(男女が50%ずつ。しっかり半々なこと)。それがこの本の重要ポイントだと思う。

でもこういうタイトルの方が売れるのかもしれない。本の装丁も加えて和田さんのキャラを十分に活かし、とてもいい感じで売れそうである。編集者さん、グッジョブ!

しかし、ほんと日本てパリテ進まないね。それはやっぱり親父がいったん握った権力を手放さないからだろうけど、本当にひどい。

いつだったか巨大音楽フェスティバルのドキュメンタリーをテレビでやっていて見ていたのだけど、出てきたのはいい歳の親父ばっか! 女性が一人もいなかった。いいや、あのフェス、女性編集者が本作ってるし、女性カメラマンもいるし、あのプロモーターのデスクでの制作は女性が多いとも聞いている(現場にはいないが)。

いや、みなさん、尊敬できる存在だけど、これはないだろうという感じ。ちょっとしたトークイベントで登壇者が並べば、これまたおじさんばっか。音楽業界とくにひどい。

(一方、明日から始まるケルティック・クリスマスはボスが女性で、私も女でスタッフも女性が多く、ミュージシャンはみな「日本の女は強い」と思って帰国しているのではないか。でも実際は超ジェンダー不平等の国なんだよ、ここは!・笑)

和田さん自身のストーリーもふんだんに織り込まれ、湯川先生もバンバン登場する。そんな中で、和田さんは、フェミニズムを学ぶことで過去の自分のことを反省したりもしている。

この点は私も同じだ。私は昔仕事ができない女性が大嫌いで、ミソジニーと言ってもいいくらいだった。「バカ女最悪」といつもイライラと思ってきた。

「自分で誰かフルタイムで雇うとしたら絶対男、だってハズレも少ないから」くらいのことは公言してきた。

女は当たれば最高だけど、外れるととことんダメだ。それが私の偏見だし、バカな部分だった。今でも心の底ではまだこの考えはあるかもしれない。今はそんな自分と必死に戦っているのだが…。

そんな自分も猛烈に反省させられる。また和田さん同様、私も自分は特に女性だからといって特に差別されていないというふうに思ってきた。

でも初めて英国に行った時思ったんだよね。「そうか、ここは外国だから女の子が可愛いとか可愛くないとか関係ないのか」

…って、これって女だから損してるってことじゃない? その感覚を最近になって思い出した。それっておかしくない? 特に音楽業界は顕著だけど、明らかに最初に出会った時の私のブスぶりに(性格も含め)、男性はみんな引いていたと思う。

一方で綺麗な女の子というだけで、相当ちやほやされる。男のプロデューサーはアイドルの女性と結婚するのが理想というのが、だいたいの見解だ。本当に音楽業界の男性はルックスにうるさい(笑)←これも偏見かな?(笑)

その反動か、私は仕事ができる女性は大好きで、今も割と女が多いチームで仕事している。いや80%くらい女性だな。男子も時々いるけど、そんな子達はみんなお姉さんの間でうまくやれる子たちだ。ま、これは間違ってないかなといつも思う。

私はブスだったが、本当にラッキーなことに、私には仕事があった。仕事が長くできていることで、ブスでも一応尊重される立場にはなったのだと思う。

そうやって、人に親切にされるうちに私のブスな性格も少しずつ矯正されていったのだ…と今は自分で自分のことを分析している。全く若い頃の自分は色んな意味で赤面ものだ。

和田さんの本も、最後はいい感じで着地しているし、なんと言ってもこの本は、和田さんが自分自身を励ますために書いた本だと思った。そして、その和田さんが書くことが他の多くの人たちを励ます本となった。そういうことだと思う。

しかし大磯がこういう状態だということだというのは初めて知った。すごいな。そしてみんな気負いがなく自然体なのだ。

あと民主主義は合理的ではない、時間もかかる、お金もかかるってこと。それも改めて確認したい。でも民主主義で行くんだよ、と! これは何度でも確認していきたい。

私も一瞬移住を考えちゃった(笑)。ま、私の場合ある程度都会じゃないと生きていけないとは思っているけどね。

あ、あと一人で生きていくことはやっぱり最高だなと思った。こちらの本とはまた違った視点だけど。

津田さんのポリタスTVに和田さんが出演した時のもの。ずっと無料で公開されるそうですので、みなさんもぜひご覧ください。