映画『シド・バレット 独りぼっちの狂気』を観ました。

 


そういや私が持ってた『Mad cap Laughs』は、先週のガレージセールであっという間に旅立っていったなぁ(笑)

結局買ったものの、一回もちゃんと聴いていないと思う、あのアルバム。あのCDを買った当時の私はロビン・ヒッチコックの仕事をすることになり、これは勉強せねばと思いシド・バレットやピンク・フロイドの昔のアルバムを買った。

シドはセカンドも買ったはずだけど、それもガレージセールの箱にあったのかしら。もう記憶なし。

それにしても、当時はよく勉強した。勉強するのが楽しかった。何せ自分と縁のあるミュージシャンだし、音楽だから。何度も言うが、私は音楽ファンではない。単に自分に関係あるアーティストが好きで応援したいだけだ。応援するには、まずは勉強しないといけない。

だから2004年に出た『The Pink Floyd Syd Barret Story』は、ちゃんとDVDを購入して見た。ロビンがインタビューで登場し、自宅のお庭で「Domino」を歌うシーンが良かった。

そのロビンがシドについて、コメントを寄せているので、こちらもぜひこんなインタビュー起こしもブログに載せております。

まぁ、そんなわけで、シド・バレットですよ。

シドの音楽を自分がちゃんと理解しているとはとても思えないけど、一応相当勉強したんですよ。本も確か読んだ記憶がある。とにかく一生懸命勉強した。

シドが亡くなった時も覚えているし、ニュースもリアルタイムで見た。シドが太っちゃってからの写真も散々見たことあるので、あの姿にはおどろかなかったけど、とはいえ初めて見た写真もかなりあった。

シドが亡くなったニュースにはびっくりして、すでにロビンを通じてつながりがあった絲山秋子さんに「絲山さん、シドが亡くなった!」とメールした記憶もあり。だからリアルタイムでシドの死を体験している。

そんな私だから、この映画を見ても、正直新しいものは何もなかった。パンフレットがないのも、ちょっと興醒め。どうやら関連書籍は販売していたようだけど、買わずに素通りしてしまった。

まぁ、カリスマではある。そしてヒットやミュージックビジネスに精神をやられて自分で崩壊してしまった…と。話はよくある話ではある。それはとても悲しいことではあるのだけれど。

ピンク・フロイドのメンバーや関係者が出てきて「シドはあーだった、こーだった」と語る。過去のガールフレンドや幼馴染みも登場する。

確かに若いころのシド・バレットは可愛くて、ハンサムで、素敵だった。おそらくめちゃくちゃチャーミングな人で、人を惹きつける魅力にあふれていたんだろうと想像する。

関係者がシドがいかに素敵だったかを、とにかく語る。

そしてそんな関係者の中にペラペラと元気にしゃべる白髪の親父を発見し「あれー、この人知ってるなぁ、わたし」と思う。えーっと、なんて名前だったっけ、エディ・リーダーの元マネージャーだった…

で、思い出した。ピーター・ジェナーだ。

いつだったかエディの来日中にウチで制作したブーのライブで、エディがゲストできてくれて、その時ピーターもくっついて来日していたので、ピーターも会場に来てくれた。

あの時の打ち上げはよく覚えている。ライブのあと、借りている小屋のスタッフへ迷惑かけたくなかったし、早く予約した打ち上げの場所に移動させなくちゃというわけで「早く移動して」「エディとは居酒屋でゆっくりしゃべれるから」と私が必死で促しているのに、それに協力してくれず、「まだ大丈夫でしょ」と、どっかりエディの前に腰を落ち着けてしまった音楽ライターさんのこととか(笑)

今、ここで話さなくてもいいでしょ、居酒屋で話せばいいでしょ(笑)。こっちはなんとかアーティストの気分を損ねず、うまくみんなを移動させようと必死になっているのに…  
(こういう主催者=公演のための巨大リスクをとっているの人に対してリスペクトのない業界人、多いんだよね。ちなみに今、その人とはそれ以来付き合いはありません)

果たしてバタバタと移動した居酒屋でピーター・ジェナーは、エディよりも要求が高く、私がブッキングしたワーキングクラスの居酒屋ではご不満だったのかもしれないが、あれが食べたいこれが食べたいと相当うるさかった記憶がある。

(みなさん、気をつけて。コンサート主催者はこういうこと、とてもよく覚えているんですから)

一方のエディがあまりお酒も飲まず、出されたものに手をつけるくらいで地味にしていたのが印象的だったので、なんだこいつ、マネージャーだからといってアーティストよりも偉そうと私は思ったとか、思わなかったとか(笑)。

一方、エディはブーのライブでも自分が出しゃばらないようにと気を使っている感じが本当に良かった。

そしたら、打ち上げの場にいた音楽ライターの和久井光司さんにブーが「あれはピーター・ジェナーだよ」と気を聞かせて紹介してあげたんだよね。あれはよかった。和久井さんがえらく盛り上がりめちゃくちゃ喜んでいた記憶がある。ブー、そういうところ、本当によく気が付く。

一方の私は「ピーター、WHO?」って感じだったのだが、確かに彼は英国音楽業界の伝説のレジェンドの一人ではある。

しかし、その後のエディといえば、「もうイングランド人はいい、スコットランド人と仕事する」と言って、そのあとほどなくしてピーターをクビにしてしまった。

ブーによれば、ピーターの事務所はエディに対してとても良くしてあげていた、という。その時のツアーでも「もうマネジメントを離れる」というエディをヒースロー空港まで見送りに来てくれていたのだそうだ。

だからエディがピーターの事務所を離れる時、ブーは結構反対したのだという。でも実際のところ、エディのキャリアを今眺めてみれば、スコットランドのマネジメントにして正解だったよね。

加えて、エディみたいな人が、伝統音楽というか、こちら側のシーンに来てくれたことは、私たち伝統音楽勢にとっても、とても大きい。あれは確かエディがバーンズのトリビュート・アルバムが出た時と記憶しているけど、違ったかな。

何はともあれ結果オーライだ。もしエディがあのままピーター・ジェナーの事務所にいたとしたら、もしかしたら彼女は大きなポップヒットをもう一度かますことは出来たかもしれないが、今以上に彼女が幸せになっているとは思えない。

ま、私の勝手な想像ですけどね。

こんなふうに書くとピーターが悪い人と見られるかと思うけど、そんなことは全然なくて、日本の「過去の栄光を自慢する業界親父」と違って、自分から「俺はフロイドもやってたんだ、Tレックスも」とか言って自慢することは決してなかったし、この映画で見られるようにいつもニコニコ元気で明るくて、感じの良い人だと思ったことも事実。

いずれにしてもそんなことも、この映画を見て思い出した。私もなんだかんだで、英国音楽業界の片隅に関わってたよな、と思う。

そんなわけで、シドについて自分はもう十分詳しいと思う人には、あまり新しいところのないドキュメンタリーだと思うけど、知らない人がいるなら、ぜひ見にいって。ピンク・フロイドってこういうバンドだったんだ、ってわかると思うから。

たらららー と、Crazy Diamondのあのギターのフレーズは、前のドキュメンタリーでも効果的に使われていたけど、今回もそんな感じだ。しつこいくらいに何度も出てくる。

まぁ、それにしても悲しいよね。バンドを継続させていくのは、本当に大変だ。どのバンドを見ても「何も問題ない」と思えるバンドなんて一つもない。

彼らはシドをそのまま入れていたらバンドを継続さえることは不可能だった。これは明らかだ。だからシドを切ったのだけど、それを責めるわけにはいかない。シドはまったくもって酷い状態だった。(そのひどい状態度は、今回のドキュメンタリーよりも前のドキュメンタリーの方がよく描けていたようにも思う)

彼が精神的に不安定になった根本理由は、もちろんたくさんあって複雑なんだろうけど、それについて明快な答えはこのドキュメンタリーでも出ていない。

でもシドとの別れがあったからピンクフロイドはあれだけ羽ばたくことができたのだと思う。成功って、きつい。そうやって友情やら何やらを犠牲にしないと成功することはできないのかと思う。

私みたいに低空飛行で自分の生活を維持できて、楽しく仲良しのバンドとツアーするような気楽で幸せな人生は、成功とともにはありえないだろう。であれば、生活が維持できるのであれば、それ以上の成功はない方がいいということも言える。身の丈、ってやつですよ。

ほんと神様って平等だよな。


こんなドキュメンタリーも発見。こちらも似たような内容なのかな。



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PS

そういや、もうすぐエディたち来日するよね。楽しみ!