映画『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』を観ました。感動作。でもとても悲しく寂しい映画。とはいえ光があるよ。

 


サム・リーが音楽やってて、いい映画だという噂を聞き(文春の評価も高い!)、公開日に見てきました。

いやー こう言ってはなんですが、寂しい話ではあります。辛い。そして人間は何かに一心に夢中になっていると、いろんな雑念を忘れて、幸せな気持ちになれる。そして何かを実現しそうな気分になれる。

だけど結局奇跡は起こらず、目が覚めてみれば、人生は辛い…  でもそれでも生きていく、日々の生活の中の、ちょっとした「光」を感じながら。

…といった内容です。まぁ映画のよくあるパターンよね。

こういうイングランド特有の「妙に上から目線」は、こんなに良い作品でも、やっぱり避けられるものではない。「そういうとこよ〜」と思わないでもない。だからイングランドは嫌われる。

でもそれがこの国を、世界のこんな状況の中で、ギリギリのところで良心というものに国民をしがみつかせてきた力でもあるのかもしれない。妙にチャリティ好きな国民性とかね。

この作品は、本来は概して暗い映画だとは思うんだよね。だからこんなにポップなポスター見せられると、また「日本の映画配給会社は観客を舐めている」とか言われちゃいそうだけど、どうなんでしょう。

でもこうしないと売れないのよ、それはわかるのだわ。ちなみにヨーロッパ版のデザインの元のポスターも、それほど暗くない。(ドイツ語?のポスター)犬がいいよねぇ〜

私だったら、たとえばこのトレイラーのサムネイルで使っている写真(ボロボロになって汚れたハロルドの写真)に、明朝体とかで「父の懺悔」とか「父の後悔」とかそういう日本語タイトルをつけてしまいそうだが、まぁ、それじゃあ売れないってことだよね。


と、ちょっとイギリス人っぽく、皮肉を言ってみましたが、いや、実際、めちゃくちゃ良い映画であって、すっかり引き込まれました。あっという間に終わった2時間ちょい。素晴らしいです。映画はこうでなくっちゃ! ヒットすると思うよ、これ。

主演の俳優さんが絶品なのよ。よくみたら、例の『ゴヤの名画と優しい泥棒』のお父さんじゃないですか。お名前はジム・ブロードベント。

このかた、原作本がブッカー賞の候補になった頃から、本の朗読に関わっていたりして。昨日今日ハロルド・フライになったんじゃないのよ。だから役作りが最高に仕上がっている。

しかし!! しかし、実はこの俳優さんの困った顔や悩んだ顔が、ウチの誰かに似ているよなぁと思えてしかたなく、それはいったい誰なんだろうとずっと考えながら私は映画を見ていました。冒頭の30分。

で、やっと30分くらいで「あっ、わかった。グレン(ティルブルック)だ」と思い出した。で、それはいいのだけど、おかげで、その後、映画の主演がずっとグレンのような気がしてきて、ちょっと不思議な感覚に囚われたのでした。グレンも悩んだり、困ったりするとあぁいう顔をする。ブルーの目がグレンとあの俳優さん、一緒かもしれない。

ま、それはさておき。

脚本はこの本の原作でもある大ヒットを本を手がけた作家レイチェル・ジョイスが自ら書いたそうだが、彼女は最初映画の製作陣から脚本を書かないかというオファーが来た時、それを断ったのだそう。というのも、自分の気持ちが作品に近すぎるから。

でも何度か打ち合わせに参加しているうちに、最後の最後にこの登場人物たちに自分も貢献しようという気持ちになり、脚本の仕事を引き受けたそうだ。

うーん、なるほど。なんとなくわかる!(最近、日テレと小学館と漫画家さんのことが話題ですが…原作者って本当に自分の分身で、登場人物たちを愛しているからね)また監督はドラマ作品を多く手がける女性監督へティ・マクドナルド。女性の制作陣いいよねぇ…

そうそう、息子役の彼がシド・バレットに似てる!と思ったら、なんとニック・ケイヴの息子らしい。いやー 彼も良かった。そして前の『ゴヤ〜』では最高だった奥さん(あの時はヘレン・ミレン)の役を、今回はペネロープ・ウイルトンがやっている。イギリスの女の人、他のどの国の女の人とも違う。そこがいい。

さて肝心の音楽。サム・リー素晴らしかったわ。サム自身がキャンプファイアーの前で、ちょっとだけど歌う映像も出てくる。


まぁ、日本ではこういうイメージでいきたいわよね…というトレイラー。すみません、しつこくて。でもきっと大ヒットすると思うよ、この映画。



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