#ケン・ローチ 監督新作!『 #オールド・オーク The Old Oak』を見ました


試写会で拝見しました。ありがとうございます。

ケン・ローチ監督の2023年の作品。日本公開まで、3年の時間があいちゃいましたが、いよいよ本邦公開となります。4月24日より、都内はヒューマントラストの有楽町と渋谷、そして新宿武蔵野館でも。大ヒットの予感。っていうか、絶対にヒットしてほしい。たくさんの人に見てほしい。

いや、まじで良かったです。もちろんケン・ローチ監督作品ですから、間違いないのはもちろんなんだけど、いやはや圧倒されました。

っていうか、時代が彼を再び動かした。こんなに世の中が悪いと、高齢の監督は無理をしてでも「映画を作らねば」という気持ちになるのだろう。「疲れた」「ゆっくりしたい」とか言ってられない、ということか。世の中がこんなに悪いから…

いやーーー まじですごい。っていうか、本当にリアルなんですよ、この映画。まるで自分がこの街に入ってしまったような感覚になる。リアルに映画の世界に入れる。これがリアリズムか。ケン・ローチのリアリズムか。

俳優さんも派手な人なんか一人もいない。でもこの主演の俳優さん、最高に役にあってた…っていうか、もう、まさにこういう人が普通に実在するかのよう。

街であったら「よっ、TJ!」「パブはどうだい?」とか声をかけたくなる。

2016年の北イングランドの元炭鉱の街の話。(おそらくDurhamの郊外)

貧しい街にシリアから難民が到着し、その街で、ありがちなすったもんだがある。いろんな事は、そう簡単に進まず、あちこちで地元民とシリアから来た人々の間で軋轢が起こる。困難をひとつ乗り越えたと思ったら、また次の困難が遅いかかる。

そんなふうに人生は大変なことばかりだ。

パブの店主が飼っているワンコがすごくいい。っていうか、ワンコの演技(?)が、まったく自然で、これはもしかすると本当にこの俳優さんが飼っているワンコなのかもと思った。実際どうなんだろう。

もう生きてても良い事ないから死んじゃおう…みたいな気持ちになった店主に向かって、あの海辺の、向こう側から駆けてくるワンコが良かった。やばい、あのワンコやばいよ!!

最後はとにかく涙、涙。いや、何も解決しちゃいない。なーんにも。本当に生きてると大変なことばかりだ。未来も大変であろう。

でも!! でもそれでいいんだ、みんなと一緒に助け合って少しずつ行くんだ、って。そういうことなんだと思う。

監督、すごいよ!! ぶれないよ!


上映後、ISOさんのMCのもと呉美保監督のお話もあり、その内容にもとても感動しました。呉美保監督は『そこのみにて光輝く』撮った人。

呉監督もケン・ローチ作品、大好きなんだって。(ちなみに『そこのみにて光輝く』の原作の佐藤泰志、私も大好きなんですよ。『海炭市叙景』とか、めっちゃ好きだった)

お二人のお話が面白かったので、ここにメモります。これはあくまで野崎が聞いて、録音もせず手書きで記録したものなので、誤解や聞き間違いなどもあるかも。あくまで文責:のざきでお願いいたします。


呉監督、ケン・ローチの作品の大ファンで、ケン・ローチの作品はどれも「優しい」「でも甘くない」と。

どれも非常に個人的な物語なのにさまざまな人間を描き、厳しい目を持って社会を描いている、と。そして、この作品はその中でも「とびきり優しい」と。

本作は「イギリス北東部3部作」の最終章という触れ込みだけど、他の2つに比べてマイルド。優しい。ちなみにこの「三部作」は、最初から予定していて三部作になったのではなく、作っていった結果3部作になった、ということらしいです。

ちなみに3部作とは『わたしは、ダニエル・ブレイク』(すごい作品・当時の私の感想はここ)、そして『家族を想うとき』(こちらは未見。あとで見なくちゃ!)、そして本作。

ISOさんに「一番好きなシーン」と聞かれ、監督は主人公のTJが飼っているワンコのマラが向こうから駆けてくるシーンが大好きだと答えていました。確かにあのシーンは、本当にグッときた!

人生は厳しい、それでも生きていく、それが表現されたシーン。あのシーンは奇跡だ、とも。

ケン・ローチの作品は、登場人物に嘘がない。本当にその人が、その街で生きているような気がする。

そして監督のカメラはあたかもその人たちをちょっと俯瞰した立場で見ている。それはセリフと人物の描き方による効果が大きい。とにかくリアリズムの人、誠実な人。

その土地に住む人をキャスティングしていて、いわゆるスターキャストではない。物語を作ることに重きを置いていて、その作品作りが本当に素晴らしい、と。

なおISOさんの情報によるとケン・ローチ監督は事前に出演者に脚本を見せないことも多いらしく、映画内での登場人物のリアクションは本物だったりすることが多いそうです。

そうそう、そして呉監督、一番好きなケン・ローチ作品ということで『麦の穂をゆらす風』をあげてましたね。

確かにあれは強烈にパワフルな作品でした。(キリアン・マーフィー主演、2006年の作品)兄弟のラストシーンが本当にリアル。戦争というのは、こういうことだと言っている。戦争における分断を描いた作品です、と。

とにかくケン・ローチ監督にはもっと撮ってほしい、と呉監督は強調されていました。いや、会場にいた全員がそう思ったことでしょう。

ただISOさんによると監督は徹底した現場主義で、高齢にもかかわらず1日中立ったまま撮影に臨むのだそう。全員のキャスト、スタッフの名前を覚えて、すごく綿密に絵作りに関わる。だから大変なのだそうです。(現在、ケン・ローチ監督は89歳! もうすぐ90歳)

とにかく映画を見ていて違和感がまったく感じられないのは、すごく綿密に撮っているから。(この辺のお話はめっちゃ興味深かった!!)とにかく100歳までやってほしい。本作でも最後のメッセージが、本当に素晴らしい、と。

ケン・ローチ監督は一貫して労働者階級、普通の人々を描いているのが、素晴らしいですね、と呉監督。キャスティングが重要で、そしてどうしたら彼らからベストな演技が引き出せるのか、そのセンス、バランスがすごい。

再びISOさん。例えば最後のシーン(ちょっとネタバレ)ですが、ここでは監督はキャストのみんなに自分で花を摘んでくるように伝えたそうです。だからすごく自然。まったく映画だと感じさせない。

そして余計な感動を盛り上げるような音楽がなっていない(ここ重要!!! 激しく同意!!)例えばいきなりヒップホップ流れて「おいっっ、タイアップかい?!」みたいなことがない(会場、笑い)

いかにもみんなエキストラ、みたいな感じがしない。登場しているみんな気持ちが、亡くなった人に、そのシーンにあるという上で、心からお花を捧げている。より生々しさがある。

例えば街の女性に声をかけて泣くシーンとか、泣いてほしいとは監督は絶対に言わない。役者から自然に出てくるものを採用していく。いかに登場人物の気持ちを引き出すか。それが監督の演出力の素晴らしさ。

ケン・ローチ作品は、割とカメラが遠い。しかし、登場人物にしっかり寄り添っているのが素晴らしい。

特に本作では室内での会話が多く、あまり大きくないパブが舞台の中心。奥の部屋と手前のパブと…でもそれが閉塞感に通じていて、一方で外に出た時の開放感みたいなのも感じさせる。シーンにメリハリがある。

あと呉監督も、演技未経験みたいな人の間に入るのが、好きだ、というお話も印象に残りました。撮影の場以外でも、その人たちのコミュニティに入るのが重要、とのこと。

その中に入って、人の悩みを聞いたり、どういうものが好きか等を聞いたり、そういう関係を紡ぐのが好きだ、と。わかりますね〜

さらにケン・ローチは、とにかく映画監督というよりも、人そのものが素晴らしいんだと思う、と。一方で監督にはコメディのセンスもあって、ユーモアがあるのがいい、と。シビアだけどユーモアが聞いている。ペーソスもあって、そのバランスが絶妙です、と。

というわけで、実際に映画を撮っている方ならではのお話はとても興味深く、充実した上映会でした。本当にありがとうございました。

実は同じ日の午後、別の大評判の映画を見たのだけど、それがかなり「がっかり」だったこともあって、その反動だったのかもしれないけど、私は本作にはいたく感動しました。今年のベスト3に間違いなく入ることでしょう。

本当にこの映画、めっちゃ好きだった。

こういうのだ、こういうのが「本物の映画」なんだと思う。予算かけてたり、派手な宣伝したりとか、そういうことじゃない。もしかしたら最近の、社会情勢とか、その反動でしょ、と言われちゃうかもしれないけど、それでいいじゃないか。映画ってそういうもんでしょう。

社会と関わっていない表現なんて、音楽でも映画でもダメダメだと思う。人の気持ちによりそって、人間は人間になるのだと思う。

公式サイトはこちら。ぜひ皆さん、見にいってください。何をおいてでも。


下記の動画もすごく良いです。


こちらの日経のインタビュー記事も素晴らしいです。(日経は無料会員でも毎月数本ですが記事を読めますので、ぜひ登録しましょう!)

  

◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。

◎現在リリースしたCDの販売は終了しておりますが、書籍はあいかわらず販売しております。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。

◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。


◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中! 

さらに今まで配信されていなかった『アナザー・グラフィティ』『妹よ』『陽のあたる場所』『愛という名のもとに』『ええにょぼ』も3月25日より配信スタートしております