不器用に生きる人々:映画「海炭市叙景」

本日も打ち合わせと打ち合わせの間に映画をみて、最後は美味しいご飯で締めた素敵な1日でした。滅多にこんな事はないのだけど2月はとにかく来日が何もないから気持ち的にも余裕がある。でももう半分終わっちゃったようなもんだよね〜時間がたつのは本当に早い。今月はとにかく普段不義理している人たちにあってご飯を食べるのだ。そしてやっぱり映画をみたりするのは平日に限る。週末はじっくりと事務所にこもって仕事をするのだ。他の人が仕事していないから余計な電話もメールもない。今週も企画書書きや、もろもろ事務仕事が山積している。

今日見た映画は、本でも音楽でも話のあう信頼できる筋からの推薦「海炭市叙景」という日本映画。日本映画自体、久々かも? 最近映画というと仕事上、見とかなきゃ的なものがないかぎり観なくなってきている。例えば北欧映画とか。英国、アイルランド映画とか。仕事上、一応見とかないとやばいでしょ、みたいなのしか積極的に観に行かない。あとは飛行機の機内放送で時間つぶしに観るとか、ね。ダメだよねぇ。ほんと文化の仕事しているんだったら、たくさんみて見聞を広めないと!

そういうわけで久々のユーロスペース。これまた静かな良い映画だった。海炭市は架空の街だけど函館がモデルになっていて、いわゆる貧しい北海道の寂れた街という設定。全体を流れる空気も重く、そこに不器用に生きる人たちの生活がオムニバス形式で、でも少しずつ重なりながら描かれている。原作はデビュー当時は村上春樹と並び才能を高く評価されていたものの41歳で妻子を残し自死を遂げたという佐藤泰志。音楽はジム・オルーク。昨日みたフィンランド映画と同様、静かな映画。必要以外の音は何も入っていない。この部分はもちろん高得点。

しかし暗い。同じ絶望を描くにしてもアイルランド映画なら底となくユーモアのセンスが漂う。フィンランド映画ならやっぱり底に強さが感じられる。だからそれぞれのエピソードの主人公には、感情移入できない部分も多かったが、脇役にときどきキラッとするものを感じた。虐待される子供をかばう、だけどでしゃばらないガス屋の事務員の女性とか、貧しいながらもきちんとお兄ちゃんにお弁当を作る妹とか。うん、真面目に丁寧に生きる生活にこそ確固たるものがあるのだよ、と思った。毎日ご飯をちゃんと炊いて、遅刻しないで会社に行き、きちんと生活していれば大丈夫なんだよ、みたいな。

それにしても北海道のこの空気。札幌のJPP呼んでくれた皆さんに通じるものがあるかも。なんと、この映画、地元函館で映画にしたいと実行委員会が立ち上がり、そこからすべてがスタートしているらしい。そういえば映画にもたくさん素人役者さんたちが出演しているらしい。エンドロールにたくさんの人たちや地元企業の名前が誇らしげにならぶ。いいねえ。なんとか実行委員会みたいな、ね。もちろん最近の代理店やテレビ局事業部の「公共の電波使いまくって自社の利益追求」みたいな利権囲い込み実行委員会じゃなくってね。本当に愛情を混めて、作りたくて、作った映画。いや、それにしても美談だけではあるまい。実現までには、いろんな苦労や悩みや葛藤や問題もあっただろう。でも、そんな人たちの気持ちが、とても自然で映画に流れるドローンのような安定した空気を形成している。公式サイトはこちら。ちなみに映画館で原作本を買った。これはもしかしたら映画もよいけれど原作が相当好きになれるタイプの本かもしれない。というわけでさっそく読み始めている。

今夜のご飯は「きちんとした中華」。お値段もかなりきちんとしているが女友達と行くには最高の場所だ。今夜も美味しかった。そしてジーンズを1本もらう。洋服はもらうに限るねぇ〜。いつもありがとう。さて、週末はこもって仕事します!