私はこの先生にカウンセリングを受けているわけではないのだけれど、こうしてこの本を読んで論理的に説明されるだけで、なんだか、だいぶ救われた気になれた。うーん、人間って、やっぱり言葉で整理するの、大事なのね。
この本の最後の最後には、先生は「知は力なり」と強調されている。俯瞰してこの状況を見ることができるだけで、だいぶ心が軽くなるよ、と。
それにしても、いろいろ可哀想すぎる。私みたいに自己肯定感が強いタイプならともかく、多くの女性は「もしかしたら自分が悪いのではないか」「自分がいたらないのではないか」と悩み母親と距離を置くことが出来ないで悶々としているらしい。
さっき、この本を固いと書いたけど、でもこの先生が過去のたくさんの著作や長らく関わってきたカウンセリングの実績はとても信頼できるし、何より説得力あって心強いのだった。
ちなみにこの先生の最新の本は『なぜ人は自分を責めてしまうのか』というタイトルらしい。女性とその母問題もそうだけど、そこが先生のお仕事の大きなテーマらしく、カウンセリングの最前線で、いろんな人を救ってきた先生だからこそ、こういう本が書けるのだと思う。
例えば、この本のメインテーマではないのだけれど、著者が紹介していた相談者アンケート「団塊の世代の男性について、どう思いますか」という質問の回答の中に回答する女性たちが面白い。
回答例:「(彼らは)自分に自信がある」とか「自分が常に正しくて偉いと思っている」あと「男女共同参画」とか言いながら、男はリーダー、企画、スピーチ役、女は集金雑用係、とか(笑)。
まぁ、この辺はあるよねー、あるある!みたいに思えるのだけど、その中に「アートにコンプレックスがある」という意見があって、ちょっと笑ってしまった。
いるよ! いる、いる、そんなオヤジ(笑)
あ、いかん、それ笑うところじゃなかった!! つーか、話がそれた。すみません。
ちなみにこの質問は、もちろんその後に出てくる団塊夫対策の話題に導くための導入で、こういう夫と一緒にいる「夢破れた妻たち」の存在。
そこからの「娘たちの怒り」が本書では鮮明に描かれていく。
つまり「(団塊オヤジである夫に対して)夢破れた妻たち」は、その後、自分の娘にプレッシャーを与えていったんだよ、と。だから、こういうことを娘に言うんだよ、と鮮やかすぎる展開の著者の解説には唸った。
そして、さらにするどいのは著者は「母の暴力というのは、あからさまな力の発露ではない」と説明しているところ。確かに娘を殴ったら、かなり怖いが、そんなのはレアケースであって…
その「母の暴力」とは、「あなたのために」という自己犠牲をジワジワとアピールしてくる点だ、と信田先生。
わかりみがありすぎる(涙)。
そして「(あなたは)お母さんがいないと何もできない」みたいなネガティブな言葉を娘に浴びせる。これは、私でもわかる。それは呪いの言葉だ。呪い。
この呪いの言葉を娘たちはいったいいくつかけられてきただろう。
そして娘に対して、父親の影響や血筋に関するネガティブコメント(そんなの親ガチャだから、こっちには関係ないよね・笑。っつーか、そもそも母親だって選べないでしょ)。
うわぁ、ある、ある!
そして自分を不幸だ嘆き、それを娘のせいにする、と。さすがにウチはそこまでひどくはなかったけど…
「母が不幸しか語らないこと。タブーのように幸せを絶対に語らないこと。おそらく母は何の罪悪感も持たずに、当たり前のように、(娘に)呪いの言葉を語り続けている」と。そう、彼女たちは「幸せだ」とは死んでも言わない(笑)
そうなんだよね! いやー そうなのよ。そう思えば、妙にいろいろ納得する。そんな娘が母親から独立するためには、どうしたらいいだろう。
著者によれば、娘の人生において、いくつかのタイミングがあるという。
(1)思春期:これはわかるよね。
(2)原家族離脱期:進学、就職などで物理的にも親から離れるチャンス。
(3)結婚
(4)出産、育児:このあとの「孫は祖母を延命させる」の章にも詳しい。
(5)介護:ひどいと2時間母親に会うと、その後3日間疲れてしまい起き上がれないという人もいるらしい。深刻だ。
思えば、私は(1)で気持ち的にはだいぶ自立をし(というか、少なくとも自分はこうはなるまいと自覚を得)、(2)で本当に家を出た。これは本当にラッキーだった。
下手すると、チャンスを逃して女性は一生通じて、(5)に至るまで母親から自由になれないことがある。
まぁ、でもこれに限らず、本当に自立した人間として、誰からも自由になることは本当に難しい。まず経済的に自立してないといけない。それだって、男女に雇用の差がある日本社会では簡単なことではない。
そして、それこそ「自由とは、常に努力し、本当に自由なのかと何度も自問し維持していくもの」なのなのだ、と改めて思ったりもする。(その辺はこちらの本に詳しい。私のバイブル)
それにしても、この先生の提案する具体的な対策も面白い。例えば「敬語で接する」という方法は、なるほどと思った。
これ親じゃなくて、距離を取りたくても取れない(しかし一緒にいなくてはいけない)苦手な相手にも使える方法かも。これぞ同じ場所にいながらも距離を取るすごいテクニック。
他に「配偶者を味方にする」とか、「仲間をつくる」とか。
確かに「仲間をつくる」は最高の対策だ。愚痴を聞いてくれる友達は何よりも大事!! 実感! これ何においても大事!
そして、ひたすらメタ認知。母を一人の女性として、なるべく距離をとって眺めてみる… なるほど、なるほど!
他にも「DVと母親問題」は、とても似ていると著者は説く。それは非対称な関係性に理由がある、と。
それは「愛情という名の(上からの圧倒的な)支配」だ、と。支配って、それ、DVだよね? そして自分からの加害を正義ととらえ、被害者側に問題があると主張するのはDVと一緒だ、と。
いやーー ほんとだよ。本当に愛しているならSet Them Freeじゃないんかい?!
しかし私の自分の話をすれば母親にはTHE MUSIC PLANTの経理を無給でやってもらっていたので文句は言えない(笑)。
本当に親って難しい。最近は高齢の両親のために、こんな私でも週1で実家をのぞいているのだが、たった週1でも親に会うという事は、非常にプレシャーで、私から多大なエネルギーを奪う。
とはいえ、ここ数ヶ月、それが数回続いたら、うちの親でも多少私に気を使ってくれるようになってきた。
こんなふうに結婚もせず、子供も産まぬわがまま娘だというのに。ごめんよ、お母さん、ごめんよ、お父さん。
それもなかなか興味深い現象。とにかく毎回毎回、喧嘩にならないように帰宅するのが、せいいっぱい。気を使うわぁ〜
でも、まぁお互い歩みよって、努力しあって、なんとか着地点をさぐるしかない。なんとかなるのかな…と思いつつ、仕事のプレッシャーの方がなんぼか楽だと思う。
とはいえ、私としては保守的な田舎に帰るのだけは死んでも嫌である。あんな保守王国の田舎に住んだら、高齢女性の私の人権など、ないに等しい。
人生は仕事辞めても、まだまだ戦いの連続だな…
しかしこの本に書かれていることを総合して思ったのは、やっぱり自分がまず幸せにならなくちゃいけないんだ、ってこと。
それがない限り、他の人に不幸が乗り移ってしまうよ、ということだ。そして不幸を与える人間は、不思議なことにまた次の人も不幸にし、不幸のオーラを飛ばしまくる。そこも重要ポイントだよな、と思った。
不幸を跳ね返す力。自分で跳ね返す力が必須であるのだな、と。自分ではどうにもならない外部からの負のパワーはいくらでもある。それらを跳ね飛ばす力を身につけるべし。
PS そうそう、あとツボだったのは、最後の方で先生が、なぜこういう問題は母・娘でおこるのかということを取り上げていて、その理由。めっちゃツボ。
先生いわく男性の場合はそういう女性たちに対して「どうしてそうなるんだよ、親子のくせに」とかマンスプレイニングをし始めちゃったりする割に、「俺も悩んでるんだ」とは叫べないんだよね、とまとめているところ。
先生、面白いよ。ちょっと笑った。ごめんなさい。
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◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。
◎現在リリースしたCDの販売は終了しておりますが、書籍はあいかわらず販売しております。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。
◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。


