これが「音楽」と「音楽じゃないもの」の違いだ。

ノルディック・トゥリーがコンサートのオープニングでよく演奏する曲であり、ファーストの1曲目として収録されている「Ornunga」は西ゴットランドにある村に伝わるトラッド。もともとはハンスのレパートリーであるわけなのだけど、これがノルディック・トゥリーのやるアレンジだと全然違う。

まずこれがオリジナルというかハンスの別バンド、Bäskによるヴァージョン。悪くはないけど、サックスとフルートが、凡人すぎるよねー。だいたいこれじゃメロディがよく分んない。



まぁ、こういうバンドが地元で活躍し伝統音楽シーンが盛り上がるのは悪くないことでしょう。人とちょっと変わったことをやりたがるのは、もちろんミュージシャンとして当然のことでしょう。が、日本にちゃんと紹介するとなると、これじゃあそのレベルに達していない、と私は思うわけ。このクラスの自己満バンドは、世の中に腐るほどいる。まず言えることは、まず演奏者がもう最高に、シャープに、トップクラスに上手くないといけないという事。それは、もう世界的レベルに。下手な演奏はすべてを台無しにしてしまう。普通に上手いだけじゃダメなんだよね。そりゃーもうスーパーに、超上手くないと。腕が伸びて楽器になった奴じゃないと日本に来て演奏する価値はないのよね。そう思うわけ。

そして,その上で、そういった「楽器が上手いという自分のエゴ」をすべて捨て去ったところにおいて、音楽に立ち向かわないといけない。これが難しいところ。これが出来るバンドと、出来ないバンドの差は大きい。そして、そういうすぐれた伝統音楽家によって、伝統のメロディは生き生きと輝きだす。こちらが、Nordik Treeのヴァージョン。



上記のハンスの別バンドと同じメロディは2:50くらいから始まる。このセットは最初はめっちゃ地味だが、最後の方に向かって少しずつディベロップしていくところが本当によく出来ていると思う。派手さはまったくない。まったくないから、3分くらいで聴くのを止めてしまう人も多いかも。でも5:30のところの2台のフィドルなんて、まるで二人のフィドルがお話ししているみたい!(こういう感じはホント、アルトにしか出来ないんだよね)なんて素晴らしい。そして、その後の最後の最後のラウンド(7:00くらいから)でのティッモ(ハーモニウム)のコード感を聞いてよ。これを私は天国の音楽と呼ぶ。

私の言っていることが分るかな〜。分る人は少ないだろうなぁ。でも、ちゃんと聞いてもらえれば分ると思う。そもそも伝統メロディは単音メロディのみ。コードなんか付いちゃいない。そこを、こういう風にメロディを持ち上げる能力。それが演奏者の能力なのだ。それによってメロディが急に生き生きと聞こえるようになるのだ。生き生きと聞こえなきゃ、メロディが持つ感情は聴き手にまで届かない。下手なサックスとフルートじゃ、分んないよね。

とはいえ、やっぱり相当地味であることは確かだ。派手さはない。が、これほどまでにヴィヴィドな音楽が、今の伝統音楽界にあるだろうか。ヴェーセンにもあるよね。マーティン・ヘイズにもある。ラウーはそれを今必死で学ぼうとしている。が、ほんとに厳選しているウチのアーティストたちの中でさえも、この域に到達しているバンドは本当にマレだ。この貴重な機会を絶対にお見逃しなく。お寺でのコンサートということで、彼らのテンションも最高にアップすること間違いなし!

10月31日(日)鎌倉建長寺にて 16:30開演。
チケットは鎌倉駅前の島森書店にて当日12:00まで販売。またホームページでもまだまだ受け付けております。まだお寺さんと詳細まとめてないけど、当日券も売れると思います。詳細については、しばしお待ちを。