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2011年7月21日木曜日

「100,000年後の安全」観てきました

本日、ちょうど午後イチの打ち合わせが渋谷のあっち方面だったこともあって、やっと観てきました話題の映画「100,000年後の安全」@UPLINK

一応フィンランドのドキュメンタリーだし、話題の原発モノということで職業上押さえておかねばならぬという事もあり、あまり興味も湧かない中で行ったのですが……。これが、ものすご〜〜く良かった!!! これははっきり言って,皆さんに超おすすめの映画です。ぜひぜひ見に行ってほしい。詳しくはこの後に書きますが、もちろん原発を作れば必ず出てくる放射性廃棄物のことを知らない人は、この映画でその怖さを充分感じてほしい。けど、そういう解説は他の専門家の皆さんにお願いします。私は自分ならではの別の視点でこの感想を書きます。

まず簡単に内容を説明すると、原子力発電所から出される高レベルの放射性廃棄物。これの処理には各国が頭を悩ませているわけなのだけど、北欧の国フィンランドではこういう結論に達した:地下深くこれを埋めてしまおうと。当初ロケットで宇宙空間に飛ばすのはどうかという案も出た。でもロケットは、打ち上げの時など途中のリスクがあまりに危険すぎる。海に沈めてはどうか。いや、何かあったとき、海洋汚染こそ取り返しがつかない。あれこれ悩んだあげく、フィンランドの地盤は18億年前から安定しているものだそうなので、そこに埋めようという結論に。そしてこの放射能制廃棄物ほぼ永久保管施設「オンカロ」の建設が始まりました。

この地下の永久処理場は地下500m、斜めにトンネルのように何kmにも渡って深く深く掘られ、そして、およそ100年後には施設が完成することになっているのだそうです。完成したらここに格廃棄物を入れていき、そしてそれを封印するというもの。そして核廃棄物は、放射性物質を出さなくなる10万年後まで、この施設に保存されるというわけ。現在、予定の半分くらいまで穴は掘られているらしい。

関係者は思考を巡らせる。ではいったいどうやって10万年、それを安定した状態で保ちつづけるか。10万年後、そこに暮らす人々に放射能の危険性をちゃんと警告できるのか。だいたい6万年後くらいに氷河期が来て人類が滅亡するのじゃないのか。いずれにせよ地上は天変地異や戦争、いろんな要素であまりにもリスクが大きい。では、石碑をたてて、そこに国連が言う何カ国(6ケ国だったかな)かで警告を掘っておくのはどうだろうか。ムンクの絵「叫び」を貼ったらどうだろうか、あれならユニヴァーサルに危険なものだと警告できるだろうし…とか。

そして、映画では結局さんざん思考をめぐらした結果、やっと出した結論らしきもの(?)が「もし万が一、10万年後の人類がこの施設を見つけたとして、いかなる警告文を書いておいても、何か埋まっているのだろう?と好奇心に負けて、ぜったいに掘り起こすだろうから、何も印は残さない方がいい」ということ。実は過去にもルーン文字で「絶対に触ってはいけない」と書かれたヴァイキングの遺跡があったのだそうだ。でも考古学者たちは迷いもなくそこを堀った(何もでてこなかったみたいだけどね)。なので、もう何も残さず、埋めたら忘れさられてしまうのがいいという考え方なのだ。(私もそれは正しい結論だと思う)

映画全体をおおう不気味に美しい映像が余計恐怖感をあおるわけなのだけど……私は思わずニヤっとしてしまった。

だって、これ、めっちゃくちゃフィンランドっぽいんだもん。ムンクの絵とか真面目に語っているところとか、めっちゃ可笑しい!!(ごめん、ごめん!!) 私が知っているフィンランド人も、だいたい皆こういう感じだ。あれこれ、あれこれ、あれこれ、本当によく悩んで議論している。原発だけじゃない。音楽の仕事だってそうだ。いったいどうやったらフィンランド音楽を広められるのか。いつもいつも思考を巡らせている。もっと良い方法はないのか、他にベストな方法もあるんじゃないのか。自分たちは間違っているんじゃないのか。そして議論に議論を重ね、議論に議論をつくし、なんとか納得できる落としどころを見いだし,前に進んで行く。それがフィンランドのやり方なのだ。今のところ、そのやり方は正しい。だからフィンランドは世界がうらやましがるような高福祉の国になり、高い教育水準を誇り、エコフレンドリーでこんなに住みやすい国になった。

だいたい議論を尽くしてもろくな結論は出ない。その落としどころは……この核処理施設みたいにだいたいはハッピーなものでは決して無い。うんざりするような長い時間この施設を気にかけないといけないわけだから。働かない奴のためにも働いて税金を納めなくちゃいけないわけだから。でも、そのヘんが結局のところ限界なんだよね、というのをフィンランド人は知っている。そして、今の議論でそこがベストな(というか皆が妥協できる)落としどころとなれば、それを受け止めて、それを真面目に実行していく。そうするしかないのだ。そうして実際、世界の中でもまれにみるような良い国を作っているわけなのだ、フィンランドは。

そして、こう言ってはなんだけど、その過程が……めっちゃ可笑しいのだ。ゴメンね。フィンランド人。私はそんな貴方たちが大好きです。ホント,フィンランド人にますます惚れた。というか、もっと言ってしまえば、これが人間の限界であり、可笑しさであり、究極の姿なのだ。ホントに人間、いくら頭がよくなっても、このヘンが限界なのだ。こんな風に生きるしかないのだ。

そして何より偉いなと思ったのは(これは可笑しさ抜きで…いや、でもちょっと可笑しいかな)、彼らは非常に謙虚だ、という事なのだ。謙虚だから核処理においてミスが絶対に起こらないとは思っていない。(だから実際にはミスはほとんど起こらない)加えて、この高度な文明がいつまでも続くとは信じていないし、人類滅亡に備えて、本当に真剣に悩んでいるわけなのだ。すごい,フィンランド人は本当にすごいよ!! 

しかしこの施設を作っていて、スタッフが内輪で言うジョークの中に「もしこの施設を掘っている最中に、自分たちより前の文明が作った核廃棄物が出て来たらどうする?」ってのがあるんだって。そこはちょっとフいてしまった! ごめんよ、今、こんな風に面白がる事なんて、地球上に放射能物質をまき散らしている日本人の私ができる事じゃないのだけど。

いやいや、冗談ではなく、本当にこの映画のことを笑えない。そして10万年後、人々は知る。フィンランド人は正しかった…って。そして未来のフィンランド人は思うのだろうか、自分たちの先祖が悩んだ分、俺たちは他の国の連中よりも、ずっと幸せだぞ、って。

こう言ってはなんだけど、カウリスマキとか好きな人には絶対にみてほしい映画。やっぱりフィンランド人。ものすごく真面目。そして繰り返しになっちゃうけど、とにかくめちゃくちゃおかしい(と言っては不謹慎か…何度も書くけど…でもそういうのが正直な感想)。


PS
しかし18億年安定していたというフィンランドの地層も、まだまだ分からない。なんとフィンランドでは珍しい体感できる地震が最近あったそうなのだ。アイスランドの噴火も連続しているし……果たして地球はどうなることやら。