kanについて、ジャーニーについて

いや〜kanを味わう暇もなくポールに突入しているので、なんだか自分でもボーゼンという感じである。なんと言うか良いバンドだったな。4人がそれぞれ個性的で。このままポールに行くにはあまりにももったいないので、自分の気持ちをいったん整理するためにも、ブログを書くことにする。

そもそもここに何度も書いているように自分から「絶対にやりたい」と思ったバンドではないので、最初どうも力が入らなかった。でもお客さんがチケットを買ってくれてなんとかツアーは成立はした。とはいえツアーの経理やったら利益なんざーウチの1ケ月分の家賃にすらならず。こんなツアーばっかりやってたらウチはつぶれてしまうが、それにしても赤字にはならず、なんとかなったので、ホットしている。ご来場くださったたくさんの皆さん、ありがとうございました。例えばあそこが3日間とか出来るようになると、だいぶ違うと思うんだけどね。メンバーにもそれなりに払ってあげられたし。ご来場くださったお客さん、ホントにありがとうございました。ホントに大成功でした。

そしてエイダンにおていは6月のラウーの来日の宣伝のために取材もできたりしたから良かった。6月盛り上がるぞ、ラウーは。ラウーの公演はkanが決まった後に決まった。ラウーは前回の来日から結構、だいぶ間があいてしまった。私がやってたときはほぼ1年おきに呼んでたしね。そもそもエイダンがあんなに私にkanを押してきたのはしばらく日本にこれないんじゃないか、という不安があったんじゃないかと思う。奴は日本が大好きなのだ〜!(笑)

それにしてもホントにホントに良い公演だった。コンサートのクオリティは間違いなかった。とにかくドラムがホントに良かった。あんなにシャープでかっこいいドラムはホントに滅多にない。私が最初にkanをみたのは、ちょうど3年前で(もっと長い時間たっているかと思ってた)その頃から彼らはアルバムをつくりツアーを重ねて、音楽的に大きく成長していた。音楽はまったく問題ない。というか、ホントに素晴らしかった。

が、いや〜大変なツアーだったね。いろんな意味でストレス200%だった。なんといってもこのバンド、明確なリーダーがいないのでとにかく何をやるにも時間がかかる。一時ホテルにピックアップにいったら、定時になっても誰もいない!みたいなこともあった。こういうの、一人で現場を回しているとホントに負担がでかい。それはツアー中にはじまったことではなく、もうメールで交信しているときからもそうで、一応リーダーっぽいエイダンがなんとなく全体を見てくれて入るのだが、ほぼ全員と同時にメールしないといけないし、それぞれの返事を待たないといけないからホントに手がかかるのだ。しかも要求がものすごく多い。そもそもドラムなども小屋のものが気に入らず、仕方がないからわざわざ手配したり(またもや追加経費が…)、今回いろいろあってホテルの手配が難しかったので(受験シーズン!3ケ月以上前から手配していたのに)こうじゃないとイヤだという強い要求もあり……なんかなぁ! また直前になって「滞在を延ばせないかな」とか言ってきたボケた奴もいる。私がめちゃくちゃ忙しい時期に…。さすがにあまりに頭にきて「これがリファレンスだから自分で航空会社に聞きなさい」とはっきり言ったけどね。安いチケットだから変更はできない。そんなの無理だっちゅーの。

だから来日前はもーこんな手のかかるバンド二度とやらんわ!くらいに思っていた。ブライアンもエイダンもいい奴だけど、バンドのリーダーシップを取るには優しすぎるんだよね… いや「優しい」ってのは言い訳にすぎない。正直、もっとしっかり仕切ってくれなくちゃ困る。フルックだってセーラがしっかり者で、ある程度はしっかりしきっていたから成り立っていた。そのセーラとでさえ今だから言えるのだけどフルックの最初の来日の時に「あの連中は私がいっても聞かないから、あなたから言ってよ」と言われた時はカチンときた。それは私の仕事じゃないよ!って。でもあのバンドと仕事するにはそうやって自分をバンドのチームの中にとけ込ませていくしかないのだ。なにより私が頑張る以上にセーラが頑張っているのが分かったので、私も頑張れた。それである程度の成功までは持っていけたとは思う…が、正直、ヴェーセンとか、大人なバンドに甘やかされた身にはホントにこういう子供バンドは辛い。まったくこの仕事、音楽が良くなかったら地獄もいいとこ! 拷問だよ、まったく。

kanの場合はリーダーシップが取れるかもしれない二人が、強烈に忙しいし、実際ブライアンにいたっては今回ゆっくり話すことなども出来ず。まぁしょうがないよね。子供連れだからね。子供はかわいかったし私も和んだけど、正直、普通の職場に子供なんか来ないよ… ちょっと話がはじまるとオリンが騒ぎ始める。奥さんがみていてくれるんだけど、それでも結局中断され、私がイヤな顔をするわけにもいかないし、実際オリンも激カワなので、ついつい…(笑)ま、前回のフルックの来日ではブライアンがずいぶんメイジー(セーラの娘)の面倒をみてくれていたので、しっかりオリンのことも見ないとね… そもそもブライアンはバンドのリーダーには向いてない。あんなにスイートで優しい人はいないのだけど。で、今、実はロシアの某ビックプロダクションで笛を吹いているらしい。あんなに才能があってかっこいいのに、下手すればそういうダサい流れに行っちゃう人ではあるのだ。仕事はあるのはありがたいけど、そういう企画ものってアーティストにとっては自殺行為だと思う。ちなみにその仕事はもう辞めたらしいけど…。一方のエイダンは相当頑張るのだが、やっぱり忙しすぎるんだと思う。ラウーのツアーもひっきりなしだし… 

ラウーについてはマーティンがかなりの頑固もの(いい意味で)意見がはっきりしている。だから基本マーティンに従っていれば、ほぼ間違いない。ただマーティン、天才肌で時々見事なまでにドカーーーーンと抜け落ちているところがあるので、これはこれで危険なのだ。そんな彼らには、トムという凄いマネージャーと、今ではティムという働き者のツアマネがいるので、まぁ大丈夫だろう。それにしてもラウーも最初の来日の時はマネージャーもツアマネもいなかったし、大変だったけどね。

だから正直kanをはじめたとき「うわ〜このバンド大丈夫かよ」と思った。バンドが長く続くバンドかというのは、これだけこの仕事をしていれば、すぐ分かる。そもそもkanはバンドが出来てまだ時間がたっていなさすぎ。そういう意味では日本に来るなんて、まだ100年早いのだ。だからメンバー間でもいろんな空気が流れるので、それがすごく面白い。まだまだメンバー間に遠慮が見られる部分もある。ここには具体的には書けないけど(10年後にでも書きます)。

でもすごく微笑ましいな、と思ったことも幾つかあった。1つ例をあげると、激しく寝坊したメンバーをかばって、エイダンとブライアンがそれぞれ私と二人だけになった時に「本当に申し訳ない。彼もとっても申し訳なく思っている。普段は大丈夫なんだけど…」なんて言ってくるのだ。そのとき、このバンドはいいバンドだな、と思った。そうやってみんなで助け合ってバンドを運営していく。自分だけがいいって気持ちじゃ、バンドなんて絶対に続かない。

しかし酔っぱらって寝坊なんてツアー、ホント久しぶり! そういうツアーはウチは一切卒業したのだ。もうそういうツアーは、おそらく10年くらいしてないよ。だいたいイアンもジムも東洋人の年上のおばちゃんツアマネの言うことなんざ最初はまったく聞いてくれなかった…っていうのは言い過ぎだな。聞いてはいたんだろうけど、注意を払ってくれなかった。それがツアーが進むにつれて私の言うことに集中するようになったのがホントに面白いと思った。そう、言うことを聞かせるには態度で示すしかない。そうやって言葉ではなく行動で教えていくしかないのだ。

こういう有機的なバンドの人間関係は面白い。そうなんだよね、若い男の子は成長するんだ。すごく嬉しいことに。女はバカ女な場合、最後までバカ女のままなことが多いが、男の子はホントびっくりするほど変わってしまうことがある。たとえばルナサのキリアン。最初の来日時はバンド1の若造で、何をやってもやる気がなく、いったいどうしたもんかと思っていたけど、今やすっかり顔つきまで変わってしまった。今やバンドの実質リーダーみたいな存在になっちゃった。みんなそうやって苦労して成長していく。ラウーだってそうだよ。最初の来日の時からだいぶ変わった。そして成長がないやつには、やっぱり成功も待っていない。

月曜日の早朝、ジムとイアンを送りに吉祥寺のバス乗り場まで送りとどけた。午後すぐにエイダンのインタビューがあったり打ち合わせもあったので、吉祥寺のバス乗り場までしか送らなかった。あの週末はおそろしいほど寒くて、彼らがバスに乗り込み、荷物が全部バスに積まれるまで、かなり長い時間がかかったと思う。でも私が最後荷物が積まれ、バスが動きだすまで見送っていたら、あとからジムが「彼女はほんとにプロフェッショナルだ。僕らの荷物も確認して最後まで見送ってくれた」なんてエイダンにメールしてきたのだそうだ。それをわざわざエイダンが私に見せてくれた。うん、いいバンドだ。いいバンド。

イアンはイアンで私にスターウォーズのカードをくれて「ヨウコ、ほんとにありがとう。フォースのともにあらんことを」なんて書いてあった。

で、そんな中、ジャーニー問題ですよ!(笑) こんな風な地味な経験を重ねている私やウチのバンドからしたら、なんて世界! お金がたくさんあって、スタッフもたくさん居て、お客さんは人ではなく「統計」(何度も何万人が来ているんだ、みたいな言い方をする)… あんなのに比べたら、ウチらはみんな野畑にさくタンポポだね! 

というわけで先日またもやユキさんと某Nさんとともにこの映画をネタに密談。その様子はここ

あのマネージャーが映画の最後に「アーネルは立派なジャーニーのメンバーだよ。ギャラも1/5だし…(ニヤ)」みたいに言うのが気に入らないという話になる。「この映画みて全部知った気になるなんて、おまえら、まだまだ甘いね」くらいに見える!なんて意見も出たりして、非常に危険な業界の裏、そして裏の裏を読むお話。「1/5な訳ねぇーだろ!」って意見も出る。私も最初あの「1/5発言」を見た時「何もそんなこと言わなくていいのに」と思ったんだが…。しかしこれって深読みしすぎ? なんか二周も三周もして、いったい何周考えがめぐったんだか分からなくなる。語らせるよ、この映画! 

そりゃー私だってシナリオは書くさ。自分の仕事の。それがプロデューサーの役目だからね。小屋ブッキングしてチケット売っているだけなら単なるプロモーターだ。私はそうじゃなくてプロデューサーになりたい。プロデューサーの役目はみんなが知らないバンドを見つけて日本に紹介し、それをマーケットの中でどう育てるか考える事だ。そこが大事なのだから。なので、どうやってツアーを発表しよう、どうやって面白いとお客さんに思ってもらおう、どうやってアーティストに楽しんでもらおう、って、いろいろ考えるのだ。そうじゃなかったら、なにせタンポポですから、ウチもアーティストも生き残れんですたい。

とはいえ、いろいろ計算したりすること自体、なんだかんだいってこの業界にいること自体、ジャーニーその他産業チームの皆さん率いる「チーム腹黒」の末端にいるという事なのかもしれない…と、また一周考えが巡る(笑)

株式会社ジャーニーと違って、ウチのバンドは本当にはかない。タンポポどころかイヌフグリくらいの大きさかも。そして明確なリーダーのいないバンドは大変だけど、ホントに面白い。kanはこれからどうなっていくのだろう。続くかどうかは私にも分からない。メンバーのいろんな状況を考慮するにつけ、本当に大変だろうなとは思う。でも今回の日本ミニツアーが、バンドのみんながこれを続けていく励みになったのなら良かったな、と思う。Good Luck kan!

そして一方のジャーニーは… 続くだろうね。間違いなく続くだろう。まずはスティーブ・ペリーの神格化、そして復活、最後はラスベガスで何ヶ月にも渡るショウだ。最後の最後に「ホントの俺らはこうだった」みたいな映画を作って、あがり?!か? そういやジャーニーは昔からツアーする自分たちや自分たちのスタッフを美化して見せることが好きだった。でも何度でも言うが、今ジャーニーが成功しているのはアーネルうんぬんだからではない。前のヴォーカルだって悪くなかった。すべてはタイミングなのだ、タイミング。今はそもそもリスナー側が新しい音楽なんて聴くのが面倒くさい。そういう時代なのだ。自分が良かったころの時代を思い出して、辛い現実を忘れたい、それだけなのさ。だから映画に出てくるアメリカのジャーニー・ファンはみんなデブでコーラとか1リットルくらい飲みそうな感じで、みんなブッシュとか共和党に投票しそうな感じじゃないか。(って言い過ぎ?!)

人は人、自分は自分。オイラは時代にさからっててでも自分のバンドを応援するね。産業ロックにはのらないぜ。といいつつ、こんなこと書いてる事自体、あの腹黒マネージャーにとっては想定済みかも! なんだかんだ話題にしている自分がいる!! というわけで、この映画ヒットするよ、K木さん…とユキさんと同じ文章で閉める。



売れなくなったころのこの曲好き。