トニー・ガトリフ「怒れ! 憤れ!」観ました

すごいわ… まぁ、パワフルな映画でした。「怒れ! 憤れ! ステファン・エセルの遺言」トニー・ガトリフだからなんだろうけど、とにかく画面すべてがパワフル。そして、もちろん音楽もダンスも超かっこいい!!

いわゆるエンタテイメントの映画じゃないけど、不法移民してきた女の子を追いかけながら、ヨーロッパを縦断していく。エセルに触発されてスペイン15M運動が始まり、物語はヨーロッパの、本当に次々と起こるデモの中で撮影された。その映像の本物のパワフルさは…圧巻だ。

ガトリフ監督の、この映画を制作するきっかけ。サルコジ大統領(当時)の人種差別発言に怒りくるった人々があつまりデモを行った。そこで一人の男性が死亡したり… そこで憤りを感じた監督は強いメッセージを持った映画をつくろうと決意したのだそう。ステファン・エセルの非暴力デモ本に強く共感した監督は当初、まったく違う脚本を設定していたが、相談していた哲学者の友達が途中でなくなってしまったり… 映画の製作を断念しそうになりつつも、このストーリーを完成させる。

アフリカからヨーロッパに密入国した女の子。家族に「大丈夫」「元気です」と連絡する。でも全然大丈夫じゃなくって警察につかまったり、理不尽なビジネスにまきこまれたり… そして少女は怒りに燃えるデモをする人々と遭遇していく。

ガトリフ監督すごいね。中でもオレンジが転がって行くシーンはとても印象的。資料によると、このシーンは「2010年12月17日にチュニジアで焼身自殺した青果商人」を象徴しているんだって。彼は重いカートをひっぱって仕事をしていたが、トラックを買いたいとずっと夢見ていた。カートが道路のデコボコに引っかかってバランスを崩すとオレンジは階段を転がり落ちて、河に止めたボートの中へと落ちて行く。河に落ちてしまうオレンジもある。でも、このオレンジはもう誰にも止められない。

原作となったエセルのこの本は、もともとは書籍というよりパンフレット、と言ったほうがいいようなものだったらしい。エセルはベルリン生まれのジューイッシュ。パリに流れ、ロンドンに亡命するがつかまり強制収容所で処刑寸前に脱出。戦後は世界の平和のため、社会的弱者のために外交官として活躍した。2010年秋93歳にして、この本を書き上げる。それが移民の権利や、経済の不平等に怒る若者に火をつけ世界各地のデモへと発展していく。都内での上映はK's Cinemaで4月4日まで。急げ!




この本の装丁もすごいね。読んでみようかな〜