これは3時間の修行だ!… 映画「大いなる沈黙へ」を見ました


久しぶりに行っちゃったよ、岩波ホール。


 

カトリックの中でももっとも厳しいと言われるフランスアルプス山脈に立つ伝説的な修道院、グランド・シャトルーズ。監督は1984年に撮影を申請、16年後に許可され、条件は音楽なし、ナレーションなし、照明なし。中に入れるのは監督一人…というすごい条件。5年後に映画は完成。その後,日本に上陸するまで9年もかかった。

この映画、えらいヒットしているらしい。朝イチの上映時間の1時間前に会場に行ってみれば、すでにチケット売り場は長蛇の列。でもオンタイムで来ても、一人であれば入れたとも思う。私が入場した時点でだいたい会場の半分くらいだった。そして観客の中にはシスターたちの姿も…思わずこのシーンを思い出し心の中で爆笑する私はFather Tedの大ファン…この映画観ていいんだろうか。すみません。7秒だから見て見て(笑)

Father Jackは修道女を極端に怖がっていて、「修道女だ、引き返せ,引き返せ!」と騒ぐ…



しかしこの前に見た映画が「テレクラキャノンボール」で、今回がこれ…って私も振り幅すごいよね。

そして見始めて正直最初の20分で、この映画を観に来たことを後悔した。169分かぁ…長いよ。長過ぎる。音楽ファンの私の集中力は、最長で第9の長さが限度(ウソ)と決まっている。長いコンサートも長い映画も大嫌い。自分のイベントはそうならないように、いつもすごく気をつけている。

ただ映像はものすごく綺麗だ。まずそれがすごく印象的。照明を使っていないから自然光での撮影ということになるのだが…それがまるでルネッサンスの絵画たちみたいに美しい。これポストカードにしたら売れると思うな… とあくまで商売が頭から離れない煩悩だらけな私。ダメだなぁ。

しかし音がない映画なもんだから、しばらくすると会場から聴こえてくる寝息…ならまだしも、イビキがすごいおっさんもいたりして、かなり興ざめ。そしてまさにおばちゃんが「飴を鞄から出して、包み紙むいてます」的な音も(笑)

私も数回寝落ちしました…が、後半からは妙に引き込まれしっかり最後まで見ちゃった。

時々挿入される修行僧たちの顔、表情…これも音なしで20秒くらい?続くわけだから、とにかくまったりですよ、まったり。でもアヌーナみたいな音楽が流れると、おおっと思い、最後出てくる盲目の修道士の言葉には、なるほど、と思った。確かにここにいれば死ぬことはまったく怖くない。

そして最後まで見て分かった。これは3時間の修行なのだ、と。(正確には2時間40分だけど)これを理解するためには、この3時間が必要なのだ、と。なにせセリフはほとんどなく聖書の言葉が(これまた訳がわからない)時々挿入されるだけなのだ。

でも思ったよりきつい生活してるなーとは思わなかった。これはこれで相当自由だ。修行僧たちは個室が与えられ,他の人と話す必要がない。(でもそのあとパンフレットを確認したら、修行僧は3時間寝てはお祈りのために起され、また3時間寝ることが許されるなど、たっぷりしっかり寝ることは許されないそう。これは確かに相当キツイかも?)

パンフレットより修行僧のタイムテーブル

まぁ、なんだろ…ドキュメンタリー映画としては何度も言っているように長過ぎるし、とにかくセリフがないから、正直よく理解できてない部分も。だからついついそれほど感動したわけでもないのにパンフレットを買ってしまった。つまり、いろいろ知識欲も刺激される映画だったわけだ。

中世そのままなんだろうな、という、ホントにそういう場所だ。印象的なシーンもいくつもある。面白い、という意味では週末に与えられる散歩の時の修道僧たちの会話。2回このシーンが出てくるが、どちらも何だか普通ですごく面白い。

そして年老いた修行僧に若い修行僧が軟膏を塗るシーン。バリカンで髪を切るシーン。猫に話しかけるシーン… などなど。

まるで絵画みたい!






それにしても光がいいんだよね。自然だからね。そしてチラシの作り方といい、写真の選び方といい、この映画に限らず、最近の映画配給会社のマーケティング担当の皆さんはホントにすごいと思う。チラシは雪かきをする老人の修行僧の写真なのだが… シーンと雪の音まで聴こえてきそうな写真だ。これは間違いなく惹くでしょう! 

今日も会場でユーロスペースのベルイマン特集上映(もう何度目?)のチラシや、「リアリティのダンス」に伴うボドロフスキー新聞とか手に取って、みんな本当にチラシがよく出来ている、と感動したのだ。まぁ、映画の配給っていうビジネス自体、音楽事業とは比べ物にならないくらいリスクが大きいから、頑張るのは分からないでもないが… 映画関係の皆さん、すごいよ。音楽業界は、これに比べたらタルんでるな。この映画においてもほぼ日とタイアップしたこういう記事とかも、すごいと思う。いろいろ頭を使って、すごく頑張っている感じが出ていて、まったく頭がさがる。町でもらうコンサートの散らしは一方で面白くないのが多いよね。日程と会場名とアーティスト名とチケット情報以外のものがまったく書かれてない、裏も真っ白なチラシがほとんどだもの… まぁ、でも有名アーティストの場合はそれでいいのかも。でも知らないで手にとる人もいるんだしさぁ…

もっとも8面開きのボドロフスキー新聞は字があまりに多く、私が読んでもよく内容が理解できず、こんなに字が多くちゃ返って分かりにくいよ、と思ったのも事実。私のチラシも字が多くて抽象的すぎるから気をつけないと…でも、配給会社の努力とか力の入れようは充分すぎるほど実感できる! 本当にすごい。ウチも予算があったらやりたいなぁ、8面チラシ。ヴェーセンだったら8面埋めるくらいのネタはいくらでもあるよ!

それにしても平日の昼ということもあって、こんなにおばちゃんマックスな会場も久しぶりだった。おばちゃんたち…すごいパワーだ。お金もたくさんもっていそう。映画が終わると神田神保町界隈の高級な老舗のランチに行くのだろうか。ギャイギャイ騒ぎながらみんな先を争うように退場していった。「この後はお芝居なの…」みたいな声も聴こえてくる。そんなおばちゃんたちの会話をiPadいじってるふりして、耳をダンボにしつつマーケティング……

いや、ウチもさ、おばちゃんのためのコンサートとか考えているのよ。若者呼ぶためにウチもu-25割り引き始めたけど、まぁ、若い子呼ぶにはとにかく料金を安くする。これに尽きるわよね。で、おばちゃんを呼ぶには? 平日の昼間のコンサートのニーズが増えているのはよく聞く。クラッシックではすでに初めているところも多い。そこに踏み切れないのは、自分の問題だ。絶対にニーズはある。が、これを決めるのは非常に勇気の必要な事だ。うーん、おばちゃんたち手強いからなぁ!


<おばちゃん企画のための人から聞いた話と、今日のマーケティングの結果メモ>

おばちゃんたちは

 ロビーで何かムシャムシャ食べるのが好き

 ちょっとした割引が大好き。映画にジジババが多いのはシニア割引のせいだろう
  でも貧乏なのは若者の方だと思うけどね…

 権威が好き やっぱりあのインテリな岩波ホールという看板は大きい

 朝が好き 午前中の上映が一番混んでいるらしい
 
 今日の映画は長かったが、本当は1時間くらいがちょうどいいらしい
 というのもトイレとかが心配らしい。もちろん寝落ちも心配。


他にも何かありますかね?

何はともあれシニアの皆さんもお待ちしております。ウチのスウェーデンバンド、元気にやってきます。おばちゃんたちにも人気ですよ〜


ちょっと背が高すぎるんだよね…
左から195cm、192cm、197cmです。

そういや先日のStar Pines Cafeの公演でも「ウチの母が高齢なんで、心配です」とか言ってた人がいたな。そういう人、前もって声かけてくださいね。

最前列とかは無理だけど、どっか出入りしやすいところに席確保するとか出来るだけ善処します。

(でも公演中、心配でその方たちの様子を見にちらっとのぞいたら,お母様楽しそうに踊ってらした。良かった♥)