内本順一さんのこの感想を読むと、うん、確かにそうだと思う。これは間違いなく映画を愛するチーム、音楽を愛するスタッフにより作られた映画で、それは疑いようもないのだが、賛否両論が出てくるのも、ものすごく分かるような気がする。なんというか妙な映画だと思った。これを消化不良と呼ぶのであれば、消化不良とも言えるのかもしれない。もしかしたらもう一度見たら、もっと深く理解できるのかもしれない。
うまく説明できないが、なんかこう、物語を伝えるテクニックみたいな部分が器用じゃない映画だなとは思った。そこがこの映画の魅力でもある。
でも、まったくもって内本さんの言うとおり、映画全編通して父親の痛みはずっと漂っているが重苦しくはない。テンポはよくワクワクする場面もある…と。まさに。とにかく話にぐいぐい引き込まれ、時間がたつのも忘れてしまう。そういう映画ではあった。
そして楽器屋の親父はいつも、なんだかいい立場を持って行くよな、とも思ったのでした。楽器屋の親父を演じるのはベテラン、ローレンス・フィッシュバーン。そして出てくるキャラクターは主人公で父親役のビリー・クラダップも含め、ホントに全員が魅力的だったと思う。再婚して子供を産み必死で自分の生活をたてなおそうとするお母さん、一方で立ち直れずいつまでも引きずる元彼女。息子の周りにいた人たちは、悩みながらも、生きることを続けていく。というか、とにかく生きて行くしかない。死ぬわけにはいかないから。
それにしても、うん、なんか妙な映画ではあった。物語の後半に、とある真実があかされ、そこから観る者にとっては、なんというか、話のトーンがガラっと変わってしまう。そこで、私にとっては実は……そっちの問題の方に気持ちが持ってかれて、その時点で、音楽のことがなんだか吹っ飛んでしまった。でも内本さんの言うとおり、そんな予感はあったかも。ちょっとヘンだな、と。
震災の時もちょっと思ったのだが… 究極的なところで音楽は弱いのかもしれない。やっぱり人間としてのベーシックな幸せがあった上で楽しめるものなのか、とか思ったりもしてしまう。うーん、何の事を言っているか分からないだろうけど、ネタを明かしちゃうと、これから観る人がこの映画を楽しめなくなるだろうし…、やっぱり明かさないでおく。
音楽は神様のもので、天から降りてくる、とはよく言ったものだ。音楽を書いた人は、その音楽を人々に届けるための、メディアの1つにすぎない、という人もいる。そしてそれを歌うお父さんも、歌を届けるメディアの1つにしかすぎない。
……とかなんとか、ごちゃごちゃ考えるまでもなく、お父さん役の彼は最高に素敵だった。そしてそれ以上に素敵で可愛かったのが、一緒にバンドをやろうと主人公を誘う、主人公とは息子ほど年の離れたクエンティン役の若い彼、アントン・イエルチン。レニングラード生まれの若い俳優さんだが、俳優さんというより、クエンティンというミュージシャンに私はもうぞっこん引っ張られた。あふれるほどの才能を持ちながら、繊細すぎて、自信がなくて、世の中と上手くやれないミュージシャンを私は山ほど知っている。また表面上うまくやっているように見えても、複雑でシャイな内面をかかえてるミュージシャンたちを沢山知っている。自分の近くにいる、その人たちの顔が浮かんでしょうがなかった。ミュージシャンはみんなフラジャイルで魅力的だ。バンドを続ける、ってどういう事なんだろう。音楽を続けるって、どういう事なんだろう。でも作った人が信じてやらなければ、音楽は、楽曲は、いったいどこに行くというんだろう。
まぁ、良い映画ではあるのだ。これだけ語りたくなることが出てくるわけだから。でも、なんだろ、そういうテーマを中心に書きたいのであれば、なんとういか、別のテクニックがあったんじゃないかなとも思う。でも少なくともジョン・カーニーの新作より、よっぽど音楽について考えさせられるとは思うし、いい映画だったとは思う。ただ、やはりお話を上手に伝えるテクニックみたいなものが、ちょっと欠けているのかなとも思う。でもまた言うけど、そこがこの映画の魅力でもあるのだと思う。
と、まぁ、不完全燃焼ながらも、しっかりパンフレットまで買って隅々まで読む。監督のプロダクションノートより。「第1回監督作品に、明らかにあまりにも簡単ではないトピックを選んでしまった」と。うん、そうかもしれない。こういう家族の事を書きたいんだったら、もうちょっと違うテクニックがあっても良かったんじゃないかな、とも思ったし、逆にストレートに話を運んでも良かったんじゃないかな、とも思った。そこが賛否両論になっているのじゃないかしら。でも、なんだろ…音楽好きのスタッフ勢だから、きっと音楽のマジックを作品に盛り込みたかったのかな、とも。
最後、お父さんが若者にかける言葉が良かった。お父さんはあれこれ若者にアドバイスしたり、女の子の引っ掛け方とか指導したりしてる。でも「“緊張する”って言えば“緊張するな”、“吐きたい”って言えば“吐くな”って、お前のアドバイスはクソなんだよー」みたいに言い返される下りもあって、なんか、あれ、良かった(笑)。オレも最近,非常に恵まれたことに自分の子供といってもおかしくないような若いミュージシャンや若いスタッフと仕事をすることがあるのだけど、若い奴は……観てるだけで、なんか幸せになるな。若い奴といると、未来はあるって思えるんだわ。そしてこの地球が彼らにとって生きやすい場所であれと願うのだ。若い奴を応援する自分でありたい、と強く思うのだ。だから、このお父さんの気持ちは、痛いほど分かる。お前は上手くやれよ、オレは失敗したけど、みたいな。
ちなみに音楽は吹き替えなしで二人の俳優はこなしたそうで、そこはもう高得点。
…と、ここまで書いて思った。うん、「あまり器用じゃない映画」まさにそれだ。でも私はかなり好きだ。器用な映画よりよっぽどね。少しでも興味を持った人は見た方がいい。
うまく説明できないが、なんかこう、物語を伝えるテクニックみたいな部分が器用じゃない映画だなとは思った。そこがこの映画の魅力でもある。
でも、まったくもって内本さんの言うとおり、映画全編通して父親の痛みはずっと漂っているが重苦しくはない。テンポはよくワクワクする場面もある…と。まさに。とにかく話にぐいぐい引き込まれ、時間がたつのも忘れてしまう。そういう映画ではあった。
そして楽器屋の親父はいつも、なんだかいい立場を持って行くよな、とも思ったのでした。楽器屋の親父を演じるのはベテラン、ローレンス・フィッシュバーン。そして出てくるキャラクターは主人公で父親役のビリー・クラダップも含め、ホントに全員が魅力的だったと思う。再婚して子供を産み必死で自分の生活をたてなおそうとするお母さん、一方で立ち直れずいつまでも引きずる元彼女。息子の周りにいた人たちは、悩みながらも、生きることを続けていく。というか、とにかく生きて行くしかない。死ぬわけにはいかないから。
それにしても、うん、なんか妙な映画ではあった。物語の後半に、とある真実があかされ、そこから観る者にとっては、なんというか、話のトーンがガラっと変わってしまう。そこで、私にとっては実は……そっちの問題の方に気持ちが持ってかれて、その時点で、音楽のことがなんだか吹っ飛んでしまった。でも内本さんの言うとおり、そんな予感はあったかも。ちょっとヘンだな、と。
震災の時もちょっと思ったのだが… 究極的なところで音楽は弱いのかもしれない。やっぱり人間としてのベーシックな幸せがあった上で楽しめるものなのか、とか思ったりもしてしまう。うーん、何の事を言っているか分からないだろうけど、ネタを明かしちゃうと、これから観る人がこの映画を楽しめなくなるだろうし…、やっぱり明かさないでおく。
音楽は神様のもので、天から降りてくる、とはよく言ったものだ。音楽を書いた人は、その音楽を人々に届けるための、メディアの1つにすぎない、という人もいる。そしてそれを歌うお父さんも、歌を届けるメディアの1つにしかすぎない。
……とかなんとか、ごちゃごちゃ考えるまでもなく、お父さん役の彼は最高に素敵だった。そしてそれ以上に素敵で可愛かったのが、一緒にバンドをやろうと主人公を誘う、主人公とは息子ほど年の離れたクエンティン役の若い彼、アントン・イエルチン。レニングラード生まれの若い俳優さんだが、俳優さんというより、クエンティンというミュージシャンに私はもうぞっこん引っ張られた。あふれるほどの才能を持ちながら、繊細すぎて、自信がなくて、世の中と上手くやれないミュージシャンを私は山ほど知っている。また表面上うまくやっているように見えても、複雑でシャイな内面をかかえてるミュージシャンたちを沢山知っている。自分の近くにいる、その人たちの顔が浮かんでしょうがなかった。ミュージシャンはみんなフラジャイルで魅力的だ。バンドを続ける、ってどういう事なんだろう。音楽を続けるって、どういう事なんだろう。でも作った人が信じてやらなければ、音楽は、楽曲は、いったいどこに行くというんだろう。
まぁ、良い映画ではあるのだ。これだけ語りたくなることが出てくるわけだから。でも、なんだろ、そういうテーマを中心に書きたいのであれば、なんとういか、別のテクニックがあったんじゃないかなとも思う。でも少なくともジョン・カーニーの新作より、よっぽど音楽について考えさせられるとは思うし、いい映画だったとは思う。ただ、やはりお話を上手に伝えるテクニックみたいなものが、ちょっと欠けているのかなとも思う。でもまた言うけど、そこがこの映画の魅力でもあるのだと思う。
と、まぁ、不完全燃焼ながらも、しっかりパンフレットまで買って隅々まで読む。監督のプロダクションノートより。「第1回監督作品に、明らかにあまりにも簡単ではないトピックを選んでしまった」と。うん、そうかもしれない。こういう家族の事を書きたいんだったら、もうちょっと違うテクニックがあっても良かったんじゃないかな、とも思ったし、逆にストレートに話を運んでも良かったんじゃないかな、とも思った。そこが賛否両論になっているのじゃないかしら。でも、なんだろ…音楽好きのスタッフ勢だから、きっと音楽のマジックを作品に盛り込みたかったのかな、とも。
最後、お父さんが若者にかける言葉が良かった。お父さんはあれこれ若者にアドバイスしたり、女の子の引っ掛け方とか指導したりしてる。でも「“緊張する”って言えば“緊張するな”、“吐きたい”って言えば“吐くな”って、お前のアドバイスはクソなんだよー」みたいに言い返される下りもあって、なんか、あれ、良かった(笑)。オレも最近,非常に恵まれたことに自分の子供といってもおかしくないような若いミュージシャンや若いスタッフと仕事をすることがあるのだけど、若い奴は……観てるだけで、なんか幸せになるな。若い奴といると、未来はあるって思えるんだわ。そしてこの地球が彼らにとって生きやすい場所であれと願うのだ。若い奴を応援する自分でありたい、と強く思うのだ。だから、このお父さんの気持ちは、痛いほど分かる。お前は上手くやれよ、オレは失敗したけど、みたいな。
ちなみに音楽は吹き替えなしで二人の俳優はこなしたそうで、そこはもう高得点。
…と、ここまで書いて思った。うん、「あまり器用じゃない映画」まさにそれだ。でも私はかなり好きだ。器用な映画よりよっぽどね。少しでも興味を持った人は見た方がいい。