一応、フルックとビル・ジョーンズ総括



このイラストをバンドにくれた方、ありがとう。「なんて書いてあるのか訳してくれ」と言われて,電車の中でバンドに教えてあげました。みんな、すごく喜んでましたよ〜

それにしても… 終わった、終わった! 終わった〜っっ! 遅くなりましたが、Better than neverということで、一応総括しておきます。今回のツアー。

まだ肩は痛いけど、ステージタオルの洗濯は終わったし、まだツアー経理は終了してないが(請求書がまだな業者の方、早くよこしてください。払いませんよ!)とりあえずツアー自体は終わったのでほっとしている。このくらいの規模のツアーは、去年のハラール以来だから自分にとっても久しぶりだった。今年は細かい事業や人のお手伝いはポロポロあるものの、半年に1本大きな企画をまとめるという方針で進めており、自分的にもそれがよかった。やっぱり人間、集中しないとダメだね。小さな事ポロポロやっても、自分の歴史にならないし、誰も覚えててくれないよ。大きな企画ったって他のプロモーターさんから見たら、たいしたサイズじゃないけど、私にしてはこれくらいで充分大きい。だからこれからも出来ればこの方針で行きたい。っていうか、いっそ大きいツアーは年に1度くらいに押さえたいもんだと思ったりしているのである。ふぅー。

フルック、ホントに久しぶりだった。このツアーを決めたとき、正直言うと実は強い意志は私にはなかった。でも「そういやフルック、再結成後まだ来てないな〜」「春の企画なんかやらなきゃな〜」ってな流れで、フルックの来日を決めたのだった。彼らから「また呼んでくれ」と強く言われたわけでも何でもない。でも条件など提示するとすぐセーラからオッケーが出て、そこからはもう何度も一緒にやった仲なので、とってもスムーズに話が進んだ。前々からフィンランド祭(2012年…だったっけな?)が成功したので、何か同じような企画をやってくれと言われていた北区からの希望にも答えることが出来たし。

フルックとのツアーは、なんというかとっても楽しかった。彼らの「ジョージ!」「クリス!」を久々に聞いたし(彼らはなぜか男性メンバーは全員ジョージ、女性メンバーは全員クリスと呼ぶという決まりになっている)、彼らはとにかく「バンド然」としている。そこがむちゃくちゃ楽しい。バンドは多いが、本当に「バンド」であるバンドは少ない。あまり多くは言えないが伝統音楽のバンドの場合、営業先が充分にあるという状況下において、だいたいのバンドが「バンド」ではなく「営業部隊」みたいになっちゃっているのは事実だ。だからメンバーが変わってもロックバンドと違って割となんとかなってしまうという現状がある。そんな中、フルックは、今やウチのバンド連の中で、ヴェーセンと並びメンバーが変わっていない唯一のバンドである。(あ、マーティンとデニスもそうか。でもあれはデュオだからなぁ)

でも、思うんだけど、文化祭のときの学生バンドでもなんでもいいんだけど、「バンド」っていうものを知っている人なら分かると思うんだけど、「バンド」を運営していく大変さたるや、本当にものすごいものなんだ。

フルックは本当に「バンド」だ。個性のあるメンバーが集って、お互い助け合って、頑張る姿に、私はあらためて感動してしまった。実は今回のツアーはいろいろあって最初の方とか結構大変だったのだけど、そんな時も彼らはお互いを思いやり、お互いを助け、バンドとして私に対してとっても気を使ってくれる。大変なときも、楽しいときも、みんなで喜びや大変さを分かち合い、お互いを支え頑張ってきた。そんな彼らの姿に心を打たれないスタッフがいるとしたら、それはウソである。ホントに改めて彼らの姿に感動してしまった。

それにしても演奏めっちゃくちゃよかったよね。ブライアンはやっぱりフルックでの演奏が一番いい。一番彼が自由に暴れられるのがこの場所、ってことなんだろうか。もちろんジョン・ジョーのものすごいバウロンもかっこよかった! サウンドチェックで一番音が決まるのに時間がかかるのがジョン・ジョーのドラムだ。今回は東京公演は2公演とも音響を自分の信頼する小林高治さんにお願いできたのがよかった。エドとのコンビも完璧で、フルートのブレスにあわせて、キメまくるところなんか、もうホントに感動してしまう。そして抜群の安定感の演奏、セーラ。彼女がいるからフルックは成り立っている。全員がとっても個性的で素敵なメンバーたち。あぁ〜、終わっちゃって寂しいよな!(笑)

京都公演が今までの歴代「磔磔」動員記録を塗り替えたのにはびっくりした。実は意外に思われるかもしれないが、今までの磔磔公演で、動員記録が一番よかったのはペッテリ・サリオラだ。思うところは多々あるが、ポール・ブレイディよりも、グレン・ティルブルックよりも、ペッテリは動員が良かった。そしてフルックはさらに良かった。(ただし関西公演はいつも「初関西」が一番動員が良いという傾向にあるので、今後は注意が必要。それはそこでどんなに素晴らしい公演をやったとしてもあまり関係ない…というのが私の見解)ソールドアウトになった北とぴあはもちろん、duo公演も予定より売れたし、ホントにお客さんには感謝だ。そうそうduoでは25歳以下の割引チケットを予約してくれた方もたくさん来てくれてホントに嬉しかった。特に8名の団体さん予約! 嬉しかったよ! そしてちゃんと全員がキャンセルもなく来てくれたのは素晴らしいと思う。日本の若者は偉い。日本の未来は明るいな! 本当にありがとうございました。

ただ、まぁ、あとは何というかもう少しステージはこびを勉強した方がいいよね、フルックは。「少しビック・プロダクションもののコンサートを見に行ってきなさい。誰もベラベラダラダラしゃべってないから」「チーフタンズやカルロス・ヌニェス、最近のところではWe Banjo 3とかのステージを見てきなさい。ステージ運び上手だから」「しゃべるのがケヴィン・クロフォード(ルナサ)みたいに超上手かったとしても、しゃべりは演奏の妨げにしかならないから」とか…言ったんだけどね(笑) わたしは音楽のことには口を出さないが、ステージ運びについてや、コンサートの長さについては結構口を出す。以前ヴェーセンに「頭3曲くらいしゃべんないでやったら恰好いいのに」と言ったら、彼らが本当にそれを実行しているので嬉しく思っている。実際にその方が良いしね。

フルックに関してみれば、自分たちはしゃべりすぎだ、ということは、結構自分たちでも自覚はあるみたいだった。ま、これからだよね、これから。もっとも、あぁいう不器用な感じも彼らの持ち味なんだし、あれはあれでいいのかも。お客さんがそれでも大丈夫と言ってくれるのであれば、私がこれ以上言うことでもないでしょう。もう1度伝えたんで、それでいい。

さてバンドは「ニューアルバムは来年」と言ってましたが……このツアーが決まったころ(約1年半前)も「そのころまでにはニューアルバムが出ている」なんて言ってましたから(笑)話半分に聞いておくとして、とにかくフルックの今後に期待です。ステージで演奏された新曲はホントにどれも素晴らしかったから、本当に楽しみ。

そして…ビル・ジョーンズ! 今回この東京公演は彼女の12年ぶりの復活ステージだったのでした。それについて認識している人がどのくらい会場にいたかはわからないけど、とにかく私はこの世紀の大役をこなして、自分でもめちゃくちゃ誇りに思っている。ビルは15年くらい前にBBCのフォークアワード取って、fROOTSの表紙になったりして話題になっている頃から、いわゆる英国のフォーク業界のエージェントやマネジメントとは一線をかすところで活動してきた。だからこんな復活劇が作れるのは、ビルとちゃんとパーソナルにつきあってきた、世界中でも私だけよ…と心の中でガッツポーズをしたのだった。イギリスのフォーク・マフィアの連中にはこんな芸当はできまい(笑)

アーティストを助けるのが私たちの仕事なんである。実は土曜日の公演のあと某音楽評論家の先生に「ビルはちょっと一本調子じゃないか」とか言われてマジで怒る。この状況下で事情を知った上でそれを言うかね?と正直思った。思っただけではなく、もちろんはっきりその場で反論したけどね。(いや、誤解のないように書いておくと、その評論家さんとはとても仲良しですからね、私)あのビルちゃんの圧倒的な説得力が分からないとは、ちょっとビックリ。彼女のことを声の綺麗な歌手としか評価できないというのは、ちょっと??? あの押さえた表現の歌こそ、英国伝統音楽の神髄。あの圧倒的な存在感が分からないのかなぁ。まぁ、でも過去、中村とうようなんかもケルト音楽まったく分かってなかったからね。(が、とうようさんの場合、ご本人にもその自覚があったらしくマガジンの巻末ディスクレビューはとうようさん担当のワールドミュージックの欄からケルト音楽は除外され、ケルトは松山晋也さんが担当していたのだった。おかげで他のワールドミュージックのレーベルさんみたいに自社のCDが0点をくらうことはウチにはなかった)

とにかくビルの歌たるや、ホントにすごかった。私はもう涙が出るくらい感動しまくってしまった。あれこそ本当の「伝統歌」だ。ビルの復活は、おそらく今回のフルックの再来日以上に英国伝統音楽の歴史において重要なもとして残って行くだろう。私はそこに係れてすごく誇らしく思う。これからビルがニューアルバムを出して、ちゃんと復活していくのか、それは分からない。でも少なくともビル自身は自分の12年ぶりの復活は日本がきっかけだった、と覚えていてくれるだろう。そうやって私は私がここにいたことをミュージシャンに覚えていてもらいたいんだ。そしてあなたのことを応援しているファンの人たちがここにいるんだよ、って覚えていてもらいたい。それがミュージシャンの演奏活動のちょっとした励みになる。ちょっと、だけどね。ちょっと。でもそれが同じ地球に生まれた者どうし、お互い支え合って生きていくって事じゃないかなぁ。ビルちゃんのCDは、ここで売ってます。

PS
フルック来日中の写真などはこちらにたくさん掲載しています〜 コミュニティ会員、月300円から。チケット優先予約もありますよ。

楽しかった時間は二度と帰ってこない。
ご来場くださった皆さん,本当にありがとうございました〜