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2016年8月24日水曜日

高野秀行「未来国家ブータン」を読みました!

またもや高野本。楽しく読みました。

今回はブータン。いつだったか国王夫妻が来日し「世界でもっとも幸せな国」をアピールして帰ってったよね。それを覚えている人も多いと思う。なんて素敵な、謙虚なご夫婦なんだろう、と。世界最貧国の1つながら、教育が無料だったり、めちゃくちゃエコだったり(基本自給自足)、世界で一番幸せな国を実現させているのが、ブータンなんだよ、と。

なるほどよく出来ている。ある意味、国民は洗脳され(というと言葉は悪いが)自分の幸せに疑問を持っていない。

そんなブータンに高野さんが飛んだ。国のプロジェクトでなければ行けない秘境中の秘境。高山病で具合悪くなりながら、お腹を下しながら、高野さんはあいかわらず「運ばれて」行くのだ。世界の辺境へ。

高野さんの目的は表向きは友人の製薬会社の依頼によるTK(笑/詳細は本を参照ください)、真の調査目的はもちろん「雪男」(爆)2つのミッションをかかげ、高野さんの旅は始まる。

が,この本においても「雪男」だなんだ言いながら、本当に発見するのはこの国の真実なのだ。やっぱり探検家は素晴らしい。

テレビなんかで薄っぺらに紹介されているブータンの印象がまるで変わってしまった。大国にはさまれブータンが生き残る道はここしかなかったのだ、と高野さんは言う。そしてそれは実はダライ・ラマの理想を実現しているという考察もおもしろい(「ダライ・ラマはブータンをどう思っているのだろうか」)。環境を重視するライフスタイルや哲学は、まるで政府というよりはNGOとかNPOみたいだ、と。思想をしっかりもった非営利団体みたいだ、と。

そしてブータンではインテリほどそういう傾向が大きい。みんな目をキラキラさせて自分の国は素晴らしい理想を掲げた,素晴らしい国だと評価する。そして王様のことを本当に心から尊敬している(実際、すごく良くやっている)。通常どこの国でもインテリほど自国に批判的な視線を持っているのに、これは驚くべきことだ、と。確かにホントに上手くできている。例えば医療などもけっして必要以上に西洋医学にかたよるでもなく、西洋医学か東洋医学をバランスよく本人が選択することもできる。「医師はすすめることをするだけで最終的な判断は本人」としており、高野さんの「でも自分はそれでもこっちの治療を受けたい、と患者が言い出したらどうしたらいいんですか?」という質問には「ブータンにはそんな人はいません」と医者は答える。ここで高野さんは気付く。つまり患者の自由は保障しながらも明確な指導みたいなものがそこには存在している。ブータンには「どっちでもいい」とか「なんでもいい」みたいな状況が実に少ない、と高野さんは言う。何をするにも方向性と優先順位は決められている。実は「自由」は少ないのだけど、あまりにも無理がないので、国民は自由がないことに気付かないし、個人に責任はなく、葛藤もない。「国民にいかにストレスを与えず、幸せな人生を享受してもらえるかが考え抜かれた、ある意味ではディズニーランドみたいな国だった」と高野さんは言う。

だからブータンは、こんなに貧しい国なのに、豊かな日本は何年も遅れているように感じてしまう。そして日本はブータンみたいにはなれないし、また戻ることもできない。ブータンに感じるのは「私たちがそうなったかもしれない未来」だ、と高野さん。なるほどねぇ… いやホント世界にはいろんな場所がある、って改めて強く思ったわけでした。

そしてあいかわらず読みやすい、おもしろい本であった。

まぁ大傑作「西南シルクロード」とかに比べるとちょっとパンチが足りないかもしれない。でもこれはこれで凄い本であることも事実である。文庫化されて手にはいりやすくなっている今、是非購入をお薦めします。

PS
まぁ、でもちょっと洗脳チックかな…とも思ったり。まさに高野さんの指摘の通り幸せの「ディズニーランド」。そういう意味では日本みたいなところでも、言いたい文句言いながら生きてた方がいいかも…と思ったり。