遠藤周作「沈黙」…再読しました!

昨日は誕生日につき、仕事が忙しかったけど、自分自身に休憩をプレゼント(笑)近所のサイゼリアで斜め読みながら「沈黙」をざっと再読。映画を観て、また細部を確認したくなったのだった。映画の感想はここ

そこで映画とのイノウエと会うシーンははっきりと夏の暑い中という設定だったのを確認。私がちゃんと読んでいなかっただけだった…。かなりはっきり描写されている。そして再読してみれば、ガルペの殉教シーンも映画のあんな感じででも良かったかな…とも思われた。私の持っていたイメージとはだいぶ違ったが。

そしてやはりやはり…原作を読んでみれば「どうして神は沈黙をつらぬているのだ」という疑問は常にそこに力強くあった。本では、その点がめちゃくちゃパワフルで、そこが映画ではやはり物足りないと、再度思った。

そして、逆に再読してみて「オレ、全然わかってなかったな!」とビックリしたのは「日本にはキリスト教は根付かない」ということが、これほどまでに原作で強調されていた事だ。まったく何を読んでいたんだ、オイラ! スコッセッシに言われるまで気付かなかったよ。

それにしても最後の踏む瞬間に神様の声が聞こえたところは、何度読んでも圧巻である。サイゼリアで号泣しそうになった。この数行のために、この本のすべては、ある。

気に入ったセリフなどを引用。自分の備忘録として…


<日本に基督教が根付かなかったことについて> 
フェレイラのセリフ「この国の者たちがあの頃信じたものは我々の神ではない。彼らの神だった」
「彼らが信じていたのは基督教の神ではない。日本人は今日まで」フェレイラは自信をもって断言するように一語一語に力をこめて、はっきり言った。「神の概念はもたなかったし、これからももてないだろう」 
再びフェレイラのセリフ「日本人は人間とは全く隔絶した神を考える能力をもっていない。日本人は人間を超えた存在を考える力を持っていない」 
ロドリゴのセリフ「基督教と教会とはすべての国と土地をこえて真実です。でなければ我々の布教に何の意味があったろう」 
イノウエ「日本とはこういう国だ。どうにもならぬ」 


<沈黙をやぶるキリスト>
フェレイラのセリフ「わしが転んだのはな(中略)神が何ひとつ、なさらなかったからだ。わしは必死に神に祈ったが、神は何もしなかったからだ」 
(拷問をうける村人たちを前に、もしここに基督がいたなら)フェレイラは一瞬、沈黙を守ったが、すぐはっきりと力強く言った。「たしかに基督は、彼らのために、転んだだろう」
 (そしてクライマックスのこのシーン) その時、踏むがいいと銅板のあの人は司祭にむかって言った。以下省略(ああああー、このシーン,何度読んでも号泣だよ!!! 感動MAX)
(そしてこの本を愛する誰もが覚えているだろう最後のエンディングの1文)「あの人は沈黙していたのではなかった。たとえあの人が沈黙していたとしても、私の今日までの人生があの人について語っていた」(感動・激MAX) 


<人間の弱さ>
「強い者も弱い者もないのだ。 強い者より弱い者が苦しまなかったと誰が断言できよう」 

しかしすごい本だよな。何度読んでも感動だ。そして改めて全体を見れば、構成がおもしろくもある。①伝聞→②次にロドリゴの独白スタイル→③第3者がロドリゴを語る(捕らえられている期間)→④またもやロドリゴの独白スタイル→⑤漢文みたいに難しい報告書

何の意味があって遠藤がこういうスタイルにしたのか、まったく理解不能。詳しい人がいたら教えてください。でも②から③の流れは全く違和感がなく、いつのまにかそういう風になっていたので「あれ? いつの間に…?」と思ったりしたのだった。これも不思議。

しかしホントに疑問なのは、これだけ原作が「神の沈黙」という事に執着しているのに、1971年度版の日本人監督が制作した映画「沈黙」では、この神がロドリゴに語りかける部分がまったく描かれていないということだ。これは驚愕である。でもこっちは遠藤が脚本を制作を手伝っているはずなんだよね… 詳しい方いたら教えてください。本がヒットしたから5年後に映画作った程度のことだったのだろうか。とにかく私はこっちは全然ダメでした。単に原作のエピソードを追いかけちょっとエロティックなシーンをくっつけただけって感じ。でも音楽が武満で妙にかっこいい。あと丹波哲郎のフェレイラが妙に決まっている。英語も日本語も。特に最後ロドリゴに説得するシーンはなかなかの説得力である。

ところでこのスコセッシ監督のインタビュー記事が良かった。さすがの視点だ。確かにこのインタビューで語られている視点を踏まえて遠藤の原作を読むとかなり響く。

しつこく書いたけど、スコセッシの映画はいいですよ。是非見に行ってください。そして感想を聞かせてください。

そして、何度も書くけど、この感動は種類はまったく違えど角幡唯介さんの「雪男」本に非常に似ている。こちらも必読よ!! 私に言わせれば神様もいるし、雪男もいるのよ。見えない人にはまったく見えないけど。