— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2017年6月16日
高野さんのこの連載、ホントに面白いのだが、今回のは更に秀逸。なんというか高野さんの視点を通すと世界への理解が進む…というか、理解が進んだような気がする。いや、分かった気になってしまっては返って危険なのだが、なんというか、人間ってみんな同じなんだなぁという共鳴というか、そうして、ちょっと自分が高野さんのような優しい人間になったような気になるんだよね。
旅をせずにはいられない者の気持ちは分かるのだ。ランボーには放浪癖があった。子供のころから家出を繰り返し、17歳の時、自分の倍の年の詩人と愛人関係になり、その男性に妻子を捨てさせ、さらなる放浪を重ねる。 彼と破局してからもさらに放浪を重ね、職業を点々しながらさらに放浪。後世に大きな影響を与えた詩作は、なんと20歳頃には、とっとと辞めていたという…。
このランボーの人生、デカプリオ主演で映画になっているし(「Total Eclipse(邦題:太陽と月に背いて)」)、 蜷川幸雄さんの演出で日本では「皆既食」というタイトルの舞台にもなった。それにしてもディカプリオ演じるランボーは退廃的で綺麗だねぇ〜。タイタニックでブレイクする2年前。「Tell me if you love me」「You know I'm very fond of you. Do you love me?」「Yeah」「Put your hand on the table…Palm upwards」くぅ〜っっ、会話がいいねぇ。白濁するアブサン… 時代だよねぇ…
そのランボーがなぜかアフリカにだけは留まった。最後の3年間は、もうどこへも行かなかったのだという。家族に残された手紙によれば「〜へ行きたい」的なことは、告白もしていたようだ。だが、実際には言うばかりで、その場から動こうとはしなかった。ランボーの研究者の先生も、この彼の動かない理由は「不可解だ」としているという。
ところがノンフィクション・ライターの高野秀行さんが、その謎に一つの回答を与えた! ここまで1つの場所に執着する理由は… 普通は「女」だ。そういう説も考えられるが、しかし、高野さんのこれを読めば、その理由は絶対にカートだった!!と思わずにはいられない。なので面白いから、是非これを読んでみて! そしてまさかあの名著「謎の独立国家ソマリランド(西洋民主主義、破れたり!)」を読んでない人はいないでしょうけど、まだの人は「これ大好きだったんだけど友達にあげちゃったんですよね…」と言い訳しながら1冊目を買いましょう。
高野さんの「ソマリ本」読んだ人なら分かると思うけど、カートって中毒性があるのだ。 生の葉っぱをクチャクチャかんで、そして覚醒する。カートは効いている時は最高に気持ちがよいらしいのだが、覚めればものすごい倦怠感が襲ってくるらしい。カートは、イスラム社会とキリスト教の社会を分けるものだった、という話も面白い。ヨーロッパ人が禁止したのも無理はなく、皆がくちゃくちゃと寝転びながら草を噛んで働かないのであれば、そもそも植民地の意味がない。
ランボーがこの地に執着したのもカートが他の場所では育成できないからだ、と高野さんは考える。 もちろん推理の域をでないし、何の証拠があったわけでもないのだが…。この高野さんの推理はおそらく当たっていると思う。すごいなぁ。こういう風に世界をながめたら、ホントにまったく違う何かが見えてくるのかもしれない。
今日も張り切って行きましょう! 15:45くらいにインターFM、聞いてね! 週末は高野さんのサイン会が高野本の聖地、松戸の良文堂書店さんで行なわれます。大好きな角幡さんとの対談本がこんなにチャートが低いのが私としては納得がいかない。文庫になった「ソマリランド」はもちろん、チャート操作に行かねば…
今週の木曜日は集英社文庫の発売日→ https://t.co/46ncXCvrMu 。高野本の聖地良文堂書店には『謎の独立国家ソマリランド』がド~ンと入荷します!!そして、24日の土曜には高野秀行さんの突撃サイン会がございます。高野作品のサイン本をお求めの方はぜひご来店下さいね♪ pic.twitter.com/Z49MLmO1PM— 良文堂書店 松戸店 (@Books_Ryobundo) 2017年6月20日