EU フィルムデイズ、ワイダ監督作品などポーランド映画2本、観てきました〜

今日は京橋のEU FILM DAYSさんにお邪魔してきました。EU FILM DAYSが終るまであと10日間。あと何本観れるかな…?

今日はポーランド映画2本です。実はあと1年半くらいたたないとお話できないんですがが、現在のざきはポーランドおよび東欧関係の音楽,文化を必死に勉強中。今日は2本続けて貴重なポーランド映画が上映される日だったので(しかも偉い先生の解説付)これは良い機会だというわけで、勉強に出かけてきました。ちなみに和井田…もといワイダ監督のお名前はもちろん存知あげておりましたが、まだ映画は1本も観た事がなかったのでした。

まず1本目はアンジェイ・ワイダ監督の作品「すべて売り物」(1968年作)


映画製作の現場を題材にしたシュールな作品。映画制作の現場に主演俳優があらわれず、監督が代役をつとめ列車に飛び込むシーンを撮影していると、なんとその主演俳優は列車から飛び降りようとして事故死をしていていた。俳優の妻と監督の妻、監督… 映画をどうしても仕上げたい監督は若い俳優に良い役をあたえたのはいいが、果たして映画は完成するのか? 実はこの作品、監督の代表作「灰とダイヤモンド」の名優ツィブルスキの死の2年後に公開になったので、監督は友人の死をこんな形で表現しようとしたのかも…という説もあり。正直、映画の中の現実が、撮影されているストーリーとの間を行ったり来たりする展開なので、どうも私は馴染めず、なんどもウトウトしてしまったが、最後に若い俳優が馬とはしゃぎ回る自然なシーンで終ってみれば、妙な納得感/見応え感もあり。上映後、解説者としてポーランドを代表する映画研究家、クラクフのヤギェロン大学教授のルベルスキ先生がお話しされ、なんとなく概要を掴んだ感じ。

続いては、ワイダ監督の代表作「灰とダイヤモンド」の主演俳優ズピグニェフ・ツィブルスキの名演をオムニバスでつなげた作品「ズビシェク」(ズビシェクは、ズビグニェフの愛称)。なんと上映前にばったり、後輩のY氏に会う。休日だというのに、あいかわらず勉強熱心だよなぁ! 氏はなんと「灰とダイヤモンド」が卒論だったというから驚きだ。ワルシャワへもクラクフへも、私なんかよりもずっと前にとっくに訪問済み。やるなぁ! 2年後のウチのポーランド企画、手伝ってもらおうっと、と勝手に思う。もっとも、確かに今回のこの上映は、ここでしか観られない超貴重なものだったらしく、ワイダ監督ファンのY氏も外せなかったのであろう。それにしても、昼間の映画上映に比べ、会場はほぼ満員のぱっつぱつ状態だった。解説には先ほどのルベルスキ教授に加え、映画評論家の佐藤忠男先生も登場。私は「灰とダイヤモンド」すらまだ観てないので(絶対に観ます!)、ただの名場面シーンをつなげたにすぎないこの映画は、正直どんなもんかと思ったのだけど何故か妙に引き込まれてしまった。なんというか、この俳優さんの生き様というか、役はそれぞれだというのに、そこに妙な一貫性があり、説得力があり、実際「すべて売り物」より全然楽しめた1本でした。1969年作。

先生がおっしゃっていたことで、心に残ったキーワードは「言葉にできない怒り」「身悶えしながら死んでいく若者たち」「自分は他の人とは違うと事の表明」 など、今後ポーランドの企画書を書くにあたってヒントになりそうな企画書ワードがザックザク…。「共産主義はいやだという内心を発言することができない」が、「共産主義に対する理想もあった」「こんなはずではない、という葛藤」「体制にあわせていけば裏切りものと言われてしまう、その怒り」などなど。うーん、なんとなくポーランドが分かってきた来た気がするぞ。教授によれば、ポーランドには、ポーランド・ロマン主義の伝統ってのがあるんだって。自分の置かれた悲劇性を一歩離れて皮肉に観るようなところがポーランド人にはあるんだと…。なるほど。

ツィブルスキは人々のために何かしたい、っていう人だったらしい。で、ボランティアで朗読会などをひらいたりしていたところ、人々の反応がよく、それをミッションと感じ、俳優を目指すようになったんだって。(このミッションってのが、いかにもカトリック系ではあるよね…。でも感覚としては分かるなぁ…)亡くなった原因っていうのも、人に呼ばれると断らない人だったので、あっちに呼ばれ、こっちに呼ばれ、毎晩お酒を飲んでいるうちに自分の健康を害し…という事だったらしい。でもあれはゆるやかな自殺だったのではないか、とルベルスキ教授。

また教授の話で面白かったのは、ホントに「灰とダイヤモンド」は、ポーランド中で大ヒットしたんだって。この映画によってツィブルスキは一躍有名人になった。教授も子供のころ彼に憧れて黒いサングラスを親に頼んで買ってもらった。で、学校では、子供たち皆がツィブルスキに憧れて黒いサングラスをかけていた。先生もそれに文句は言わなかったんだって。それは先生も黒いサングラスをかけていたから(笑)

佐藤先生が67年に書いたという「チブルスキー(当時はこういう表記だったらしい/笑)追悼」という、当時「映画評論」に掲載された記事も配られた。こういう貴重な資料、助かる!

で、今日から岩波ホールで公開になったワイダ監督の最新作/遺作の「残像」も注目です。これはいわゆるスターリン時代のポーランドの話。現在、ポーランドも非常に極端な政治体制だそうで、今こそ、この時代の悲劇をあえて思い出そうっていう動きがあるのだそうです。日本もホントに人ごとじゃないよね! これは絶対に行かないと〜




このETVの番組も必見… 


「灰とダイヤモンド」もネットに上がってた。英語のサブタイトルで観れる。