いや〜、実はスペインって行ったことないし、彼の地の文化ってまったく疎い私なのですが、大好きなカルロス・ヌニェスが出ているのというので、さっそく観てきました。巨匠カルロス・サウラ監督最新作「J:ビヨンド・フラメンコ」
そもそもフラメンコが何かということもよくわかってない私ですが(でもフランコ政権が保護したから、こんなにスペイン=フラメンコってイメージが強いんだよね?)、映画のチラシによると、これはフラメンコのルーツともいうべき「ホタ」の魅力にせまる映画。基本的には淡々とアーティストが紹介されるだけなのですが、まぁ、スペイン音楽/ダンスファンにとってはたまらない内容になっています。
カルロス・ヌニェスは、あの軽やかなリコーダーの音が2秒聴こえた瞬間、「❤」。一発で分かりましたよ。そしてやっぱり一番目立ってた。映画通して演出を極力抑えた画面なんですが、カルロスは結構はじけてました。あ、あとカニサレスはやっぱりかっこよかったなぁ。こうして考えるとホント、プランクトンさんで来日させてくれなかったら、私はまったくスペインの文化に触れることが出来てないんだな、と改めて思いました。
…みたいなことを、ちょうどこの試写のあとに訪ねたプランクトンさんのオフィスで話したら「そんなことない、音楽はともかくダンサーは結構来日してるわよ」とのことでしたので、単に私のアンテナが低いのか? なかなか自分のテリトリー外は、同じヨーロッパと言えどもフォロー出来てませんな…
しかしスペインって国がデカいし、そもそも文化圏も複雑でたくさんあってそれぞれが個性的なので、よく分からない。いろいろ勉強したら面白いんだろうけど、なにせ時間もないからなぁ。カタルーニャは、でも、今、大変なことになっちゃってるよね。そのくらいは私も知っている。
詳しくはwikiをご覧ください。 |
そもそも何をもって「フラメンコ」は「フラメンコ」と称されるんだろう。 「ホタ」はどのようにして「フラメンコ」になるのだろう。そのへんが知りたくなった。
…と思ったらいただいた資料に濱田滋郎さんの詳しい解説が! それによると、スペインは民謡舞踊の宝庫でフラメンコ=スペインの民族文化としてはいけない、という。ふむ。それは私も分かるぜよ。
そしてスペインにはフラメンコ以外にも興味深い音楽がたくさん存在していて、その代表格が「ホタ」であるというのだ。(ん?じゃホタはフラメンコのルーツというわけではないのでは?…と思った人、もう少しこの後の説明を読んでみて)スペイン東北部にあるアラゴン州。カタルーニャにも近いが、より内陸に位置しているのがアラゴン州で、ホタはここを代表する音楽舞踊なんだって。
「ホタ」の起源などははっきりしていないものの、19世紀にはこの地を代表する文化として知られていたのだそうで、リストなども「スペイン狂詩曲」の中に「アラゴンのホタ」を含めている。
「ホタ」の特徴としては器楽と歌が交互に置かれること(ポーランドのマズルカみたい!)、ギターやマンドリンみたいな弦楽器が器楽部分を担当すること。そして歌は男もしくは女のソリストによって歌われ、ほとんどがメジャーコードだということ。踊りは活発なリズムが特徴(だいたい3拍子/ポルスカやマズルカと一緒)。男性は勇ましさをあらわすために跳躍があり(これがフラメンコとの大きな違い)、女性は優美な愛嬌をあらわす。
そして本場とよばれるアラゴンのホタだけではなく、ホタとよばれるもの、同じ系統のものがスペイン各地に点在していて、バスク、バレンシア、スペイン中央部、西部、北西部にもホタが歌われて踊られている地方があるのだそう。そしてそれはフラメンコの中にも見られるんだって。なるほど!
正直、私にとっては、この映画を観ていてフラメンコとホタとの違いがはっきりとは分からなかった。でも最後のカーニヴァルのシーンとかは、どっかで観たことあったなぁという既視感があったなぁ。なんでだろう。でもこのどこの国の文化でも古くからあるものには「懐かしさ」みたいなものが感じられる、ってのはここでも感じました。
監督はフラメンコをずっと撮ってきた人だけど、ここへ来てスペインの多様性、そしてフラメンコ以外のスペインということを残したかったのかもしれない。…とか、思ってたら、監督の生まれ故郷はこの「ホタ」の故郷、アラゴン州だそうじゃないですか! なるほどね〜!
あ、そうそう、映画のカルロス・ヌニェスはタンバリンの女性たちを従えていて、そのパフォーマンスは7月にノルウェーで観たこのガリシアのアーティストを思い出させた。
映画のトレイラーに、こんな映像も発見! カルロスの演奏シーンの一部が紹介されています。
一方で、You Tubeで見つけたこの映像のコメント欄では、「フラメンコ」「ホタ」論争になっているのも面白い。でもこのダンスが「ホタ」なのだとしたら、フラメンコよりチャーミングで伝統的色彩が濃いって解釈でいいのかもしれない。このくらい違うとわかりやすい。明らかにフラメンコと違う。
スペインについて詳しい方、野崎はよく分かってないので、おっかなびっくり書いております。何か私がヘンなこと言ってたら、是非ご指摘ください(笑)
さて、この映画。やはりダンスものとくれば都内はここが聖地!?(笑)の文化村ル・シネマにて上映。どうやらこの監督の作品はすべてル・シネマが上映しているらしい。岩波=ワイダ、カウリスマキ=ユーロじゃないけれど、それって素敵。ってなわけで、是非皆さんも行ってみてください。11/25より公開です。