結論から言うと、うん、かなり好きな映画でしたね。良かったです。
フランス制作なんだね。デンマークから派遣された若い男の先生。すこしずつ生徒や地元の人たちと打ち解けていく。最初はデンマーク語で通せという本部(?)の支持にしたがっていた先生だけれど、そのうち自ら言語(グリーンランド語)を習い、犬ぞりを習うようになる。グリーンランドの東は本当にディープ。映画の中でも出てくるけど首都ヌークはほとんどデンマークだからね… 私も行ってみたいなぁ。グリーンランドの東側。ナヌークの子たちもしょっちゅういけるわけではなく「あまりに貧しくて大変だと思った」というくらい秘境な場所。うーん、ディープだ。(グリーンランドって国内移動がめっちゃ高いんです。当然ちゃ当然だけど)
監督はこのテのスタイルで映画を撮ってるフランス人で、この作品が4本目。北極にハマり、かなりの調査期間をこの映画に費やしたそうだ。うん、そういう愛情伝わってくるよ。
本当に何よりも子供たちの笑顔がいい。っていうか、演じてないでしょ、この子たち! そういうところは、ちょっと是枝監督のテイストにも似ているかな。これってドキュメンタリーであり、映画でもあるという手法らしくて、どこからが本当の話でどこからが作り込んでいるのかよくわからないのだけど、基本本人が本人を演じるというスタイル。だから子供たちはみんなナチュラルで、素晴らしい。子供たちの表情を見ているだけで、本当に心を揺さぶられる。
主演の先生の彼はなんと舞台で演技経験もあったそうだが、基本的には素人で、とにかくのきなみドキュメンタリーとして収録しつつ、最後、遠くに猟に出るところらへんは物語の起伏をつけるために仕込んだりしたとのこと。でもほとんどが演技じゃないから、いろんな意味で、とってもリアル。
能町みね子さんが「彼らの住んでいる村の様子がGoogle Earthで観れる!」と興奮したコメントを寄せてらしたが、まさに! そんなリアルなところが素晴らしい。そして先生はこの地にとどまることを選択するのだ。つまりまだまだ続いているお話だというのが、すごく良かった。まぁ、ほんと何よりも説得力あるよね。任期は最低でも3年で、この映画は彼の最初の1年目を伝えている。情報によると2019年7月現在、先生はまだグリーンランドに滞在中。でもグリーンランドでお嫁さんをもらいお子さんもつれてデンマークに帰る予定だ、とインタビューで話している。
それにしても音楽がナヌークだともっと良かったかな(笑)。フランス人が書いた音楽じゃ雰囲気でないぜ(爆)。
いずれにしてもグリーンランド好き・北極南極好きは観た方がいい。パンフレットももちろん購入。角幡唯介さん(今ごろはニューギニアの空の下)が書いてるしね。角幡さんがグリーンランド人を尊敬する気持ちがこめられた良い文章。あと北海道大学の高橋先生のこだわりの解説も必読です。そうそう朝日新聞のポーラー由美さんや、植村直己冒険館のNさんは、もうご覧になったかな… 北極仲間(笑)のことが懐かしく思い出される。
グリーンランド好きって、日本では圧倒的に冒険家・科学者が多くて、こういう人文系の興味や情報が薄いのよ。だからナヌークの音楽が日本に紹介されたこともそうだけど、こういう彼らの姿が映画になってとっても嬉しい。だって彼らから学ぶところがいっぱいあるから。フラハティの「Nanook(北極の怪異)」もそうだけど、こういう人たちのことがもっと知られるといいなぁ、と思う。だって、それはなんで生きてるか、ってのを学ぶことだから。
映画館の売店には北欧関係のいわゆる可愛い書籍が置いてあったけど、うーん、グリーンランドは「可愛い北欧」っていう概念じゃ売れないんですよ。どっちかというと血だらけでアザラシ食べたり、厳しい寒さの中での狩猟文化、何もかも分かち合い助け合う…みたいなところが重要であって…
しかし北極ってハマるよね。ハマる人は、もうがっつりハマると思う。私もまた行きたくて仕方ない。あんな厳しい土地で生きれるわけないんだ、自分は… でも本当に惹かれる。ずっとずっと思ってる。
ストーリー的には言ってしまえば、何も起こらないからつまらないと思う人も多いかもしれない。でもこういう映画が配給になって全国で見られるなんて素晴らしいよ。見れば必ず自分自身の生き方について考えることが出てくると思うよ。いったい私たちはなんのために生きてるんだろう、って。都会に住む我々共通の病気かな…
ただウチのドキュメンタリー映画の方がよっぽど話も面白いし、硬派だし、内容もあると思うんだけど、配給力で負けたよね(笑)。もっと私が映画の世界に詳しければ良かったんんだけどなぁ…(爆) というわけでウチの映画もよろしく! DVDやストリーミングの情報はこちらへ。