島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』を読みました


期待通りの本だった。島田ワールド全開。夏葉社さんの出す本が好きな方ならわかってもらえるだろう。装丁がとにかく素晴らしい。南伸坊さんによるものだそうだが、本当に綺麗な本だ。ずっとずっと持っていたくなる。帯の感じも紙の質も、すべてが愛しくなるような手触りだ。

正直この前に読んだのが、ホリエモンだったせいかもしれないが、逆に振れて(笑)、この島田さんのピュアで綺麗な世界が羨ましく思った。

兄弟のように親友のように仲良くしていた従兄弟が亡くなって、それがきっかけで本を出したいと思うようになったという島田さん。不器用ながら純粋に頑張る著者の奮闘ぶりが伝わる。不器用…とご本人は言うが、いやいやみんなが助けたくなるような愛されキャラなんだろうなぁと想像する。

島田さんが出版社を立ち上げた頃は、「一人なんとか」って流行ってた頃で、「一人出版社」は話題になっていた。編集などはフリーで一人で始める方は多いのだけど、いわゆる事案が通ったら編集料をもらえるという立場の編集者と違って、事業そのもののリスクを取らなくてはいけないから、出版社で一人というのは珍しいことだった。

音楽業界でもウチもそうだが「一人レコードレーベル」とか、「一人コンサートプロモーター」が流行っていた時期だったとは思う。CDも昔ほど制作にお金がかからなくなった。だからこそ可能だったのだろう。そしてそれぞれの業界が不況で、会社をやめて独立する人が多くなっていた時期だったと思う。自分は誰にも邪魔されず、会社などにNOと言わせず、自分の責任で自分の出したいものを出そうという気概にあふれていた時期だったとも言える。

同じ自営業者だが、私と島田さんではキャラクターが真逆だ。私は自分は音楽ファンでは決してないと公言し、仕事は早く合理性を重視、加えて嫌われることもまったく気にしてないキャラクターだと自分で思っているのだが、島田さんはその点「愛されキャラ」「丁寧」「不器用」な気がする。発言も本が好きな人たちの気持ちを逆撫ですることは絶対になく、本を愛している気持ちがビシバシ伝わってくる。誤解しないでね、島田さんの不器用が、私の言う器用より、より器用なのかもしれないのだから。あくまで自分を説明している主観的な感覚をここでは言っているにすぎない。私は島田さんより不器用なのかもしれない。

まぁ、でもどちらも嘘のない自分の姿であることは間違いないね。長く事業を続けるって、そういうことだ。そもそも一人で事業を回すってやっぱりとても忙しいから、あれこれ取り繕ってる暇がないのだわ。時々島田さんの世界が羨ましくなることがあるし、素敵だなぁと思うのだが、自分にはこんなピュアで清潔な生き方は無理だなぁ、と思ったりもする。やっぱりいろんなことを割り切っていくしかないし、私はそういう自分が自分で好きである。…と、いつも同じ場所に着地する自分なのであった(笑) 幸せだよな、オレ(爆)

でも何度も書くが、島田さんの世界がとてもうらやましい。誇らしげに並ぶすべての本は島田さんにとても愛され、そしてとても素敵だ。キラキラしている。

ところで島田さんの本って、もう1つあるんだね。こっちも読んでみようかな…