「バンドにエイド」CDを作る時はJASRACへの登録が必要です

先日「バンドにエイド」がらみでCD製造時のJASRACに支払う金額のことをブログに書いたら業界内の仲間から、「こんなに高いんだ!」と驚愕されて、「こういうことをもっと知りたい」と言われたので、簡単ですが、今日はCDを作る時の著作権の処理の仕方を書きたいと思います。

THE MUSIC PLANTにおけるリリースは基本的に輸入盤に帯・解説付きという形態が多かったので、ライセンスし日本で製造したアルバムはそれほどありませんが、それでも30〜40枚くらいはあったかな…。いや、もっとか?  いずれにしても日本でCDを製造するとなると、JASRACに使用料を支払わないといけません。

左の写真はケンソーの76/77というファーストの前のCD。ここに貼ってあるシール。こういうの覚えてる方いらっしゃいますか? それこそ代々木上原のJASRACに赴き、カーボンコピーの申請書類を埋めてハンコを押し、それを提出すると、その場で受付の方がチーンと料金を計算。シールを現金で買っていたのだから、すごいです。

このシールは、500枚プレスするなら500枚、1,000枚プレスするなら1,000枚買わないといけません。つまり前払い。CDが売れても売れなくても製造過程でチャージされるものです。そしてこの買ったシールは、帯や解説、バックインレイなどのアートワーク(印刷物)、マスターテープとともに工場に納品されていたのでした。

うちも最初はそんな風にCDを作っていましたが、スペースシャワーさんでCDを作るようになってからは、スペースシャワーさんがJASRACへの申請も代行してくれるようになったので、そんな作業をする必要はなくなりました。

確かスペシャさんを含めて、7、8社、そういう契約会社がJASRACに選ばれていたと思います。その数社がどういう基準で選ばれていたのかは不明。理由ご存知の方は教えてください。とはいえ、いずれにしてもそういった業者さんに頼むとほんのわずかですが(3%とかだったかな)JASRACに払う料金が安くなると同時にシールを買いに行ったりする手間もなくなったので、これは非常に助かりました。また配信が始まると、曲目などをエクセルに入れてスペシャの担当者さんに提出すれば、同じデータが同時に配信にも回せるようにもなったのですごく便利になりました。

ところが、そのスペシャさんが最近CD制作事業部を辞めちゃったんですね。まぁ、時代とともにニーズがなくなったということなのでしょうか。なので、今回「バンドにエイド」のCDは親切にもスペシャの、出来る担当Mさんが推薦してくれた会社さんに製造をお任せすることになりました。

久しぶりに作るCDは、なんとも複雑。窓口は日本の会社なのですが、今や海外プレスの方が圧倒的に安くてきれいで早いらしく、そこを通じて台湾の工場に発注をかけることになりました。そんなわけで先々週かな…  無事「バンドにエイド」のCDは、マスターテープもアートワークも納品済み。CDは9月20日ごろアップしてくる予定。告知してあるとおり配送の方は、その後10月5日を予定しています。

そして、この新しい製造会社さんにおいては、JASRACは自分で登録しないと+¥5,000かかる、と案内されたので、5,000円がもったいなくて久しぶりにJASRACのホームページに行ってみました。そしたらなんとオンラインで登録できると案内がある! そりゃーこの時代そうだよね、と、じゃあ自分で久しぶりにやってみるかーということにして作業にとりかかりました。

それにしても久しぶりにJASRACのロゴの表示の仕方とか見たら、妙にばっかデカくていやんなっちゃいました。かっこわる…  まぁ、でもしょうがないか…

さて肝心の使用料の計算ですが、このようになります。定価があるものについては、ここに詳細がありますが、簡単に説明すると税抜定価の6%。ただしこれを曲数で割って8.1円より少ない場合は曲数 x 8.1円の方が優先されます。例えば2,300円のCDに20曲入っていたとします。そうすると1曲あたり6.9円になっちゃう。こういう場合は、8.1円の方が優先されるわけです。また1曲が5分以上のトラックについては「みなし」と言って5分ごとに1曲分追加されます。たとえば6:30の曲は、2曲分(つまり16.2円)、10:30の曲は3曲分(つまり24.3円)かかる。そしてシールを買いに行っていた時と同様、これが「売れた枚数」ではなく「製造枚数」にかかるわけです。

で、一方、「バンドにエイド」のCDみたいに一般市場の販売はなく値段のついてないCDの場合は、こんな計算式になります。やはり8.1円 x 曲数。これはチャリティだろうが、クラウドファンディングだろうが必ずかかります。作詞作曲家が「このCDはチャリティなんだから、いらないよ」と言ってくれたとしても、一度JASRACの管理になってしまうと、もう自分の作品ですら自分の自由にはなりません。そして海外の作家たちはだいたい自動的にJASRACになるわけです。そしてルナサやフルックの場合、それぞれ作曲者も違う3曲が1トラックになっているのだからたまりません(笑)。あっという間に曲は「みなし25曲」とか、そういうレベルになってしまう。

それはさておき、楽曲と作詞作曲者のリストができたら、今度はこちらの検索マシンで楽曲を検索します。海外のデータベースともつながっているらしく外国楽曲でも出て来ます。そしてここで出て来た登録番号とともに自分の申請書の画面に詳細を打ち込むのですが、これが検索の画面と直結していないのが…(以下、自粛)

曲のタイミングは念のため元になったファイルの長さではなく日本でこのCDのためにマスタリングをし、マスタリングエンジニアの石橋さんが出してくれたタイミングのリストを基準に記入していきます。

あ、その前に!(笑)JASRACに最初に自分が何者か登録しないといけません。インターネットでJASRACを利用する場合の登録が必要です。登録はとても簡単ではあるのですが、打ち込んだ申込書がなぜかjPegで出て来て、それをプリントアウトしてハンコを押して郵送せよという指示があります。うーん、それこそ陽性者数のカウントとかもこういう方式でやってるんでしょうか…オンラインの意味ないやん…   まぁ、でもそこで喧嘩している時間もないので、さっさと登録。郵送をその日のうちに完了したら、その後3日くらいで登録完了のメールが届き、使用者としての登録は完了しました。そして、はい、やっと楽曲リストをオンラインで1曲ずつ申請画面に打ち込んでいきます。

そしてこの画面のUIがひどいものでして、なんというか分かりにくいし、数字も全角でいれないと認識されないし、なんといっても(以下、スティーブに言ってもらお)


ま、それはさておき、なんとか無事に申請すると、今度は数日で許諾の番号がJASRACから送られてくるわけです。これは確か3営業日とかそんな案内が事前にあったと思いますが、最近CD作る人いないし暇なのか「バンドにエイド」の場合、翌日にはここに届きました。この許諾番号をデザイナーさんへ伝えて、CDのジャケットと盤面に入れてもらう…という段取りになります。(なので、こういう申請は早め早めにやっておく必要があります)

請求書がまだ来ていないのでわかりませんが、このオンライン申請で全金額の5%だかなんだか免除になるそうです。もっともこのブログを書いている時点で、請求書がまだ到着していないので詳細は不明ですが。

いつだったか日本のミュージシャンなのだと思いますが、ウチに連絡してきて「おたくのミュージシャンが良いと言った」と言う理由でそのアーティストの楽曲をレコーディングしたという話をしてきた方がいらっしゃったのですが、申し訳ないけれど、これは日本ではOKではない。いくら本人がいいよと言ってもダメでJASRACにはきちんと使用料を支払わないといけないんです。JASRACは、それが教育だろうが、チャリティだろうが、福祉だろうが、そこに音楽がなるかぎり間違いなくチャージしてくる。

今、キャパシティ半分になったコンサート・ホール。業界全体が苦しむ中、やはりコンサートに対してもしっかりとチャージするJASRACに声もあがっているようです。公演は売れたチケットの枚数ではなくキャパシティに対してチャージしてくる。1,000人のホールであれば、お客が30人だろうが、300人だろうが、キャパ x 80% x 0.05みたいな感じで徴収される。もっとも現状このコロナ禍でキャパの半分しか入れられない状況下のもと、さすがの彼らも今の時期はキャパの半分というのを基準軸にしたようですけどね。詳細はここ

まぁ、いずれにしても、徴収されたお金がきちんと曲の作曲者や作詞家の人に戻ることを望みます。

最近、こんなニュースも。

 偉そうに言っちゃうけど、音楽業界で働く人は、アーティストみたいに何か作り出す力がないのであれば「自分の役割」をよく見つめた方がいいと思う。JASRACって一体何のためにあるのか? 徴収することばかりに力を入れていて大事なことを忘れていないか? こんなにYou TubeやSNSが発達しユーザーが気軽に音楽にアクセスできる時代に、アーティストとリスナーの間にわざわざ立っている自分の存在意義はなんなのか? 自戒をこめて考えて行きたいと思いました。

そんな気持ちもこのクラウドファンディングにはこめられています。