短期集中連載:THE MUSIC PLANTが出来ること 3



この連載は、第1話第2話から続いています。それぞれのリンクへどうぞ。

しかし数日前に出たニュースは怖いものがありましたね…まぁ「フェス市場」ということですが… それにしても音楽市場が大きな影響を受けていることは間違いありません。


第2話からの続き)それにしても、お金って、すごく大事だと思うんです。そりゃー 音楽は表現活動ですから、ある程度美しい気持ちで、謙虚な気持ちで取り組まなくてはいけないのは確かです。でもそれで自分の生活がボロボロになってしまってはもともこもない。これまで応援してくれたファンの人たち、影でささえてくれた家族の人たち、彼らの活動を紹介してくれた媒体の皆さんのためにも音楽家はしっかり自分の活動をメンテナンスしていかなければならない。これって、ものすごく重要なことなんですね。

そして、なぜTHE MUSIC PLANTがここまで長くアーティストとの信頼関係を構築し、事業を続けられてきたかというと、それはたとえ小額であろうとも、ちゃんとミュージシャンに「ギャラ」を払ってきているからなんです。

そういえば知り合いの某出版社の社長が言ってました。「従業員をはじめ人にギャラを払うこと=企業の社会活動だ、社会的な存在意義だ」と。これって、すごくすごく大事なことなんです。これが出来ていたからこそ、小さいオフィスでもTHE MUSIC PLANTは生き残ってこれた。ミュージシャンとも信頼関係を作れてきた。

さて話をまたコロナ禍に戻しますと、とにかくこの状況を言い訳にのらりくらりとしていた私のもとにこんなCDが届きました。北海道のミュージシャンの皆さんを応援しようというプロジェクトで、このCDを購入することで音楽家たちの活動資金を送ろうという企画でした。私はたまたまお世話になっているミュージシャンの方がメンバーにいたので、CDを普通に申し込んだだけですが、このCDを聴きパッケージを眺めていたら、私の中からパワーがむくむく浮かびあがってきたのです。

「そうだ、THE MUSIC PLANTはもともとCD屋だったじゃないか。CDを出そう。そしてその印税という名目でミュージシャンたちに送金したらいいのではないか」と。

通常、ウチらみたいな音楽を編集もので販売する場合、1,000枚くらいプレスするのが普通なんですが、そんな小規模の場合1曲に支払われる印税はほんの100ドルほどです。というか、100ドル=だいたい1万円払えれば良い方です。

というのも、CDの場合、一番お金がかかるのは流通、つまり卸しの会社と販売する小売店に行く利益で、これがあわせて40%か、それ以上かかってきます。それに加えて製造費、デザイン費、音源をマスタリングするスタジオ代、エンジニア代とかかってくるわけでして、中でももっとも高いのがJASRAC。最低でも1曲につき8.1円かかり、今やこれは製造費よりも大きい。特にルナサやフルックなど、2、3曲が1セットになるようなトラックの場合、これらは16.2円、24.3円とお金がかさんでいきます。また5分以上の曲は2曲分かかる等、とにかく尋常じゃない。ほんとこれがちゃんと曲の作家たちに還元されるのであれば、いいんですけどね… 。ま、その話を書き出すと長くなるので、やめておきますが、とにかく通常のコンピレーションCDってそんなふうに価格が設計されているわけです。

ていうか、そもそもこの北海道の人たちみたいに柔軟に考えないといけない。通常レコードを出すための契約というのは流通何%、パッケージ控除何%、JASRAC何%、製造費いくら、そこに返品率みたいなバカなものも加わって、本当に複雑なんです。そういったシステムに私も知らないうちに囚われていた。でもそうじゃなくて利益をシンプルに割り算して、ミュージシャンに配分しよう、と。そしたらミュージシャンが持っている権利に対する対価も通常のパーセンテージではなく、ある程度まとまった額を渡せるように設定できるのではないか、と。なんとか1万円ではなく、せめて10万円くらい払えないだろうか。

それにしてもCDの印税というのは、我ながらナイスなアイディアだと思います。そもそも普通に「たいへんだろうから、少し送るよ」と言うのも、何かヘンです。私がそう言って送金したら、ミュージシャンたちも「いいや、そっちこそ大変だろうから」とみんな遠慮すると思う。でも「あなたの音源を使わせて? コンピレーションCDを作るから」と言えば、ミュージシャンたちは遠慮なくお金を受け取ることができる。

…と、ここまできたら、あとは資金の問題です。個人事務所で他に従業員もいないTHE MUSIC PLANTは、低空飛行でなんとか事務所を維持していけるだろうけど、何せウチには資金力がない(笑)

そして思いついたのが、次のアイディアだったのでした。それにしても、ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチにもあったConnecting the dots。自分のやってきたこと、体験したこと、知ったことが、後になって繋がっているのがわかる、ここまで導かれる感じ。何か起こる時の必然的な感じ。

明日、この話はさらに続きます。