映画『プラダを着た悪魔』が好き


先日地上波で流れたらしく、この映画のことがTwitterに流れてた。みんなアンディ役のアン・ハサウェイが可愛いとか言っていたが、この映画をスペシャルにしているのは、やはりメリル・ストリープだと思う。

VOGUEのアナ・ウイントゥアー編集長をモデルにしたというミランダ・プリストリー役のメリル・ストリープ。いや〜最高なんだわ。低い声で高圧的なミランダ。これが今、私が大マイブームの映画『若草物語』のマーチおばさん役へとつながるわけだ。いやいや、最高だわ!!

映画の主軸はジャーナリストという自分らしい道を見極め、人間らしく生きようと決めたアンディ側に置かれているものの、私はミランダや、エイミーなどこの一線で得た仕事を絶対に手放さないように必死で頑張る人たちにも旗を振りたい。とにかく彼ら全員が必死で自分のキャリアを維持するべく仕事をしていることは間違いない。

この映画は大ヒットして、それが日本では槇村さとるの『リアル・クローズ』という漫画につながっていく。あきらかに『リアル・クローズ』は『プラダ〜』を下敷きにストーリーが描かれている。これもヒットしてTVドラマになったらしいが、TVは一度みただけで、私はいまいちピンとこないで見るのをやめてしまった。かっこいい女性部長が黒木瞳というのもなんか自分のイメージと違ったし、主演の女の子にいたっては今では誰だかまったくわからない(最近の若い女優さん、見分けがつかないんだよー、私には… 涙)。

女のボス…私も女性がボスだった時代が何度かあったなぁ。大学出て一番最初の会社は、そういう会社だった。社長、副社長ともに女性。この会社は私が大学時代に通っていた「夏休み語学短期留学を手配する英国の語学学校の日本代表事務所」という会社だった。最初バイトの面接に行って落とされ、でも「誰よりも必死で頑張りますから」と粘ったら、社長は私の熱意を買ってくれて、英語もろくに話せなかった私を雇ってくれた。だから私は必死で頑張った。

そこは女性社長さんに女性の副社長さんという超女社会。社長さんには旦那さんがいたが、旦那さんは明らかに仕事をしていない。社長の弟たちもオフィスに顔を出したりして、彼らもあきらかに彼女の仕事の成功にたかっていたように私には思えた。そんな妙なオフィスで、仕事をしているのは役員二人と私という3人だけの職場だったが、私はとても可愛がられたと思う。たくさんのことを学んだ。

まず小さいな会社の社長なのに、社長も副社長もクライアントである大きな旅行代理店のおじさん相手に対してまったく媚び諂うことはしなかった。小さい会社でもこびない、毅然としているところなど、今の私の仕事に通じることを多く学んだし、とにかく若くて馬鹿だった私は非常に影響を受けた。社長はスマートで頭がよくて英語が上手で綺麗で優しく大きな人だった。だから大きな会社のおじさんたちは彼女のスタッフである私にまで気を使ってくれていた。

仕事は一方ですごく忙しく、英国相手で時差もあったからそれこそ夜中まで働いた。仕事は英国オフィスが始まる午前2時まで、というのは、このときからの私の人生のスタンダードとなった。当初時給でもらっていたバイト代は、かなりの金額になったが、社員にしてもらったとたんサービス残業でグッと手取りは減ってしまった。でもそんなことはあまり仕事のモチベーションに関係なかった。会社から徒歩2分くらいのアパートを借りて、毎日一生懸命仕事をしていた。途中からロンドンのオフィスから社長がリクルートしてきたキャロちゃんという英国人女性と一緒にアパートをシェアしたりもしていた。あれは本当に楽しかった。(彼女は今、どこにいるんだろう。名前をググっても出てこないんだよね… イギリス人女性ならほぼ間違いなく参加しているはずのfbにもいないし…)

私の仕事は「オペレーター」だった。夏や春のピーク時期になると、1シーズンで200名以上の短期留学生たちの学校とホームステイの手配に追われた。当時のイギリス人は長引く不況で仕事をする人など誰もいなかったから(いや、大袈裟ではなく)本当に大変だった。で、バイトなのに結構重積をおわされていたのだが、ある日、かなり大きなボケミスをやらかしたのだった。

ミスをした当日、副社長からはそのミスを大きく怒られることもなったのだが、なぜか翌日になってかなり厳しい口調で怒られた。おそらくだが「洋子ちゃんを育てたいんだったら、ミスした時は厳しくしないとだめだ」というのを社長が副社長に言ったのだと思う。翌日から副社長はやたらと厳しくなり、それこそ口を聞いてもらえないくらいの勢いだったのを記憶している。女だから、そういうのもちょっと感情的なのだが、当時はそんなことは思いもしない。ただひたすら「クビになったら悲しいよな」と自分のことばかり考えた。

でも、ここが私も自分でも感心しているのだが、怒られた3時間後から私はもう自分のできる仕事はなんでもやろう!と妙に決意を固め、とにかく必死で仕事をした。言われなくても事務所の床を掃除し、台所を綺麗にした。悲しいかな、女社長の会社は台所が汚くなる傾向にある。それもかなりの結構な確率で…。台所は目があてられないくらい汚かったのだが、私は自宅からクレンザーを持ち込み、ゴシゴシと本当にピカピカにオフィスの台所をみがきあげた。茶渋だらけのマグカップをピカピカにした時、副社長が私に声をかけてくれた。「これからは気持ちよく飲めます」というお礼の言葉を今でもよく覚えている。私は「仕事においては、考えられうる限り自分にできることはとにかく全部やる」ということを覚えた。

だからこの映画でアンディ(=アン・ハサウェイ)が仕事に失敗して必死で、ボスの信頼を取り戻すべく頑張る姿には、何度も何度も感情移入してしまう。

アンディだって、最初の勤務態度はひどいものだ。ファッションに興味ないのはありだとしても「ガッパーナ」の綴りをかかってきた電話の相手に聞くなど、全然わかっていない。私だったらこんな子が同じオフィスにいたら「ばか女」と片付けていただろう。女は女に厳しいのだ。

そしてキャリアが軌道にのりはじめると、私生活がおろそかになるというのもごもっとも。ナイジェル役の彼に指摘されるまでもない。

と、まぁ、そんな風にあの映画には、(ハリーポッターの未発表原稿を装丁家が外に出すなど)ツメがあまいなということも多々あれど、働く女性たちのいろんなエッセンスが詰まっている。

そうそうアン・ハサウェイといえば「マイ・インターン」も面白い映画だった。あぁいうシニア・インターンさん、誰かいないかしら。お金も暇もある音楽業界のOBさん、たくさんいるでしょう? 人とつながり、社会の役にたてる。何より楽しい。

どうですか、ここには面白い仕事はいくらでもあるよん。なんといっても社会的に現役でいたいという方はぜひ。いや、マジで考えています。