今、新譜のプロモーションをお手伝いしている日向敏文さんがリリアン・ヘルマンのファンだということを知り、またこの映画で彼女のことを知ったというお話を聞き、見てみました。77年の映画『ジュリア』
この映画は73年に発表されたリリアン・ヘルマンの自伝的小説『Pentimento - A book of portaits』が原作となっている。
ちょっとサスペンス的な要素もあり、ドキドキハラハラ、あっという間の2時間でした。今、この映画は配信で見ることができます。
メリル・ストリープが、ちらっと出てくるのだけど、めっちゃかわいい。でも見る前に日向さんに彼女が出ていることを知らされなかったら、私もまったく気が付かなかった程度です。ほんとちょい役です。
映画の内容は女性の友情の物語。リリアン(ジェーン・フォンダ)とジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は子供のころからとても近い間柄で、長い間、女同士の友情を育んできた。
リリアンは脚本家として活躍し、一方のジュリアはオックスフォードに留学し(オックスフォード・ロケもあり。オックスフォードって本当に綺麗な街。夢見る尖塔 Dreaming Spires)その後ウィーンに行きフロイトに学ぶうちに反ナチ運動に傾倒していく…
そのジュリアを助けるため、お金を運ぶ役割を任されたリリアン・ヘルマン(と思われる人物)の物語。
リリアンと旦那さんの、海辺の家の雰囲気もいいし、家があるっつーのに外でキャンプするのが好きらしく、何かというと焚き木をたいたりバーベキューしたりチェア出して浜辺で本を読んだりしているのがいい。
タイプライターを窓から投げ捨てたり、リリアンの激しい性格と、静かながらも的確なアドバイスを与える旦那さん(こちらも有名な作家、ダシール・ハメット)との生活も描かれてて、これがまたとっても良い。
でも77年の映画といえば、『スター・ウォーズ』『サタデー・ナイト・フィーバー』『未知との遭遇』というキラキラなエンタテイメントが主流だった時代だよね。よくこういう地味な映画が評価されたよなぁ。(この映画はアカデミー賞とかたくさん取っているのであった)
あ、日本では『幸せの黄色いハンカチ』が77年でした。
日向さんがこの映画を見たのは、すごい若い頃だったらしく、それゆえか必要以上に映画に感情移入してしまい、見終わった後は、そのあんまりな結末にしばらく立ち直れなかったそう。
しかもその後の有名な話なんだけど「このジュリアに出てくるリリアンはリリアン・ヘルマンではない、リリアンは私のことだ」(つまり他の誰かの物語をリリアン・ヘルマンが自分のものとして語った)と証言した女性が出現。
リリアン・ヘルマンは最後まで否定していたらしいのだけど、つまりこの本に描かれている一種の武勇伝:彼女の一連のお話は、まったくの嘘っぱちだった…ということに。
リリアンの大嘘つき!(笑)とめちゃくちゃいきどおる若かった頃の日向さん。
しばらくは悶々としていたそうですが、しばらくたったら「まっ、いいっか」と結論づけたそうです。「あの子供は死んだわけじゃなかった、だって最初からいなかったんだもの」と。日向さんらしいエピソードで、ちょっと笑える!(すみません)
それにしても、それを棚にあげたとしても、映画は大傑作で、なんというか、ギリギリな状況下で、なんとか相手の役に立ちたいという女同士の固い友情にふるえる。
最後に会うシーンでキャビアを食べるんだけど、そのレストランの感じとか、張り詰めた空気とか…。緊張感が解除されちゃったら、一気に泣き崩れちゃいそうな感じとか。そしてお互いを思いやり、心配する感じとか… すべてが良い。
ジェーン・フォンダの映画っていいと思ったことなかったけど、これはいいなぁ! そしてそれ以上にいいのが、ジュリア役のヴァネッサ・レッドグレーヴ!! めちゃくちゃいい。
あ、そうそう、電車で国境越えの旅のシーンがたくさん出てくるんだけど、そんな列車の旅の雰囲気もいいんだよね。
https://t.co/uAjqUk3WJz 反ナチスに身を捧げた女性闘士ジュリアは本当に存在したのか、それとも…!?『ジュリア』70年代のこの映画、初めて見たけどすごく面白かった。
— 野崎洋子 (@mplantyoko) July 7, 2022
以下、映画『ジュリア』およびリリアン・ヘルマンの参考映像
こちらが本当の「ジュリア」Muriel Gardiner
こちらは1973年、映画が作られる前のインタビュー
こちらはわかりやすい解説。
メリル・ストリープ Talks about ジェーン・フォンダ。
こちらは日向さんのデビュー作「Sarah's Crime サラの犯罪」より「Pentimento」という曲。
映画『ジュリア』の原作はリリアン・ヘルマンの「Pentimento」。なるほどつながった。
しかしこのアルバムがリリースされた頃、インストルメンタルといったらYMO、カシオペア…そういう時代。その時代にこんな作品、よく出したよなぁ。(ほめてますよー ほめてます)
その他のプラットフォームでの配信はこちらからお入りください。聴いてね!!