さぁ、今年も始まりましたよー ピーター・バラカンさんの音楽映画祭!!
正直長丁場で疲れたけど、アナログ愛に溢れるすごい作品でした。
すごいよね。当時レコーディングはマイク1本がすべて。パンチ・ブラザーズ方式というか、ポール・ブレイディ方式というか。当然ミックスとか、オーバーダブとか一才なし。
バンドの録音であれば、演奏する位置、ソロを取る時は一歩踏み出したりして音量を自分たちで調整する。
そして録られた音は、そのそのままカッティング・マシーンへ。音楽が進むと同時に溝が同時に掘られていく。すごい。
動力となるのは約50kgの「重し」。これがゆっくりと地上に降りていくことでテーブルを回転さえる動力となる。4部で出てくるけど、重しが地上に降りるまで4分くらいしかなく、この中に楽曲をすべて収めないといけない。これがバンドによっては至難の技!
そしてこのレコーディングの技術というものが、いったい音楽ビジネスにどんな影響を与えてきたか。それがこのドキュメンタリーなのです。
いやーーー、すごいな!!(驚愕)
とにかくこのドキュメンタリーは今回の映画祭の「ハイライト」といってもいい。ピーターさんが最初にこれを見たのはだいたい5年くらい前。オンラインで見たのだそうです。
でも劇場で見ると「その10倍はいい!!」そうですよ。
当初BBC・PBSという英国・アメリカのTVで放送されたもので、BBCはともかくアメリカではそれほど多くの人が見てないんじゃないかな…とピーターさん。
ナレーションは「あの」ロバート・レッドフォードなんですか?という会場の声に「そうです。ただ僕が見たのはプリプロだったのかナレーションは監督がやっていたように記憶しています」とのこと。
それにしてもスクリーンで見ると「印象がまったく違う」そうで、ピーターさんが一番今日の上映に興奮されている感じでした(笑)
とにかく1920年代のレコーディング音源は本当にとても貴重で、50年代にハリー・スミスが編纂したものがなければ、本当にまったく失われていた。
当時オイルショック&戦争で本当にちょっとした金属のものでも必要とされていた時代です。それを乗り越えて、よく残った!…そんな貴重な音源たち。うーむ。
1部はカーター・ファミリー、そしてメンフィス・ジャグ・バンドがフィーチャーされていますが、「動くメンフィス・ジャグ・バンドは僕も初めてみました!」とのこと。
いや、「カーター・ファミリー」ってよく聞くけど、こんな感じだったんだ!!とびっくり。この辺はブリティッシュ・トラッド、アイリッシュ・トラッド好きな人は必見です。これは見ておかないとダメなやつ。
とにかくこのドキュメンタリー本当にすごいのは、丁寧に愛情を持って作られていること。当時のそういった音源発掘はもちろん、実際にそのミュージシャンたちが住んでいた場所に行き、その人を人間として知る人たちの証言を、本当に丁寧に取材している。
「本当に丁寧に作られている」とピーターさん。「たとえばカーター・ファミリーのあの孫の人のお話はすごく面白かったですよね」
また最初の頃に出てきた「当時都会の人たちはもうラジオを聞いていたけど、田舎に住む人たちにとってはレコードがラジオのようなものだった」
「田舎の人たちのため、地元の新聞に広告を出して、“レコードが村にやってくる”!と、ミュージシャンをリクルートする話も面白かった」
ただ残念なことに、そんな録音されたミュージシャンのほとんどが、再生機械が買えなかったため自分の録音を聞けないまま亡くなったんだそうです。
「それにしても本当に遺族に話を聞くのでもギリギリのタイミング。よくこのドキュメンタリーを制作してくれました」と、この映画祭のプロデュースをされている小倉聖子さんも。
2部はピーターさんも大好きなブルーズ中心にチャーリー・パットンなどを紹介。
そして3部は白人も含めネイティブ・アメリカン、ハワイアン、ケイジャン、メキシカンなど、いわゆるアメリカの僻地のさまざまな音楽とその音楽がアメリカ全土に与えた影響力をフィーチャーしていきます。
最高に可愛かったのはミシシッピ・ジョン・ハート。1920年代に録音して、1960年代(40年後!)にリバイバルヒットするところなんざ、まるで私が今、プロモーションしている日向敏文さんのよう!(爆)(日向さんの記事はこちら)
でもリスナーの環境の変化で、こういうことが昔もあったんですね。そしてそれを敏感に察知するのは、いつも若いリスナーなんだわ。彼らはあまりお金も持ってなかったりするんだけど、すごいよね。うーん、なんか感慨深い。
そして1963年のニュー・ポート・フォーク・フェスティバルで復活するところなんざ、先日のジョニ・ミッチェルみたいー すごーい!
それにしてもジョン・ハートさん、もうめっちゃチャーミングで可愛くて、私はすっかりファンになった。なんか今までは歴史上の人物が、教科書にしか載ってないイメージあったけど、このドキュメンタリーを見た今は、なんかリアルな人物として実感できる感じ。すごい。
それからドキュメンタリーで印象に残ったのがジャック・ホワイト。
私は彼についてはホワイト・ストライプスの帽子かぶってる男の子の方…くらいしか認識なかったんだけど(ひ、ひどい。2011年に活動辞めてるよね、彼ら)、
ピーターさんによると、なんと彼ってすごいアナログ好きで自分でアナログ工場まで作っちゃてる人なんだって!! 驚愕。工場はデトロイトにあるって言ってたかな。
特に4部での彼の活躍ぶりは素晴らしく、4部が始まって割と前半にトラブルがあり「レコーディング中断!?」という危機があったんですが、その時、近所の店にかけこんで●●●●●する彼の姿に萌え〜っっ(笑) ここはおばさん萌えポイントですよー!!
でも1920年代の録音機器なんて、確かにミュージシャンであれば、誰でもチャレンジしてみたいと思うのは当然だよね。
そしてドキュメンタリーは4部に続くわけですが、特に4部の出演ミュージシャンのパフォーマンスで私が好きだったのは、リアノン・ギデンス、そしてタージ・マハール。それからもういい人っぷりが出まくってるエルトン・ジョン。
エルトンはなんとバーニーの歌詞に曲をつけている作業をこのドキュメンタリーで公開。すごいサービスぶりよね!!
(こういうのを見ると、ほんと若い人のプロジェクトに積極的に参加して協力することこそ、おじさんおばさんの存在意義だと思うんだわ)
その時のエルトンのセリフ「40年以上一緒にやっているけど、彼が曲に対して何か言うことはまったくない」と。うううう、わかるわぁ… バーニーいい人だもの!!
そしてバーニーはスタジオに姿を見せるのだけど「録音の時は、絶対に同じ部屋に入ってこないんだ」…とエルトン。そんな二人の信頼関係にめっちゃ萌え〜!!!
それにしてもバーニー・トーピンの後ろ姿が映った時、きゃー、ジェイミー・ベル!(映画『ロケットマン』でバーニー役をやった素敵な俳優さん)と、思わず盛り上がってしまった。いや、ジェイミー・ベルではなく本物のバーニー・トーピンでしたけどね。
あとこのドキュメンタリーの3部は、今回映画祭でも再び上映される『ランブル』にもつながるし、メンフィス・ジャグ・バンドなんかはイギリスのスキッフルなんかにも影響を与え、ビートルズの前のクオリーメンなどに繋がっていくのだそうです。
だから『ブリティッシュ・ロックの誕生の地下室』にもつながっていくから、どれも必見だよ、とピーターさん。なるほど!
あと最後に映画の中にコカインが合法だった当時のシーンで、みんな楽しそうに吸っているシーンが出てくるんですが、「あれはダメですよ」とも(笑)
いやーー それにしても見応えのあるドキュメンタリーでした。いや〜TV番組の劇場上映なんて権利関係大変だっただろうなぁ。ピーターさんによるとこれが劇場で上映されたのは、世界広しといえども今回の日本のこれが始めただそうです。
これは製作者の皆さん、喜んだことでしょう。
素晴らしい!! 今後も映画、TVドキュメンタリー、分け隔てなく、ぜひご紹介ください、ピーターさん。
それにしても会場には久々に会う知り合いの姿も多数あり、なんか嬉しかったです。こういうイベントって、やっぱり私にとっては、ソーシャル・ハブというか…。同じ価値観を持つ友人が久しぶりに顔をあわせる場。本当にいいよなぁ。
加えて、会場には各音楽イベントのチラシが!
ピーターさんに出演いただくケルト市のチラシもずうずうしくも置いていただいております(笑)。またプロモーションをお手伝いしているプランクトンによる越境する音楽のシリーズ・コンサート「BEYOND」のチラシも。どうぞ、皆さん、持ってってー!
ピーターさん、小倉さん、ありがとうございました。来週はジェームス・ブラウンのドキュメンタリー見ようかな… とタイムテーブルと睨めっこ中。
ピーター・バラカンさんの映画祭は、9月15日まで開催されます。