東京ムラムラのパレード@浅草寺。満足そうなメンバー?! |
先日、清水靖晃さんの公開インタビューが渋谷Lipoにて行われました。越境のコンサートシリーズBEYONDの大トリを務める清水さん。日本でのライブはなんと4年ぶり!
久々のライブに向けての事前トークイベントです。田中美登里さんが聞き手。時々プランクトンの社長、川島恵子さんも登場します。
すっごく面白かったので、早速レポートしたいと思います。なおこれは録音もせず私が自分でメモったものをもとにしているので、理解が足りないところや勘違いなどあるかもしれません。文責のざきでお願いいたします。
では、Vol.3行ってみまーす。
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東京ムラムラでは、たくさんのコンサートを連日行ったわけですが、その全部の通し券をかった人のチケットはなんと表彰状だったそうです。すごいなぁ!! …っていうか、それ毎日持ってくるの、かえって大変だったんじゃないか?!(笑)
当時のパンフレットも見せてもらいましたが、なんと内側はスゴロクになっていて、細野さん、清水さん、とにかく発想がすごかった。遊び心が延々と続いている、と川島さん。
細野さん話していた言葉に「世の中には二つのジャンルがある。良い音楽と、そうでもない音楽」それだけ。境目はない、と。高橋悠治さんも音楽にはいいも悪いもない、とも言っているけど、それに近い話ではないかと清水さんは考えているそうです。
その後、バッハの一連のプロジェクトへと清水さんは行くわけですが、私が清水さんの音楽をちゃんと知ったのも、実はこの辺から。これすごく話題になりましたよね。1996年。私ったら、ほんと遅っっ!!!
でも、なんかこのアルバム狂ったように一時聞いてたんですよね。でもこのサックス、音響、そして…という中でバッハのこれを選んだのは清水さんにとっては偶然だったそうです。
なんか一人で音楽をやろうと思っていた時期で、バッハをやろうと思っていたわけでもなく、楽器一本で何か、リズム、ハーモニーすべてをやってみたかった。そこに偶然ぱらりとバッハの譜面が落ちてきたんだそうです。
そして、これまた偶然、南こうせつさんのラジオに出演した時、九州の大分に使っていないトンネルがある。そこを使うアイディアを市民に向けて公募してるんですよ、でもトンネルの端と端で、綱引きとかそういう案しか出てこなくて困っているんです…みたいな情報をつかみ、何か響くものを感じた清水さんは、当時のレコード会社の担当さんと飛行機で速攻視察に飛んだそうです。すごい行動力。
その後も使ってない水力発電や、いろんなところに行ったのだそうです。大谷石の採掘石切場なんて15秒以上の残響があって最高だった。
サックスというのは筒でできている。いってみればただのチューブである、と。人間もまた同時に筒みたいなもんだと清水さんは思っていて、楽器=サックスはその(人間の身体の)延長にあるものなのだ、と。
なんか私はその時、ホルモンのコブクロを想像したのだった…。違うか? でも、なんか妙に納得できませんか?
筒抜けではなく、筒の元。頭があって考えているのだけれど、筒の響きの感覚が自分に返ってきた時、すごいことが起きる。銭湯で鼻歌を歌うとわかる。身体の響きがいい気分なんだ、と。
あれの巨大版だと思ってもらえるといいかも。自分の感覚がなくなっていくんですよ。自分の皮膚がなくなっていく。(ここでいう皮膚とは、おそらく身体と外界を分ける壁のようなものの存在をおっしゃっているのだと私は思いました。違うかな…)
大谷石のサックスの息を吹く、その振動に共振した身体が無くなる感覚、身体自体が空間化したんです。
小さい頃の夢で、高熱が出て自分は空気になってしまうような感覚があって、それは恐怖だったんだけれど、大谷石は恐怖ではないけれど、それを呼び覚ますような体験だった、と。五感の統合とでも言って良いような…
ここで美登里さんが「清水さんのサントラを聴いていても、不思議と触感を感じる時がありますよね」「映像ではあらわせない皮膚感覚みたいなものが伝わってきますね」と現在の仕事へと話題が進みます。
再び清水さんの言葉。映画の仕事とかもそうだけど、自分自身を反射させているような感じ。そこに入り込む。自分に入るこむ、そんな感覚。フィルム、映像に音がとけこうむような。光の中に溶けこんでいるような。そこに向かって曲を書く。それを目指している。
映画は昔は編集でオールラッシュ、それで監督と音をつけていってたけど、最近のドラマや映画の世界では、映像を見ない。台本だけ、原作だけの時もある。でもむしろそっちの方が自由度が高くてやりやすいこともある。
そして再びバッハの話題に戻り…バッハなどは神格化されたりしているけれど、バッハはもともと空間、つまり教会のための音楽。教会の響きの中の音楽。バッハとテナーサックスというのは、これは自分独自の関係で、崇高なバッハにテナーは場末の汚れた音…といったイメージを清水さんは持っているのだそうです。
ここで再び美登里さん「ぶわっとブロウするところとか、ちょっとドイツ音楽では考えられないですよね」
再び清水さんの言葉。バッハはどれも思い出がある録音だった。特に6番のプレリュードは、イタリアの友達の家で録音したのだけど、そこは貴族のお屋敷だったそう!?
たまたま最近なにやってんの、ということで、話題になり偶然そこで録音できることになったのだけど、そこはスタジオではないので車が家の脇を通ると音が入ってしまう。
なので警察の協力を得てトランシーバーで「清水さんが、これから吹きまーす」とか言って、外の人に連絡を取り、車を手前で止めてもらったりして録音したそうです。(笑)
この辺はイタリアの映画のチームが手伝ってくれたそうで、うーん、さすが清水さんの周りにはいろんなアートのチームがいるんだなぁとうなることしきり。というか、きっとみんな面白いことには駆けつけてきちゃうような人たちなんでしょうね。
でも場面が想像できて、ちょっと可笑しくもありますよね。いやー 関係者の皆さん、大変でした。
あとサキソフォネッツは、渋谷の地下駐車場でもやってみたことがあって、NHKのところの駐車場の響きがいいから!と交渉したらすぐOKになって、どうぞ使ってください、ということになった。
ところが実際やってみたら、思ったより多くの1,000人くらいのお客さんが来てしまい、音が結構吸われてデットになってしまったそうです。(本来は8秒くらい残響がある場所だったそうです)
その映像、清水さんのYou Tubeに上がっていました。
そこでも、どこから音が聞こえるんだろう、みたいな演出もあった。
いまだに田んぼの中の一軒家のイメージが、まだ自分の中にはある。500m先の家のお嬢さんがシューベルトのピアノを練習していて、それが風に乗って聞こえてくる…みたいな。
それは西洋音楽とか5音階とか、空気を伝わってくるもの。
美登里さんの「お嬢さんであることもとても大事ですね」というツッコミも(笑)
バッハのゴールドベルグでは、すみだトリフォニーホールで初演され、今のサキソフォネッツのメンバーの先生たちがメンバーだったそうです。
そして2007年に発表した「ペンタトニカ」というアルバムの話も。
自分にしみついた5音階(ペンタトニック・スケール)、エチオピアにも不思議な5音階があるそうで、清水さんはそれをフランスで体験したのだとか。ジプシー音楽もそうだけど、あれっ? 聞いてみたらヨナ抜きじゃん?!と。
ヴァリエーションはもしかしたら少ないのかもしれないけれど、(音楽への)瞬間的な気持ちの入れようはすごく共通しているというか…そこは「ニヤリ」としましたよね、と清水さん。
日本人でも五音階は「恥ずかしい」と思ってた時期があると思うんですよね…と美登里さんが話を向けると清水さんは「僕にしてみたら、なぜかなーと思うんです」「僕は歌謡曲とかもすごく好きだったし」
さて話はつきませんが、4年ぶりのライブということで、まず川島さんは企画を主催した本人であると同時に自分でも聞けることが楽しみでしょうがないのだそうです。そして同時にそれを人に聞いてもらえることもとても嬉しい、と。
やっちゃん(清水さんのことを恵子さんはこう呼びます。イベント中はずっと「清水さん」と呼んでいらしたけど、二回くらい「やっちゃん」が出ちゃった・笑)は一音の魂が本当にすごい、と。
牛とか、サイとか、お尻がでかい動物みたい。でもそれがすごく早く走るんですよ、と恵子さん。こういうサックスは他にはいない、と。
その清水さんのサックスに年の離れた(親子以上!!)の國本さんが加わり、本当にかっこいいです、と。
あと会場ではどういう使われ方をするか不明ですが、清水さんが花博の時の考案したエリザベスというスピーカーも登場するそう。写真を見せてもらいましたが、すごいです。
(ちなみにこの記事の、清水さんの後ろにうつっている2体の白いやつが、それです!!)
7つのスピーカーがあって、それぞれが独立していて、鳥の声らしきものを流すのだそうです。そして真ん中のところからは女性の鼻歌が聞こえるそう!? すごいな…
うーん、楽しみです!!!
ちなみにこちらはお馴染みヨーロッパ最大のロック・フェスティバル:ロスキレで行われたコンサート。
いよいよ越境のコンサート・シリーズ「BEYOND」最後の公演です!
12/12(月)クラブ・クアトロにて。まず滞空時間さんが登場して、その後清水さんと國本怜さんの登場となるそうです!! 楽しみですね。
なお、プランクトンさんのサイトで、このインタビューの動画もアップされています。このブログはあくまで要約なので、正確に清水さんの発言を全部知りたい方は、ぜひこちらへどうぞー。
■この公開インタビューまとめは、三回に分けて掲載しております。
Vol.1はお生まれになった静岡の話から、80年代のアルバムの話。
https://themusicplant.blogspot.com/2022/12/vol1.html
Vol.2は「東京ムラムラ」「アーバンサックス」の話。
https://themusicplant.blogspot.com/2022/12/vol2.html
Vol.3は、人間の身体もチューブ。サックスはその延長になる!?な話。→ いまここ!
…とかなんとか書いてたら、こちらの記事も全国の新聞に公開されたようです。本当に月曜日が待ちきれない!
共同通信が全国紙に配信した、清水靖晃さんのインタビュー記事が、山形新聞(12/5)に掲載されました。 pic.twitter.com/2udqzBMdQa
— Plankton (@plankton_co_jp) December 9, 2022