『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』。本の中ではM銀行とあるが、まぁ「みずほ銀行」なのは間違いない。どっかでブック・レビューを見て、「これはおもしろそう」とサクッと買った。売れている本みたいだし、こういう気楽な本でも読んで笑うかと思っていたのだけど…
いや!!! いや! いや! めっちゃ面白かったのはもちろんだけど、最後はほろっと。まじで泣いてしまったのである。いやー いい本だった。目黒さん、すっかりファンになりました。
多分偽名だろう。でも、私はあなたを心から尊敬する。悲しいサラリーマン人生。でもあなたは努力してきた。私とたぶん年齢も同じくらいの人かもしれない。
おそらく目黒さんが告白して、それをゴーストが書いているのかな? 文章は抜群に上手いから、まぁきっとゴーストだよね。とにかくポップで読みやすい。
それにしてもネタが最高に良い。銀行の偉い人たちのバカな慣習など、もう無条件でガハガハ笑える。この人たち、ほんと暇なのね。
一方で現場で頑張る人たちの涙ぐましい努力。本当に心が震える。いや、こんなバカな仕事、辞めちゃえよ!と怒るのは私だけか。本当に理不尽このうえない。
でもそういうのをあなどるなかれ。銀行において、出世するためには、上司に媚を売ることが一番大事な仕事なのだ。まぁ、こんなんじゃ終わるよね…
とにかく最高に面白い本なんだけど、一番面白いのは本文ではなく実は本の下に書いてある細かい注釈。例えば本社の人事担当者が、支店に出張面接にやってきて、可愛い女の子がお茶を運んでくると「あの子の名前は?」といきなり異動を命じて、1週間後には本社へかっさらっていく。その様子はまるで町娘をさらっていく悪代官…とか(爆)
まぁ、その程度なら「バカだねぇ」と笑えるが、ほんとに頭にくるようなこともたくさんある。それがあまりに多い。頑張ってみんなで書いた某取引先の融資に関する稟議書。
みんなで支店に課せられたノルマを達成しようと力をあわせ必死に準備したのに、支店長の「あそこの二代目嫌いなんだよ」でNGに。そんなのあり?? この支店長、まったく何も見えていない! ここは本当に泣けた。そして怒った。
こんなふうに嫌われる支店長もいる一方で、慕われた支店長は「寺川会」とか「青田会」とか店長の名前でグループが作られ、いつまでも旧交を温めたりする習わしがあるのだそうだ。銀行、苦痛のサラリーマン人生を送ったおじさんたち、戦友意識からか結束が硬い(笑)
振り込み詐欺についても、ちっとも仕事をしない警察の連中を相手に、必死に職務以上にお客様のために頑張る主人公。
そう、主人公。目黒さん、これは、もうドラマだ。ドラマだよ!! 所轄の警察は何もせず、生活安全課に電話すれば警察官ではなく防犯協会から委託された会社に雇われたスタッフが電話に応対する。こんなことまで外注してるとあきれる主人公…そりゃあ パソナが儲かるわけだよね。
なお失敗や不祥事があった時、「お詫びの品」用として大量に銀行に準備されているボールペンやメモパッドなどは、とてもシャビイ…と、目黒さん。
一方で、お詫びの品の最高峰は虎屋の羊羹。羊羹は銀行界隈では大変重宝されており「黒いダイヤ」と呼ばれているらしい。(そして購入には稟議書が必要らしい… バカすぎる)
半沢直樹も人気ドラマだったらしいし、私みたいな者でもNHKの「ハゲタカ」とか大好きだったけど。銀行、やっぱり面白すぎる。ドラマの鉄板ネタなのかな。
あ、そうそう、みずほといえば、システム障害が有名だけど、本当にあれは現場は何も知らされないまま、ひたすら窓口に押しかけるお客に謝り続けてるってことらしい。トップがこんなんじゃ、正直やってらんないよね。
私は仕事の口座はUFJだけど、個人の口座はみずほなんだよな。ちょっと考えるわ… そして、システム障害があった時、窓口に押しかけても全く意味がないということを、みずほに口座をお持ちの皆さんは覚えておくといいと思う。可哀想なのは現場のスタッフ。彼らに罪はない。
この主人公はまず出だしで、支店長の理不尽な怒りを買い出世コースから外れ、そのまま苦痛のサラリーマン人生を歩んでいく。営業をはずされ窓口担当になったら、もう出世のレールからは外れていると考えていいのだそうだ。
でも時々は良い出会いもあり、この目黒さんは誠実に与えられた人生を頑張った。
そう、与えられた人生!!! でも仕方ない。自分で歩める人生を持てる人の方が圧倒的に世の中には少ないのだ。
最後の最後は本当に泣けた。いい本だと思った。日本のサラリーマンの人たちはみんなこんな生活をしているんだろうか。
PS ちなみに同じシリーズらしい、これにも興味湧いてきた。こちらは実名。買ってみようかな…
PPS この漫画知ってますか? 最高に面白い。銀行という場とともに、女の人が会社で仕事をすることについても、とても勉強になった。私も原島さんのようになりたい。
これを読んで「仕事できないおじさん相手に怒ってキリキリするだけではダメだ」「世の中ってこういうことなんだ」と初めて理解した。