今年は映画の当たり年だったと思う。とはいえ、この作品を見たら、その「ベスト映画」チャートが全部ひっくり返るかなとも… めっちゃ期待していた。公開を指折り数えて。
なんといっても主演はキャリー・マリガン。そしてブラッドリー・クーパー。先行公開されたスチール写真を見ても、なんとバーンスタインにクリソツ! 期待は膨らむ。
トレイラーが発表されて、これまたびっくり。ブラッドリー・クーパー、声まで似ている。そしてキャリー・マリガンの一つ一つのシーンで見せる複雑な表情よ。たまらんわー。
よく知られた史実なので書いちゃうと、マリガン演じる奥さんは早くに亡くなってしまうのだけど、キャリー・マリガンが何かを耐えている表情をするだけで堪らないのに、病気で死んじゃうんだから、泣けないわけがない。
もう、やばい。やばすぎた。すごいよ、キャリー・マリガン。泣いて、泣いて、泣きまくった。長女のジェイミーに残す彼女の言葉もいい。この辺は史実に基づいているんだろうなぁ。もう感動マックス!
それにしても、ブラッドリー・クーパーやったよねぇ! 『スター誕生』の映画でもガガがめちゃくちゃ良く見えたのは、クーパー監督のなせる技なのか。もしかしたら女優を素晴らしく見せるすごい監督ということになるのかも? バーバラ・ストライザントの『追憶』のシドニー・ポラック監督みたいな感じか?(古すぎ!)
前半の滑らかな演出のモノクロ映像も本当に素敵。そして70年代のコダック・フィルムっぽい映像も。キャリー・マリガンのドレスもどれも本当に素敵。髪型とかも。当時の感じなんだけど、本当にうっとり。こういう姿も彼女は本当に似合っている。
ここに描かれているのは、バイであり結婚してからもボーイフレンドを絶やさなかったバーンスタインと、奥さんのフェリシアの人間関係である。
外に見えるバーンスタインは素晴らしい音楽家で、愛と平和の人だった。教育にも熱心で音楽の素晴らしさを多くの人に伝え、すごい音楽を作曲し、オケを指揮し… そういうことがこの映画にあまり盛り込まれていないのがちょっと残念で、バーンスタインのことを全く知らない人が見たら、どう思うのかな…と思いつつ。わたしは満喫しましたね。
前半ちょっと脚本のテンポが悪く、とはいえ夫婦間の複雑さは当事者以外わかんねーだろーと無理やり自分を着地させないでもなかったのだが、そんなことも、イリー大聖堂のすっごいシーンあたりですべて吹っ飛んだ。
このクーパーの指揮。クラシックに詳しい人が見たら、どう思うんだろう。とにかくわたしから見たら超圧巻のシーンだった。6分間あるということだったけど、とにかく迫力だった。
それをステージ袖で見つめるキャリー・マリガンにまたもやウルウル。水色のドレスが映える。水色の服を実際のフェリシアも日々着ていたのだろうか。すごく似合う。あぁ、やばい、本当にやばい。
今年の映画ベスト5…いや、ベスト3には間違いないな、この作品。確かに音楽をもっと聴きたい気もしないではなかったのだけど、最後にエンドロールであの曲が流れると、もう心も踊る! いえーい!! レニー!! 最高の音楽家!
バーンスタイン。レニー。レニー本当にすごいよ。映画にも描かれているとおり、めちゃくちゃハイパーな人だった。吉原さんが講演で話されてたように、たくさんの愛を与えた人、そして人から与えられたたくさんの愛を浴びるように生きた人。
一人になるのがいやで、作曲していても部屋の扉を開け放っていたエピソードや、生活が華やかすぎて作曲する時間がないとこぼしているところとか…
あぁ、そう、タバコ。ずっとタバコの煙が流れているこの映画。時代だよねぇ…
この映画を見て、バーンスタインのことを知りたくなった人は、ぜひ吉原真里さんの『親愛なるレニー』を読んでみてください。
この映画のラストの、奥さん死後のレニーと橋本邦彦さんの素敵なラブストーリーが始まっていく様は必読です。レニーがどんなに素敵な人だったかわかる。もう橋本さんの美しいラブレターに心は持っていかれる。あぁ、たまらん。本もわたしももう一度読もう。
そうそう、取材関連で、わたしは実際に橋本さんに何度かお会いしたことがあるのですが、橋本さんが取材などで語られているチャーミングなレニーと、映画のレニーは変わらない感じだった。これが、もう素敵すぎて、うっとり。もう一回くらい劇場で見たいなぁ。
あ、そうだ、ヒューマントラスト有楽町でご覧になる方は、駅との角っこにある街中華の中国亭、最高ですよ。ここのエビそばは世界1。エビがぷりぷり、お野菜シャキシャキ、麺も最高。おひとりさま用に餃子の3個があるのもいい。おすすめです。