クイヴィーン・オライラって誰? その3  音楽哲学


「ステージに上がって、さて何が起こるのだろうとお客さんは楽しみにしている。僕もいったい何が起こるんだろうと楽しみにしている。それが、ちょっと怖い時もあるけれど、そこが僕が一番存在していたい場所なんだ」

「なんでだろうと考えたこともあったけど、随分前にその答えは発見した。僕は僕の頭の中にあるアイディアが現実のものとなる、その瞬間に身を置いてみたい、そういうことなんだよね」

「伝統音楽のミュージシャンとして僕はスタートした。(伝統音楽においては)これが正しいヴァージョンっというのがまず存在する。そこからいろんなものを発展させて、自分のヴァージョンというのを作りあげて、人に「すごい」と思ってもらうわけだ。僕もずっとそうしてきた」

「17歳ごろ、バルセロナに行こうと思った。ヨーロッパのどこにでも行ける電車のチケットを手に入れた。そしてバルセロナ行きの電車に乗るべく駅に走ったんだけど、なんと電車に乗り遅れてしまったんだ」

「そして無惨にも僕の目の前で電車は走り去り、掲示板はパラパラと音をたてて表示を変えた。でもそこでチャンスが到来したと僕はひらめいた。今やモスクワでも、ベルリンでも行ける。そして僕は3週間のベルリンへの旅に出た」

「それがまったく別の生き方をするきっかけにもなった。それから僕はすべてのモーメントに意識を置いてみたんだ。歩く時、右足を出す時、左足を出す時。足を出すその角度、あらゆる瞬間、あらゆる行動。それらをすべて意識することで、自分のフィドルの演奏の方法をまったく違うものにしようと思い立った」

「それまでは伝統音楽に忠実なヴァージョンを演奏することが重要だと考えていた。でも伝統音楽の素晴らしいところは、ひとつのヴァージョンの中に、まだまだ可能性が残されていることなんだよね」

「伝統音楽のひとつのヴァージョンにおいて、演奏者が崖の上に立って、いったいどういう景色を眺めているんだろう等々、まず演奏者のいろんな気持ちを想像してみるんです」

「そうすると理解できる。彼らは事前の準備を実行に移しているのではなく、瞬間瞬間に生きているということを。そしてあらゆる可能性をそこで実感しているということを」

「これが僕にとっての「マスター」「熟練」という意味なんです。自分がフィドルを演奏する時、それは事前に準備されたプランを実行に移しているのではなく、真にその瞬間を意識し、本当にそのモーメントに生きる。それが僕の目指す場所です」

「さて僕はフィドルと、そして弓。それからテクノロジーを使って、どう僕の音楽を表現していけばいいのでしょうか」

「もし準備してきたもの、すでに以前に行われたものを再び演奏したら、それはもう生きているとは言えません。オーガニックであるとも言えません。本当に生き生きとした音楽をクリエイトをするには、どうしたら良いでしょう」

「私が9歳くらいの時の思い出があります。僕は木製のキーホルダーを物置で作っていました。5分くらい没頭していたかなと思ったら、夕飯に呼ばれて、実際気づいた時には、なんと作業を始めて5時間経過していた。そして、僕は、そんなふうに時間が消えてしまうような魔法を作りたいと思ったんです」

「料理や編み物、ゴルフ なんでもいいでしょう。時間が消える瞬間が本当にあるんです」



THE MUSIC PLANTとしての次の公演は、こちら。

Caoimhín Ó Raghallaigh クイヴィーン・オ・ライラwith 黒木千波留
7月24日(木)南青山曼荼羅19:00開演 
¥6,000(+ドリンクオーダー) 
詳細はこちらへ


野崎は作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。配信でもすぐ聴けるようになりますので、みなさんもぜひ。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。

そして、その日向さんのひさしぶりのパブリック・イベント。6月26日 代官山「晴れたら空に豆まいて」にて。詳細はこちら。ニューアルバムの視聴会&公開インタビューと言った感じ。出演:日向敏文、松山晋也、オノセイゲン


民音さん主催でゴサードシスターズの来日ツアーもあります。詳細は特設ページへ。


ポール・ブレイディが12月にケルティック・クリスマスで来日します。詳細はこちらへ。


2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。