佐向大監督:映画『中山教頭の人生テスト』を観ました


佐向大監督:映画『中山教頭の人生テスト』を観ました。もう公開から随分経っちゃってますが、うちの近所の田端の素敵な映画館で上映されているということで。

田端の映画館いいんだ。公開から時間がたった名作がさりげなく上映されてたりする。ウチから一番近い(かもしれない)映画館。田端の駅から徒歩5分である。目の前に素敵な日本茶のお店もある。(今回も抹茶ソフトを堪能)

監督のちょっと前の作品『教誨師』はすごい映画だった。大杉漣さんが亡くなったことで話題になってたけど、それよりもいったい人が人を裁くというのはどういうことかを考えさせられる、すごい作品だった。その佐向監督による監督・脚本、最新作。

購入したパンフレットによると、最初は校長先生への昇進テスト中にカンニングしたという教頭先生のニュースが、この映画の制作のきっかけとなったのだという。

そのニュースになんとはなしに心を動かされた企画プロデューサー。佐向監督のところに企画を持ち込んで、自作の脚本の手直しをしてもらおうと思ったら、この話にのった監督が全面的にこの作品の脚本・監督を引き受けたらしい。

…面白い。映画の製作って、そんな風にして始まるんだ。

ポスターから勝手にほのぼのとした子供映画を想像して観たら、実際の内容にびっくりする人が多く出てくるのではないかと思う。そういえば、ほのぼのに見える学校の写真だけど、子供たちはイラストで全員が顔を隠している。ほら、なんか一筋縄ではいかない(笑)

子供の世界って、ホントにこんななんだ?!とちょっとびっくり。いや、もちろん映画が描いていることは一部として…

そして、その子供の世界がひっくり返った見えた瞬間は、ちょっとサスペンスっぽくもあった。えっ、これって、そういう映画なの?

でもそういった伏線回収みたいなスリリングなシーンは、すぐに終わり、また淡々とした流れにのって話は流れていく。

子供の世界ばかりではない。先生方に対しても、あれこれ驚愕ではあった。ひとつの典型キャラに見えているあの人は、本当は全然違うキャラだったり。いや、でも現実社会もそうか。そういうの、結構あるよな、と、改めて冷めた目で自分の周りの人間のことを考えてしまう…など。

悪役のパワハラ先生みたいな人が、最後意外なヒットを飛ばしたり。硬い感じの校長先生が、実は…みたいな展開もあり。一方で、一貫性のある生徒に人気のキャラに描かれていた若い女の先生には、ちょっとホッとしたりも…。

主人公である教頭は、なんとなく冴えない感じ。奥さんを交通事故で亡くして、シングル・パパをやっているものの、可愛がっている娘にもなんとなく距離を置かれている。そして、うまくいろんなものとの距離を測りながら、ぷかぷかと浮いている、そんな感じの生き方だ。

最後の方でも、ナイスなセリフを吐くので、おっっ!?と思うんだけど、その後すぐ「道間違えちゃった…」と自転車で迂回してくるシーンなどは、なかなかで、あそこは、ちょっとクスッと笑わせてくれた。

というか、そうそう、この映画、実際笑える場所もいくつかある。なんかこの教頭、泣いたり、笑ったり、いろんな感情の境界線に生息している。

そんな感じの人だ。100%悲しくもないし、100%嬉しくもない。でも普通の人って、こんな感じなんだろう。いや、何を持って普通とするのか。私だって、こんな感じなのかもしれないし…

そして、なんとなく日々は流れていく。大きな問題にならない限り、事態は大きくは変わらない。引っかかることはあっても、ただただ生活はそのまま流れていくだけだ。

教頭先生やってる役者さん。すみません、私ほんとに日本の俳優さんわかってないので、拝見するの初めてだったと思うのだけど、すごくよかった。渋川清彦さんという。冴えないもっさりな中年男を演じているのだけど、本当はすごくかっこいい(笑)キレッキレの演技をする方らしい。

うーん、キャラ作りなのか? すごいなと思ったら、撮影の現場にはフラットな気持ちでのぞんだ、なんてパンフレットのインタビューに書いてあったよ。へぇー。

あと子供たち! 子供たちは、逆にみんながみんな、すごい役者である。10歳くらいの子だから、まだまだ子供だとは思うのだけど、みんな落ち着いている。パンフレットに掲載されているバイオを見るとすでに皆さん、すごいキャリアの持ち主ばかりだ。

特に女の子たち。すごいね。可愛いだけじゃなくて、視線の動かし方から、何かとびっくりさせられた。そして確かに何かを断定して決めつけるように描かない佐向監督の、『教誨師』にも通じる空気もあるし、いろんなことを考えさせられる映画だった。

最後の終わり方も、なんとも好き!(笑)

あ、そうそう、なんか扉の引き戸の音がなん度も出てくる映画だった。小学校の教室の扉の音、職員室の扉の音、古い一戸建ての家の扉の音。

田端の映画館は、バリアフリー上映で、「扉の音」とか、いちいち字幕が入ってくるから余計気になったのかもしれないけど。でも、あの演出は、なんか考えがあってのことなのか? チャンスがあったら監督に聞いてみたい。


 

10月25日(土)&26日(日) レソノサウンド(巣鴨駅徒歩5分)にてCDセールを行います。今回は野崎の個人在庫の他、販売していたCD(新品)の在庫も放出いたします。入場料は一律2,000円。とにかく好きなだけお持ちくださいというシステム。事前予約優先。詳細はここ。予約開始しています。こちらのフォームへどうぞ

◎12月10日 北とぴあの「音楽と本祭」、第2回のテーマは小泉八雲です。佐野史郎さんと山本恭司さんによる圧巻の朗読&音楽のステージ。そして小泉凡先生の解説付き。NHK朝の連ドラ「ばけばけ」の世界をぜひ。特設サイトはここです


◎ポール・ブレイディが12月にケルティック・クリスマスで来日します。チケット発売中。詳細はこちらへ。もうかなり売れちゃってますので、みなさん、お早めに。お求めください。



◎野崎は、現在作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。
6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中

2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。現在無印良品の店頭で聞くことができますし、配信でも聴けます

◎公開中。こちらのショパンコンクールのドキュメンタリー映画『ピアノフォルテ』のPRのお手伝いしております。みんな見てね! 公式サイトはここ