試写で拝見しました。ありがとうございます。見たのはだいぶ前だったけど、公開日に近い方がいいかな、と思い、今まであっためてました(笑)。11月7日公開。こちらが公式サイト。
よく毎日書いて偉いね、と言われますが、全然で、ほとんどは書き溜めたやつを出しているだけです。
子供のつらい映画だということで、見るのを怖がる人もいるかもしれないけど、大丈夫、怖くはない。辛さをあおるような変な演出もいっさいない。もちろん辛いシーンはあるのだけれど。
ドキュメンタリーを撮ってきた監督ということで、妙にリアル。カメラワークもすごくいい。この話は監督の実体験に基づいて作られているのだという。監督はフィリピン生まれ、ナイジェリア育ちだという女性監督・プロデューサー:シャシャ・ナカイ。
そしてそのパートナーのリッチ・ウイリアムソンが、監督、撮影、編集を手掛けた。原作と脚本はキャサリン・エルナンデスというフィリピン、スペイン、中国、インドの血をひくカナダ出身の脚本家。自身、クィアであることを公言しているという人だ。
ストーリーは、カナダのトロント近郊、スカボローに住む子たちの話。なんと出演の俳優さんたち、演技未経験の人もいるのという。信じられない。それぞれ問題のある家庭が登場するのだけれど、それぞれの運命が交差したのが、この教育センターなのだった。
行き場のない家族が、時には子供だけで、時には大人も一緒に、このセンターに集う。
アラブ系と思われるヒジャブをまとう女の先生が、とても素敵。すごく綺麗な人だ。知的な雰囲気もあり自分の仕事にプライドを持って取り組んでいるのもわかる。
でもその彼女の苦悩もただごとではない。彼女は凛とした強さと優しさで、熱心に気長に子供たちと家族を見守る。目力半端ないと思ってたら、自身も俳優としてのみならず、いろんな社会的な活動をしている意思の強い女性らしい。素晴らしい。
そうなのよ、女優って、こういうところに普段の自分の生き様が現れるのよね。ただ演じてればいいって仕事じゃない。
もう彼女の生き方が、この映画での彼女のすべてに現れている。上司とのメールのやりとりに憤り、最後直接口論となるところなど、本当にグッときた。彼女が中心にいるからこそ、この映画も落ち着いてみてはいられる。じゃないと…やっぱり相当悲惨ではあるからだ。
それにしても、驚異的なのは、子供たちの演技。っていうか、この子供達、どうやって撮った??? 是枝方式??? とにかくびっくりの3人の子供が主役。
フィリピン系のちょっと体格の良い男の子。この子がなかなか魅力的で、キャラが立ってる。なんと彼は本作がスクリーン・デビュー。カナダ・スクリーン・アワードでは最優秀主演男優賞を獲得し、史上2番目に若い受賞者となったそうだ。
二人目はシルヴィーという、カナダ先住民族の血を引く女の子。なんと演技は初挑戦。すごい。ちなみに彼女の弟役の子は4歳で、障害のある子の役なんだけど、これまためちゃくちゃリアルでまったく物語と違和感がない。いったいどうやって撮ったんだーーー??!
三人目もやはりスクリーン・デビューが本作だという、とっても細くて儚い女の子。この子はアクター・スクールで演技を学んでいたらしいので、相当なプロだ。
っていうか、ちょっとこの子の演技には目を見張るものがある。時々死んだような目をして大人を見つめるところとか。やばいくらいの演技力だった。
…と子役の凄さに圧倒されながら、ハラハラ見ていたら、あっという間の2時間だった。久しぶりに映画、いっしゅんの気を抜くこともなく集中できたかも?
かなり悲しいシーンもあるけれど、でも実際、すごく泣けたのは、最後の希望が見えてきた時だった。
いやーいいよ〜、ピン、主役貼ってるよー いや、ほんと感動。そうか、その曲で来たかーと。あったかい気持ちになる。大丈夫、みんなで少しずつ頑張っていけば、きっと大丈夫。そんな気持ちにさせられた。
96分という長さも、好印象。無駄なシーンもひとつもない。
ところで、これ2021年の映画なんだね。配給会社さん、よく見つけてきた! これはちょっとなんというか、かなり応援したい。11月7日公開。