映画『 #オーロラの涙 』を観ました。


還暦になって老人価格で見れる映画! 次々行きます。

暗い映画ではある。いわゆる真面目に生きている、貧困のエッジにいる人たちを描いている。しかもスコットランド…ケン・ローチの制作スタッフ…とくれば、見ないわけにはいかないだろう。初日の初回に行ったら、劇場は高齢男性ばっかりだった。

でも監督・脚本はローラ・カレイラという女性。エジンバラを拠点に活動しているけど、この映画の主人公と同じポルトガルの出身だ。

で、この監督と俳優さんのタッグがすごい。セリフはすごく少ない。でも主人公の気持ちがひしひしと伝わる。この女性監督・脚本と、女優さんのタッグという意味では同じ日に公開された『ナースコール LATE SHIFT』も同様だけど、すごいよな。

なんだろう、集中力が違う。女性同士の強烈タッグ。

でも、ほんと辛いよね。お金のない時の惨めさは、私も何度も経験している。

学生の時、仕送りを早めに使い切ってしまった時(仕送りは10万円、家賃は2.5万円・トイレ共同、風呂なしだった)。そして今だから言えるけどTHE MUSIC PLANTの事業用の通帳の残高が100万を切った時(事業主としては焦る!)も、何度もあり…。

小さくても事業主といえば、自由にすぐ動かせるお金がいくらかないと、本当にビジネスチャンスを逃してしまう。

自分個人の銀行口座は、すっからかんでもいいのだけど、事業の運転資金が寂しくなるのは、本当に辛い。

自分一人なんか、ある意味バイトでどうにでもなる。でも事業がやばくなる、あの胃がキリキリするような感覚。体験してないとわからんだろうなぁ。

「お金がない」ってすごい。本当に自分の生活のすべてに暗い影がドーンと落ちてしまうあの感覚。のびのびと元気に生活できるかどうかは、定期収入のないフリーランスの場合、預金通帳の残高と比例する。

そして、その影は本当に大きく生活全体にのしかかってくる。決まったタイミングでお金がもらえるサラリーマンとは状況が違う。それを追体験しているような気持ちになった。

アマゾンみたいな倉庫で、ピッカー(商品ピクアップ係)として働いている主人公。「今週の優秀ピッカー」みたいなのに選ばれ、チョコレートバーを上司にもらったり…。あそこのシーンはリアルだよね。

真面目に生きているのに、ちょっとした躓きで、お金が回らなくなったり。そして、シェアハウスの中で順番で支払っている(らしい)電気代を立て替えてもったり、立て替えが追いつかず電気が止まったりしている。その寂しくて辛く、不安な気持ちをシェアする友人もいない。

朝一緒に出勤する友人は、他の就職先を見つけて事務仕事に就く。座っているだけの仕事がしほしい、と言う友人。座っているだけなんて、なんて素敵!と彼女は言う。

一方の主人公も面接を受けるのだが、どうもピンとこない。自分の強みをアピールできない。私だったら…「なんでも真面目にやります。遅刻は絶対にしません。今の職場ではベストピッカーにも選ばれたことがあります」とかスラスラ言えちゃうのだけど。それすらも出来ない。

いや、それが出来ているのならば、こんな職場からとっくに逃げ出せているのだろう。

ハウスのキッチン・エリアで他の住人が作る暖かい夕食のご相伴に預かったり、小さな親切がぐっと沁みる時もある。うん、わかるよ。

そんな時、親切にされると泣きたくなるよね。

そして携帯電話がずっと手放せない。ひっきりなしに動画を見ながら1日が終わってしまう。何が楽しくて生きているのか。自分でもよくわからない。突破口はないのか。出口はどこなのか。

映画の最後は、それでもホッとできる瞬間があり、それも長くは続かないのだけど、そんなふうに毎日が過ぎていく…といったところだ。監督によれば、このエンディングも実際のエピソードからヒントを得たのだそうだ。

あ、そうそう、愛情のこもったパンフレットもすごくいい。ブレイディみかこさん、武田砂鉄さん、そして湯浅誠さんなどが寄稿で読み応えたっぷり。うん、映画のパンフレットはこうじゃなくっちゃね。

 

そうそう、最後エンディングに流れる曲を聞いてびっくり! おー、ドローンだ。パイプか。歌はこれはトラッドだな。誰が歌ってんだろと思い、クレジット見て、びっくりLankum! 

Lankumって、そんなに出世してるわけ? えーーーっ?!

 

そして… これは後で本人に確認しようと思うのだけど、Martin Green(ラウー)も1曲、曲を書いてる。びっくり。「Aurora」という曲だ。まぁ、マーティンもBBCで賞を取ってるし、英国作品だから、まぁ、そうだろうよね。

ところでケン・ローチ監督と言えば、こちらの作品『The Old Oak』がめっちゃ楽しみ。4月公開。

巨匠、引退するといいつつ、すごいな。っていうか、巨匠が黙ってられないほど世の中が悪いということか。こんなにも素晴らしい映画を何本も世に送りだしてきたというのに!! 世の中は監督の名作から何も学んでいないということなのか?!


それにしてもこの巨匠の、辛い立場の人を淡々と描くみたいな、そういうスタイルがこうやって次の監督に引き継がれているのが、本当に素晴らしい。なんというか、こういうの、ずっと応援していきたい。作品を見続けていきたいし。

  

◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろすことにしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。

◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。 最新インタビューをotonanoにて連載中!