Introducing John Smith 2 「地図または道案内」

から続く)それが本作「マップ・オア・ダイレクション」である。ホテルの部屋でラップトップで聞いていた事もあって、その時はジョンの歌の後ろに聞こえる自然音は聞こえなかったから、自宅に帰るまでこのユニークな録音方法に気づかなかったのだけど、まずは楽曲自体が本当に良いのにとても驚かされた。特に1曲目の「Invisible Boy」そして4曲目の「A Long Way to A Woman」なんて、めちゃくちゃ良いじゃん。いや、ホント頭4曲で完璧に脱帽である。久しぶりにものすごく良いアルバムを聴いたと思った。3曲目の「Axe Mountain」の緊張感から4曲目の「A Long Way〜」に入って行く感じなんて本当に最高である。本当に最初から最後まで完璧にちゃんと聴かせるために作られたアルバムだと思う。それはジョンの楽曲の良さにくわえて、プロデューサーのジェイソンの特殊なレコーディング方法における見事な手腕によるものが大きいと思うが。

でもこの旅心誘うこの作品の内容が、(その時の)寂しい私の出張心に共鳴しちゃったかとも思ったので、ジョンを日本に紹介することを決意する前に、本当にこれが日本に紹介すべきに値するアーティストなのか、さっそく周りの人たちにマーケティングを始めることにした。

実は新人君をやるにあたり、このプロセスは非常に大事なのだ。

だいたい海外出張に出ると「何か拾って帰らないと」という気持ちが働く場合もある。何を紹介すべきか冷静にちゃんと判断しなければ、お客さんの信頼を裏切ってしまう。ちょうどケルティック・コネクションというグラスゴーのフェスティバル開催中だったので、毎日いろんな人に会うことが出来た事もあり、会う人、みんなに「ジョン・スミスってどう思う?」と聞いて回ることにした。

面白いことにジョンのことは知らない人はかなり多かった。聞いた人たちのうち、半分以上の人が「どのジョン・スミス?」と聞いてきた。でも知っている人は一様に口をそろえて「あのギターはすごいな」と言っていた。ジョンのことを知っているのは関係者というよりもミュージシャンに多かった。つまり、まだジョンはミュージシャン仲間の中でやっと話題になりはじめたという段階なのだと思う。しかもいわゆる伝統音楽系の連中とはあまり交わらない活動をしているのだから、それほど知っている人が多くないのも無理もない。紹介してくれたブーだって、ジョンのことを知ったのは、それほど前ではないようだ。最初にジョンに会ったのは自分の前座としてジョンがあらわれた時だったとブーは話していた。リバプールだかどっかでのコンサート。最初は「ジョン・スミス? 誰だ?」と思ったブーだが、自分より先に演奏したジョンがあまりに凄いのだから、ブーはすっかりビビってしまったと言う。

そんなグラスゴー滞在中、たまたまとあるバーでフィドラーズ・ビドのクリス・スタウトと、クリス・ドレヴァー(ラウー)と一緒になることがあった。二人にジョンのことを聞いてみたらスタウトの方は、まったくジョンのことを知らなかった。一方のドレヴァーの方はブーが言うとおり明らかにすごいと思っているらしく、ものすごく熱心に私にというよりはスタウトにジョンの凄さを説明し、その姿がちょっと可愛いいほどだった。「歌がものすごくうまい」「ギターを横にして叩いたり、とにかくすごくユニークな演奏なんだ」「デヴォン出身なんだけど、ちょっといないタイプのアーティストだ」と。

その次に印象的だったのが、エディ・リーダー。エディから私は実はデクラン・オルークという強力アーティストを売り込まれている。そして悪いことにそれをやれずに実は何年もたってしまってるのだ。ごめん、エディ! 

エディは「あんたはこの私が推薦するデクランはやらないで、そっちをやるわけね」という明らかにご不満な顔をしながらも「確かにジョンのギターはものすごいわ。それは認める。あれは滅多にない才能よね。でも歌はみんなが言うほどすごいとは思わないけど」と言った。この「みんなが言うほど」っていうところは、エディの間違いない本音だろう。私はこれはかなり正確な評価だと感じた。エディのおかげでかなりの自信を持ったと言って良い。



自作字幕に注目!(笑)