ベンダ・ビリリ〜もう一つのキンシャサの奇跡

すみません、ジョンの来日が終わるまで、ここはジョン一色にするつもりでしたが、あまりにも感動したので、やっぱり書かせてください。今日,実はスタッフ・ベンダ・ビリリの映画「ベンダ・ビリリ〜もう一つのキンシャサの奇跡」の音楽関係者向け試写会があり、渋谷までえっちら出かけてきました。

ビリリの活躍はヨーロッパのワールドミュージックの仕事をしているなら、絶対に知っているべきの一大事件です。だから私も名前は知ってました。ヨーロッパのワールド・ミュージック・チャートの1位をずっと独占し、ありとあらゆるフェスティバルで大きくフィーチャーされ、名門クラムドレーベルの一押しでロンドンじゃーすでにバービカン(東京で言ったら武道館かしら)を満員にする‥‥みたいな。

でも彼らの音楽をちゃんと聴くまでは「あぁ、話題の車いすバンドね」という感じででしか認識してなかったのです。身体障害者で路上生活者で、楽器もなんだかヘンで。「こういうバンドだったら、そうねー、話題にはなるなー」と。

そんな私が一番最初に引っかかったのはYou Tubeの映像でオランダのビック・バンドとの共演を観たとき。なるほど。こりゃーあ、かっこいい。音楽も基本JBなんで、非常に分かりやすく、ポップなんですよ。JBだからビック・バンド・アレンジとの相性も良い!

映画では、そんな彼らの路上での活動から、ヨーロッパツアーを実現させるまでの道のりが描かれています。それにしても‥‥まぁ、この監督二人。よく撮ったなぁ、と。しかも撮るだけじゃなくビリリのヨーロッパ進出も、彼らが力を貸したわけですから、これはバンドのメンバーだけでなく、この映画監督二人の道のりでもあるわけです。ここまで撮れるのはメンバーに相当信頼されていないと無理でしょうね。成功したライブのギャラを分ける時など、かなり生ナマしいシーンも。そして、シェルターが火事で全滅した時は、どうなるかと思いました。あの時はさすがのビリリのリーダー、リッキーの顔が一瞬曇った。メンバーは生活を立て直さなければならない。撮影の資金も突きいったん資金調達のために帰国する監督たち。(想像してみてください。あんな過酷な環境じゃ戻ってきた時にまだバンドがある、メンバーが元気でいる保障などないのですよ。実際リッキーを中心とするメンバーのほとんどがコンゴの平均寿命をとっくに上回る年齢なのです。実際サトンゲの天才少年ロジェを探し出すのに苦労するリッキーの姿も描かれています)

そしてやっとやっとレコーディングを実現させる。最初のスタジオでのレコーディングなんか、なんて素朴な! 慣れない感じが、とってもチャーミング。そして彼らが練習場所にしている動物園でのレコーディング・シーン。この辺りはちょっと不謹慎だけど、なんか夢のようなシーンでした。

リリースしたCDが話題になり、いよいよヨーロッパのフェスティバルに行くことになったビリリ。家族に別れを告げて旅立つシーンには,本当にグッと来た(コンゴってキリスト教の国なんですね。ヨーロッパは神様の国だとみんな思っている)。そしてシャルル・ドゴールに降り立つメンバー。キョロキョロするリッキー。それでも自分たちの音楽でこのヨーロッパをノックダウンしようとしている! 自分たちの音楽に対する自信はゆるぎない。なぜなんだ! その自信はいったいどこから来るんだ! メンバーを励ましバンドをまとめ、演奏が熱くなる。出演したフェスティバルで、最初は何だろうと遠巻きにみていたお客さんたちが、最後にはステージの前に集まって全員が踊りまくっていたあのシーンは本当に圧巻で、思わず泣けた。以前読んだ松山晋也さんによるこの映画監督のインタビュー記事を思い出した(ラティーナ誌)。あの場面では二人とも本当に号泣だった、と監督たちは告白していた。(あのインタビュー、また読みたいな〜、いつの号だったかなー)

それにしても路上からいきなりあんなに成功して、本来なら精神的にも身体的にもバランスを崩しちゃいそうなものだけど、しっかりバンドが結束し、ちゃんとプロフェッショナルに活動していけるのは、やっぱりリーダーがすごいからだと思いますね。絶対にいろいろあるに違いない。ないわけがない。それは日本みたいなところに住んでいる私たちには想像できないような、すごい問題がたくさんあるに違いないないんです。それなのに、リッキー、かっこ良すぎる!!! やばいよ、リッキー。リッキーの言葉にいちいち感動。「女が来たら、やんわり断れ」ってのには爆笑しました。すごいリーダーだよ。ホント。

そして、なんといっても、音楽が素晴らしいんです。この音楽を信じバンドを作ったリッキー。彼らを発見し映画を製作したプロデューサー。そして彼らのCDを出したクラムドディスク。そして映画の完成も見えないままに日本でビリリのツアー&映画を企画した勇気あるプランクトンさん(裏話がたっぷり社長ブログで読めます)。皆、この音楽の力に引っ張られたのに他ならない。そしてその映画がこの不況であえぐ元気のない日本にも届けられた。すごい、音楽って、本当にすごい! 

プランクトンのスタッフのお話によると、ビリリの皆さん、すっごくいい人たちで、とっても紳士的でプロフェッショナルなんですって。あぁ、このバンドが本当に10月に来るなんて、いったい東京はどうなっちゃうんだろ!! この秋、もっともセンセーショナルなバンドですよ。ベンダ・ビリリ! 皆さんも絶対にパワーをもらいましょう。彼らほどパワーをくれるバンドは,他にはいません!!

私の大好きなオランダのビック・バンドとの共演を貼付けておきます。リッキー、歌が本当にうまい。すごくいい声してる。リッキーが入っていくところ(0:45くらい)とか、もう何度観てもゾクゾクしちゃいます。バンド全体もここに向かってぐっと加速するんですよね。ビック・バンド・アレンジが似合います、ビリリ。かっこいいよー(涙)「ヨ〜ヨ〜ヨ。ヨ〜ヨ〜ヨ」「マンネリサ〜、マンネリサ〜」松葉杖のカボセが、ラップで入って行くところなども(1:45あたり)、鳥肌もん。なんか音はずして行くんだけど、そんな事言わせない圧倒的な説得力。これがパワーなんです!! いや〜,素晴らしい。私も自分の仕事、頑張らないとなー。今日はビリリにパワーをもらった。ビリリ、ヤワな俺たちにカツを入れてくれっ!



映画はイメージフォーラム他、9月から公開予定。
来日公演は9月後半から全国各地で行われます。10/11(祝)は日比谷野外音楽堂です。もちろん私も行きます! 皆さん、数曲フレーズだけでも覚えていきましょう。上の映像の曲と,この曲はきっとやると思います。「ラ〜イナリンリヨ〜、ライナリンリヨ」って奴。