私は実はPR会社に勤務していたことがあって、そこで学んだことなのだけど、何かを売り込むには5つのネタ(切り口とも言う)がないとダメだという事を学んだ。なぜ、今、この音楽を聞く必要があるのか。他の音楽とどう違うかを説明する5つの切り口。
それを念頭に、今日はヴァサラットのマスコミ向け資料を作っていて、こんな文章を書いている。ちょっとクサいけど、一般のお客さんに見せてもいいかなということで、ここに転載するべし。
●ジャンル分け不可能! 地球上のすべての民族の喜怒哀楽を受け止める「架空世界のワールドミュージック」
ヴァサラットの音楽には聴く者すべてを吹き飛ばす強烈なインパクトがあるが、果たしてそれを言葉で表現しようとすると不可能に近い。ワールドミュージックのような、ジャズのような、ヘヴィ・メタルのような、パンクのような…。クレズマーや、スカンジナビアの伝統音楽、中近東の影響も感じられる、とにかく摩訶不思議なサウンドなのである。哀愁のポルカや叙情系ワルツがあるかと思えば、疾走する高速ブラスは、かなりジプシー/バルカン風であり、そこにはすべてが人間が共有できる、あらゆる感情が存在している。つまり最終的にヴァサラットの音楽こそ、あらゆる民族の喜怒哀楽を具音化する最強のワールドミュージックなのだ。彼らは自分たちの祖国を「ヴァサラシア」「ヴァサラット郷」と名付け、そこで生まれる民族音楽が自分たちの音楽だと無理矢理ジャンル分けでしている。
●プログレ界をも震撼させた変態チェンバーロック! 魂の叫び! 爆発する変拍子!
ヤルノとテームが参加していたプログレッシブ・ロック・バンド「ホイリー・コーン」(どうやらハウリーコンネというのが正しい発音らしいのだが、日本ではこう紹介されていた)は、その筋ではかなり知られた北欧を代表するプログレバンドであった。伝説的な傑作「昆虫偏愛」「偽理髪師」という2枚の作品をスウェーデンのレーベルから発売(日本ではマーキーより発売)。当バンドの活動は、そのままヴァサラットの音楽へと移行していく。そういえばヴァサラットが生み出す変幻自在かつヘヴィで銃砲隊のようなリズムは初期のマグマやキング・クリムゾンの音楽さえ連想させる。が、使うのはあくまでアコースティックな楽器のみ。それでも小さい音で聞いていたとしても、なぜか妙にうるさく聴こえるパワフルな音圧がそこに存在している。
●チェロ2台、ギター不在というユニークな編成 そして巨大サックスTUBAX
人間の音域をカバーしてしまう楽器、チェロ。フィンランドには4台のチェロでメタリカのカバーを演奏するヘヴィ・メタル・カルテットも存在していた。このロックバンド的なサウンドでありながらも、なぜかギターが不在でチェロ2台というのは、フィンランドにおいては、あまり珍しい事ではないのかもしれない。そしてフィンランドといえば北欧ヘヴィ・メタルのメッカ。ヴァサラットにおけるチェロも、時々ヘヴィなディストーションをかけ迫力の演奏を聴かせる。一方スタクラが演奏する巨大サックスTUBAX。世界にも数台(日本には3台あるらしい)しかないこのあまりにもエキセントリックな楽器はスタクラの特注で真っ黒だ。この楽器を見に来るだけでも価値のある来日公演になること間違い無し。
●ユーモアあふれるステージ、超一流のエンタテイメント
エア・ギター選手権の開催地でもあるフィンランド。だからヴァサラットの音楽にもそこはかとなく流れるユーモアがある。メンバーは大真面目に演奏しているのだが、なぜか可笑しい。それがヴァサラットのスタイルであり、ユーモアのセンスなのだ。真っ黒な衣装に強面のメンバーは迫力満点だが、この芝居かかった胡散(うさん)臭さこそ、ヴァサラットの最大の売りなのである。コンサートではトロンボーンのエルノによるロングヘアーを振り乱してのヘッドバッキングなど見所満載。ヴァサラットにはサーカス的愉快さと哀愁が共存している。エンターテイメント精神がありながら非常にシニカル。一筋縄ではいかないフィンランドが、やはりここにも存在する。
●フィンランドって本当にヘンな国。
隣接するスカンジナビアの文化に加え、ロシアや北極圏のサーミ、ロマ(ジプシー)など多くの文化が混在しているフィンランド。おしゃれな北欧家具のイメージで、環境に優しく福祉が充実した幸せな国と思われがちだが、それでも生きている限り人々の悩みはつきない。1つの悩みが解決されても、さらに高次元の悩みが押し寄せ,結局人間はいつまでたっても幸せになれない。男性の自殺率が他の先進国に比べて高いことや、社会的にも女性が強すぎて主婦という生き方が認められなかったり…それが彼らの生き方をさらに辛いものにしている。そんなフィンランドだからこそ、生まれたのがヴァサラットの音楽なのだ。それを考えればデプレや雇用問題、年金問題に悩む日本もそんなに捨てたものではない。まさにヴァサラットはこの元気のない日本を元気にするためにやってきた音楽の救世主なのだ!
……と、まぁこういう資料を作るわけですよ。もう少し文章を練ってみるかな、と深夜(もう朝だ)に思う。もう少しがんばろ。