「慈悲の怒り」上田紀行

BOOK TALKのブログを一緒にやっているタイコウチさんがこんな本を紹介してくれたので、さっそく購入! 今日、近所の鰻屋に夕飯を食べに外に出る際、ちょうど郵便受けに届いていたのを見つけたので、夕飯を食べながらさっそく読み始めてしまった……すごくいい!この本! 著者が今回の震災をうけて「書かねばならない」と思って書いたというだけあり、さすがにものすごく説得力がある。

地震当日東京にいた私たちは被災したわけでもない。ただ電車が止まったから自宅まで歩いたり、棚が倒れて部屋の中がめちゃくちゃになっただけだ。故郷や愛する人を失ったわけでもない。でもものすごく私たちも傷ついている。モヤモヤしている。そんな私たちが読むべき本である。そして問題を直視すべきなのである。超お薦め。(それにしてもさすがタイコウチさんだよなぁ…)

この本が言っていることは、ものすごく大事なことだ。まだ半分しか読んでいないが、感動した部分を忘れないように書きだしておく。ダライ・ラマの「困難な時を過ごす時に、現実を正しく認識しつづけているのならば、その過程で自分たちの心の力を強くすることができるということです」という言葉を思い出しながら。ここでしっかり自分たちで考え現実を変えて行くことを学ばなければ、私たちに未来はない。


起こった問題をクリアに。
「今回の震災は地震,津波というという天災と、原発事故という人災の2つの事象をきっちり分離することが必要です」

“がんばろう” “みんな一つになろう”といったメッセージについて/思考停止状態になってはいけない
「そのメッセージ自体は美しいものかもしれません。しかしこのタイミングでそういしたメッセージが連呼されるとき、それは私たちの自我の不安の軽減装置として、
そこに逃げ込むべきものとして消費されてしまいます

この震災で2万人以上の人が亡くなったり行方不明になっていることについて。
そして実はそれ以上の人数が実は自殺で亡くなっているという状況を10年以上克服できていない日本について
「この震災からの復興は、これだけ多くの自殺者を毎年生み出し続けるような、この社会システムを根底から変えていくものとならなければいけないだろう。
それは徹底的に苦しむものの側に立ち、ぜったいに見捨てないという、社会の中での「信頼」の回復である

日本型無責任体制
「社会の中に、その場の空気というのがまずあって、状況が最初に決められていると、
我々はその状況や空気に寄り添うようなことしか言わず、状況そのものを変えるような発言や行動をしません。ですから、その方向が大変危険なものであったとしても、それに歯止めがかからず、ずるずると進んでいってしまう。そして重大事件が起こって初めて、その「空気」が誤っていたことに気づくのです」

日本人は自分で考えて行動を起こし、世の中を作って行くことがものすごく苦手。
「日本人は最初に状況が与えられた中でうまく生きることは得意なのですが、
その状況自体が正しいかどうかを判断したり、もしその状況がふさわしくなければ新しい状況へとみんなの手で変えて行く、状況を作りあげていくことに関してはとても不得意だということです」

思考停止が敗戦を生んだ。
「丸山真男の論を読むと、実は(A級戦犯である)この人たちが、我々と変わらない、普通の会社員にも通じるような、あまりにも日本的なパーソナリティーなのだと思えてきて驚かされます」