マーティン・ヘイズの凄さが理解できない人はこれを聞くといい。LONESOME TOUCHに収録されている「Paul Ha'penny/The Garden Of Butterflies/The Broken Pledge/The Mother & Child Reel/Toss The Feathers」という長いセット。これほど、ものすごくて危険なアイリッシュミュージックはないと思うのだ、私は。
マーティンの音楽が説明されるとき「綺麗」とか「流麗」とか言われると私はムッとしてしまう。そうね、もちろん綺麗かもしれない。他の連中に比べてボウイングが長いからそう聞こえるのかもしれない。でもマーティンの音楽はそんな単純な言葉だけでは形容できないのだ。
たとえばこの長い10分にも及ぶセットをじっくり聞くと分かる。マーティンは最初から楽曲を弾きまくり、飛ばすということをしない。デニスの音なんて、ホントにミニマムだ。とにかくしばらくじっとこの音楽を聴いていてほしい。そうするとこの音の中に人間のパッション、そしてありとあらゆる感情が込められているのが分かるだろう。ゆったりしたテンポはほぼ5:30過ぎまで続く。この5分が大事なのだ。
そしてやばくなるのは5:30過ぎからだ。これほど感情を揺さぶられるアイルランド音楽が他にあるだろうか。ジワジワとジワジワとしみてくる。この感じ。他のアイリッシュミュージックじゃ… いや私が知っている他の音楽でも考えられない。これは本当にこの二人だけのものだ。すごいと思う。これが本物の音楽だとしたら、他のものは本物じゃないのかもしれないとさえ思う。
そしてメロディはどんどん展開していく… すごい。本当にすごいと思う。何度聞いても本当にすごいと思う。7:40くらいから更に展開がある。更に圧巻と言えるのが10分過ぎ。ここからはもう嵐のような展開。しかし、ホントもう、どうしてこうなるかね。すごいね、この二人。そしてもうあと2ラウンドくらい同じメロディを聞きたいと思わせながら突然この曲は終わってしまう。でももっともっと聞いていたい。
この素晴らしい音楽を「綺麗」とかで片付けてほしくない。これはすべての人間が持っている、ものすごい感情の塊だ。愛情や優しさだけではなく憎しみや怒り、悲しみ、絶望、欲望…すべての感情がここに渦巻いている。
マーティンは伝統音楽の、一つ一つの音にこめられた感情を読み取っていくんだ、と言っていた。これが、これが本当にこの曲のもっていた「気持ち」なのか。すごい。これはマジックだ。この曲を書いた人の気持ちがまるで手て取るように分かるようだ。そして… 私たちは何百年前の人たちも、アイルランドみたいな遠くにいる人たちも、私たちと同じ気持ち/感情を持った人間なのだと気づく。伝統音楽はマーティンとデニスの魔法によって、今、生き生きとよみがえる。この怒濤の2011年に。
ちなみにタイムを見て、MOVIEをはしょって聴こうとした方。ダメですよ。最初から相当集中して聞かないとこの感情は味わえません。でも騙されたと思って、私の言うとおり、本当に集中して、10分間、この音楽を聴いてみてください。私の言っていることが分かると思う。
ちなみにアイルランドの田舎の写真はちょっとキッチュだけど私が先日アイルランドで撮影したものです(笑)
と、まぁ、こういうものすごい音楽を体験したいとのであれば、ぜひぜひコンサートにご来場ください! 詳細はこちらですよ。売り切れ必須。このあと月末に向けて雑誌/新聞/ラジオ、もろもろ露出します。
またチケットの輸送時間を考慮し、25日にはチケットの通販を終了しますので、よろしくお願いいたします。