ポール・ブレイディ来日までの道のり22:Andy Irvine, Paul Brady

プランクシティは解散したけど、ポールとアンディは引続き仲良しだった。そして二人はデュオで活躍し始めます。アンディは一瞬デ・ダナンにドロレス・ケーンの後がまとして参加したものの、すぐ辞めて、ポールとの活動に専念しはじめます。

しかし、まぁ、この当時のアイルランドのバンド関連といったら、良くも悪くもごちゃごちゃですね。そもそもマネジメント的な視野がなければ、ミュージシャンは好き勝手しちゃうんだろうけど、もうあっちこっちに皆が足をつっこんでるって感じでしょうか。でも音楽家としては、それが健康的だったと言えるでしょうね。

アンディとポールはデュオでしたけど、でもそこにリアムが入ったり、実際プランクシティとは名乗っていなかったものの、その活動はプランクシティの延長だったのかもしれません。

実際ポールは名盤「Andy Irvine,  Paul Brady」をプランクシティの延長線的な見方をしているようです。「アンディと僕はものすごく音楽的にフォーカスできていた。そして経済的にもデュオとして活躍するのが良いと思われたんだ。ヨーロッパ、フランス、ベルギー、ドイツ、オランダ、そしてアメリカにも行き、ニューヨークのタウンホールでも演奏した」

アイルランドの有名ブロードキャスター、ジョン・ケリー(ホントに最高の人です!)は「このアルバムについて、僕はプランクシティを知る前にこの作品を知った」「今だにこの作品をきちんと理解しきれていない」としながらも「このブレイディの歌い方は本当にユニークだと思う。非常に伝統的な古い歌い方かと思えば、同時にリトル・リチャードとか、レイ・チャールズとか、ライトニン・ホプキンスみたいにも聞こえる。曲自体も非常に奇妙だ。僕はこのアルバムに出会うまでアイリッシュミュージックは単なるパーラーミュージックだと思ってきた(分かる!!)。で、いきなりこの作品を聴かされた。ショックは想像できるよね」

「あと知恵なんだけど、今なら、ジョン・リー・フッカーやウィル・オールダムやハリー・スミスのボックスセットが好きなのと同じ理由で、僕がこのアルバムが大好きだという理由が分かる。これは生の、人々の音楽なんだよ。これは、そういうスケールの音楽なんだ。実際に存在している人々のための大きな、大きな歌。これこそが<声>であり、<歌>であるんだ」

そして残念ながら、いや、今思えばこれから次々に起こることを考えれば、むしろラッキーにも、この名盤を1枚残し、ポールとアンディは別の道を進むこととなる。

「本当に僕らは仲良しで、75年から78年にかけて一緒に活動していた。でも結局のところ僕はアンディみたいにツアリング・アニマルじゃないんだよね」とポール。「僕は物事を整理するのにきちんと座って、次になにをやるべきか、じっくり考えたい性格なんだ。結局アンディがひっきりなしにツアーするのに、僕が着いて行けなかったという理由にすぎない。ちょうど結婚して最初の子供が生まれたばかりの時期だったし。それにそろそろ自分もソロでやってみたい、という気持ちもあった」

それにしてもジョン・ケリーの言う意味が分かるよね。今、聴いても最高にかっこいい。これこそが本当に人々の声なのだ。音楽としても、ものすごく研ぎすまされている。ジョン・ケリーの言うとおり、これは、そういうスケールの音楽なんだよ、と。

アンディ… かっこいい。うっとり。



「Andy Irvine Paul Brady」の名盤は、ウチに30枚くらい在庫があります。コンサート会場に持っていくので、会場でぜひぜひお求めください。