2本目に見たのは試写だったのだけど、4月14日からから岩波ホールで上映される映画なので、ここをご覧いただいている皆さんには絶対に観てほしい。これはホントに素晴らしいパワフルな作品である。ジム・ローチ初監督作品「オレンジと太陽」。公式ページはこちら。
サッチャーと同じ(笑)で、こちらもマーガレットという名まえの女性が主役だ。そしてこちらもノン・フィクションである。でも作品の質がまるで違っていた。女性の名前はマーガレット・ハンフリーズ。ひょっとしたきっかけで、1618年からなんとつい最近の1970年まで組織的に行われていたという児童移民の信じられない事実をあばいていくことになる。
最初のオーストラリアでの調査で、今では立派な大人になった孤児たちに、「私にも母親がいますか?」と聞かれ「誰にでも母親はいますよ」と答えるマーガレット。そこから次々と親と引き離された子供たちの物語が語られ事実があばかれていく。なんと移民としてオーストラリアに渡った子供たちには強制労働や虐待も行われていたというのだ。衣服や食事も充分に与えられず、大人になって施設を出る時には「食べさせてやった費用」といって借金を負わせられる。教会やら国の思惑が絡み、起こった多くの悲劇が今、陽のもとにさらされることになった。(マーガレットの設立した基金の調査によると、この児童移民の動機は複数あったとされている)
この映画の監督はケン・ローチの息子ジム・ローチ。映画監督1作目である。2002年にすでにマーガレットの著書を読んだ監督はマーガレットのノッティンガムのオフィスを訪ね、初対面で意気投合し連絡を取り合う仲になったのだそうだ。そして、なんとこの映画の制作中に英国/オーストラリアの両政府が、この件について公式謝罪するというニュースもあった。そんな具体的なエピソードも背景にあって、すべてがリアルで、真面目にこの「事実」を伝えようとしている事が感じられるホントにリアルな映画になった。
なんとか孤児たちの力になろうとしたマーガレット・ハンフリーズ本人。たくさんの映画のオファーがあったものの、そこからジム・ローチに任せることに決めたという。マーガレットにまかされたジム・ローチ監督。脚本から俳優陣まで本当に真面目にこの事実と向かい合っているのが本当に好感が持てる。そして本当にエミリー・ワトソン素晴らしい! 私はこういう作品を引き立てる女優さんが好きだ。以前みた「レッド・ドラゴン」や「アンジェラの灰」でも彼女も大好きだった。特に「レッド・ドラゴン」の押さえた縁起における存在感はすごかったよね。今回もこの役にぴったりだったと思う。
映画の中にはいろいろなキャラクターが登場するのだけど、一人とても魅力的なキャラクターがいる。レンと呼ばれるその男性は最初マーガレットとは相容れないものの、マーガレットの毅然とした態度に、圧倒されながら少しずつ態度を軟化させていく。プレス資料によると、この男性のモデルになった人物は絶対に自分の孤児としての悲劇に負けていないという、とても魅力的な人物なのだそうだ。ジム・ローチ監督も彼は犠牲者ではなかった、と。同情でもしようものなら、きっと彼は怒るでしょうね、と説明している。そんな素敵なキャラクターが元になったというレン。それが映画でも良く描けている。そして、その男性と一緒に施設を訪ねるマーガレット。そこでの会話で「負ってしまった傷は絶対に癒えない。でもあなたが頑張ってくれたから、それでいいんだ(正確には覚えていないけど、そんなセリフ)」と話すシーンは良かった。ちょっと今の被災地にも通じるものがあるかもしれない。施設に二人が乗り込んで行った時、朝食をとる神父たちの様子がドギマギする様が、ちょっと東電の連中にかぶってみえた。マーガレットの出現にビビる神父たち。何も知らない子供や、子供を手放さねばいけない人たちを騙してきた。そんな奴らの権力なんて、そんなもんなんだ、と。
控えめに、しかしパワフルにというのは「ローチ」ファミリーの持ち味なんだろうか。それにしても素晴らしい映画だと思う。絶対に絶対に公開されたら、見に行ってください。ネタバレになるから多くは書きませんが、この映画は「あのシーンが好きだ」とか「あのセリフがぐっときた」とか、とにかく見終わった後、たくさん語れる、そういう映画だと思う。
サッチャーと同じ(笑)で、こちらもマーガレットという名まえの女性が主役だ。そしてこちらもノン・フィクションである。でも作品の質がまるで違っていた。女性の名前はマーガレット・ハンフリーズ。ひょっとしたきっかけで、1618年からなんとつい最近の1970年まで組織的に行われていたという児童移民の信じられない事実をあばいていくことになる。
最初のオーストラリアでの調査で、今では立派な大人になった孤児たちに、「私にも母親がいますか?」と聞かれ「誰にでも母親はいますよ」と答えるマーガレット。そこから次々と親と引き離された子供たちの物語が語られ事実があばかれていく。なんと移民としてオーストラリアに渡った子供たちには強制労働や虐待も行われていたというのだ。衣服や食事も充分に与えられず、大人になって施設を出る時には「食べさせてやった費用」といって借金を負わせられる。教会やら国の思惑が絡み、起こった多くの悲劇が今、陽のもとにさらされることになった。(マーガレットの設立した基金の調査によると、この児童移民の動機は複数あったとされている)
この映画の監督はケン・ローチの息子ジム・ローチ。映画監督1作目である。2002年にすでにマーガレットの著書を読んだ監督はマーガレットのノッティンガムのオフィスを訪ね、初対面で意気投合し連絡を取り合う仲になったのだそうだ。そして、なんとこの映画の制作中に英国/オーストラリアの両政府が、この件について公式謝罪するというニュースもあった。そんな具体的なエピソードも背景にあって、すべてがリアルで、真面目にこの「事実」を伝えようとしている事が感じられるホントにリアルな映画になった。
なんとか孤児たちの力になろうとしたマーガレット・ハンフリーズ本人。たくさんの映画のオファーがあったものの、そこからジム・ローチに任せることに決めたという。マーガレットにまかされたジム・ローチ監督。脚本から俳優陣まで本当に真面目にこの事実と向かい合っているのが本当に好感が持てる。そして本当にエミリー・ワトソン素晴らしい! 私はこういう作品を引き立てる女優さんが好きだ。以前みた「レッド・ドラゴン」や「アンジェラの灰」でも彼女も大好きだった。特に「レッド・ドラゴン」の押さえた縁起における存在感はすごかったよね。今回もこの役にぴったりだったと思う。
映画の中にはいろいろなキャラクターが登場するのだけど、一人とても魅力的なキャラクターがいる。レンと呼ばれるその男性は最初マーガレットとは相容れないものの、マーガレットの毅然とした態度に、圧倒されながら少しずつ態度を軟化させていく。プレス資料によると、この男性のモデルになった人物は絶対に自分の孤児としての悲劇に負けていないという、とても魅力的な人物なのだそうだ。ジム・ローチ監督も彼は犠牲者ではなかった、と。同情でもしようものなら、きっと彼は怒るでしょうね、と説明している。そんな素敵なキャラクターが元になったというレン。それが映画でも良く描けている。そして、その男性と一緒に施設を訪ねるマーガレット。そこでの会話で「負ってしまった傷は絶対に癒えない。でもあなたが頑張ってくれたから、それでいいんだ(正確には覚えていないけど、そんなセリフ)」と話すシーンは良かった。ちょっと今の被災地にも通じるものがあるかもしれない。施設に二人が乗り込んで行った時、朝食をとる神父たちの様子がドギマギする様が、ちょっと東電の連中にかぶってみえた。マーガレットの出現にビビる神父たち。何も知らない子供や、子供を手放さねばいけない人たちを騙してきた。そんな奴らの権力なんて、そんなもんなんだ、と。