村木厚子「あきらめない」

村木さんファンの私であるが「あきらめない」を、まだ読んでなくって、やっと読みました!

が、読み終えてまず言いたいのは、阿川さんの「聴く力」同様、やっぱりこういう帯やタイトルに違和感あるなーという事。こういうキャッチにした方が売れるんだろうけどね。わたしだったら別タイトルにしたなー。

このテの本は構成の人が文章を書いているので、文章はスイスイと非常に読みやすい。雑誌の連載だったからというのもある。あっという間に3日で読了。

いや〜感動です。本読んで爆泣きしたの久しぶりかもしれない。これは非常に静かだけどパワフルな本です。村木さんそのものなのかも。

前半は村木さんの少女時代から大学に受かり、そして公務員になり仕事をしていく様が書かれているわけですが、ホントに彼女って謙虚で、ホント強いなーと…感動しきり。東大からコネで官僚になったわけじゃないから、地方から出て来て、ホントにいろいろな苦労や不利な要素があったんじゃないかと想像する。

やっぱダメなのは東大→官僚の図式だよね。東大の文1の人たちって自分以外の日本人を「国民」と呼ぶらしいのだが(笑)、村木さんのバックグラウンドはそんなものではない。高知大学を卒業し「女性が一生続けられる仕事を」と考えた時、あまり選択肢もなかったということがこの仕事に就いた理由なのだそうだ。

村木さん、私と11歳しか違わないわけだけど、10年でこんなに環境って違うかなと思った。私は幸いにも、女だから仕事上不利だと思ったことは一度もない。もともと鈍感だし、そのくらい生意気だったのかも(笑)。若い頃は特にね。もっとも社員として入った会社の4つのうち2つが女性が社長だったもんなー。その点もレアはレアだよね。

あと音楽業界はホントにまじで男社会で女性が現場にいることすら珍しかったから、女というだけでけっこう有利で、かなり可愛がってもらったというのもある。あとは厳しい世界だから、細かいことにいちいち傷ついてらんないというのもある。女だうんぬん以前に、仕事の上での問題はホントに常に目の前に山積みだった。そっちに腹をたてる方が多かった。

そうか、世の中は良くなっていってるんだな、というのを改めて考える。

そこで思い出したまた一つのエピソード。脱線するけど、皆さんにも知ってほしくてあえて書く。ちょっと前に読んだダライ・ラマと学生との対談本で学生に「世の中はよくなっていくと思いますか」と質問されたダライ・ラマの回答は「良くなって行くと思います」だった。ダライ・ラマは、彼がクイーンマザーに謁見し同じ話題になった時のことを例にあげた。当時御歳90ナンボで、1世紀近く世の中を見て来たクイーン・マザーは即答で「良くなりました。本当に世の中は良くなりました」と感慨深く答えたのだそう。「選挙権、男女平等、昔と比べれば今は夢のようです」と。

お茶くみだって村木さんの時代には大問題だった。お茶汲みの話は、村木さんの本では大変なビックイシューとして語られている。私はといえば、一度転職する際に数ヶ月やっていた派遣の事務仕事バイトで初めて「お茶をいれてください」と言われて、急須でお茶をいれるのに四苦八苦したことがある。後にも先にも命令されてお茶をいれたのは、あれ一度きりだった。

10年でこれほど変わってしまうのだ。確かに、今、私が学生で新卒だったらどうなんだろうと考える。今は個人でなんでもできる時代になった。インターネットやフェイスブックやTwitterは、まるで履歴書や自分のライフスタイルや信念をずっと無料で宣伝しているようなものだ。ちょっと気が利いた子なら、すぐ自分の得意分野で注目されるような状況に持っていくことも無理な話ではない。まったく世の中は便利になった。

もちろん音楽業界は従来のビジネスがすたれ、それをカバーするだけの新しいビジネスモデルが生まれておらず、いったい今後どうなるかという不安だらけなのだけど。

話がそれた。でも今思い出して、すごく印象に残ったエピソードは、どちらかといえば官僚としての村木さんの通常の日常の生活の方だ。なので前半もホントに読み応えたっぷりだ。(だからあの帯はちょっと賛成しない)

そして「逮捕」の日は突然やってくることになる。これについては、ホントに言いたいことは100万くらいある! いったいどうしたらこんなことが許されるのか。そしてこの
村木さんが一度だけ泣いたという取り調べの場面には本当に激怒した。これから読む方のために内容は黙っておくが、この國井弘樹という検事のありえない発言は本当に許せない! まったくこいつは最低最悪のやつだ。ちょっとネットで検索すれば彼の悪行がいくらでも出てくるから是非ご自分で調べて見て。動画とかも豊富にネットにあがっている。

こいつは真剣に生きている者の敵である。それを思い出すとホント悔しくて私ですら今でも泣けてくる。でも家族のことなどを書く村木さんはユーモア満点で、旦那さんやお嬢さんたちの爆笑発言でもたくさん笑わせてもらった。

本を脇においておいて、一連の村木さん事件で印象的だったのはの逮捕のときの舛添さんのコメントだ。速攻で「あの人がそんなことをするわけがない」と発言してらしたのはすごく覚えている。もちろん村木さんの普段の行いということもあるが、ああやって「あの人がそんなことをするわけがない」と自分の考えを速攻で言えるような人になりたいし、言われるようんもなりたいと思う。舛添さんの名前も何度かこの本には登場している。

官僚=悪という考え方を私たちも改めないといけない。(でも外務省のときの記述には笑いました。まさに想像どおり)

そもそも有罪になる確率が99.9%っていったいどういう国なんだろ!! そんなに検察は正しいのか?(このへんについては、また別の話題で書きたいので、そこで書きますし、私なんかよりも江川紹子さんが詳しく本当に熱心に追求されている。江川さんの女性ジャーナリストの鏡だ!)

あともう一つ。書いておきたいことがある。それはマスコミのことである。逮捕前からマスコミにさんざん追い回され、多大な迷惑をかけられ、ひどい目にあった村木さんだが(実際,逮捕された時、今夜はマスコミが来ないと思ってほっとして爆睡したというのである!)、マスコミのひどさについては事実関係を説明し、自分の気持ちをたんたんとお話しされるだけで、あとは「自分で考えてください」と促しているだけだった。そこに強いメッセージを感じた。マスコミも検察も同じくらい悪いと思った。

PS 村木さん関連の記事はここにリンクがたくさんある。新聞のweb記事はリンク切れが多いが雑誌の記事は読み応えあり。ぜひ。

PPS そうそう、あれから阿川さんの本は「聴く力」の後、続けて何冊か読みました。twitterでレコメンしてもらった「男は語る〜アガワと12人の男たち」という対談本と、それから檀ふみさんとの交換エッセイ「ああ言えばこう食う」を手にいれた。どちらも絶品。特に壇さんとの交換エッセイはホントに爆笑。五木寛之さんが最後に語っているとおり、読みおわった後、まったく何も残らないのがいい! そして私もこんな風に親しい友達には口が悪くなるのが身上ですが、そういう女友達はホントにいいなぁーと思ったのでした。とってもおすすめということで、下にリンクつけときます。