何が音楽の中心なのか?

今朝ハフポスで話題になってたこの動画…(クラシックの音楽家の人たちが、何かの理由で飛べなくなった飛行機の中でイライラする乗客のために音楽を演奏、というエピソード)



おいらに言わせりゃ、こっちの方が上だよ…ということで…   ウチの若いアイリッシュ・バンド、グラーダの一行。今はソロ活動が忙しいみたいだけど、また日本に来てほしい。



トラムの中でもやっちゃうよ! アラン(フルート)、さすが!



しかし先のクラシックの皆さんの映像を見ていて驚くのは、こういう状況でありながら、まだ楽譜を必死で必要としているところ。いつだったかフラッシュモブ(東京の熱狂の日の映像だったような記憶あり…)でも、あの環境下、譜面台をいそいそと広げ、屋外での演奏に飛びそうになる楽譜を必死で押さえる皆さんに驚愕したものだが…。クラシックの場合、とにかく譜面がすべての中心らしいので、譜面がないと音が出せないということなのだ。なるほど。

というわけで演奏する時、何がそのアンサンブルの中心になっているかというのは非常に面白くてバンドによって全然違う。たとえば普通のロックバンドだったらドラムのリズムに乗っかることが基本中の基本だろう。一方シンガーがいる場合は、ドラムも無視してシンガーがすべてを引っ張る時がある。(たとえばメアリー・ブラックは独特のリズム感あり。ポール・ブレイディも。エディ・リーダーも縦にドラムが入ったら、すべてぶちこわしだ)

そして、たとえばヴェーセンなんかは、あきらかにウーロフのニッケルハルパが、すべての中心にある。



ヴェーセンが面白いのはスローな曲になればなるほど、この状況は弱まり、演奏ではなく楽曲のメロディが主体になるところ。例えばこれなんかは楽曲主体だよね。



メロを書いたのがローゲル(ギター)だからかも。この曲におけるアンサンブルでは、「個人の演奏」ではなく、「主旋律のメロディ」が中心にどっかり位置することが重要とされる。この曲においてはウーロフですら、メロディにたいして非常に丁寧に向き合いながら演奏している(いつもがいい加減という事ではないですよ/笑)。ミッケ(ヴィオラ)のセカンドラウンドの裏メロディなんかまさにそうだよね。あぁ、うっとり…

話がそれた。つまりヴェーセンがウーロフというものすごいメロディ奏者の「演奏」を中心としたあくまでも二等辺三角形なのに対して、今週いよいよ来日するラウーは全員が楽曲に向けて均等に努力することによって生まれる、これまた奇跡のアンサンブルなのだ、という事をコンサートに来る皆さんにお伝えしておきたいのだわ。

前の投稿にも書いたが、いわゆるラウーには楽器ヒーローはいない。こういうバンド・アンセンブルのおもしろさは、実は私はケンソーに学んだ。ケンソーを知るまで、そもそもインストの音楽についてちゃんと自分で理解していたとは言いがたい。ケンソーのリーダーは間違いなく清水さんだが、あのバンドは清水さんのギターヒーロー度を世間に向かって表現するためのバンドではない。ケンソーの真のリーダーは「清水さんの演奏」ではなく「清水さんの書く楽曲」なのである。メンバー全員が「あぁこの曲めっちゃいい曲!」と思って演奏している。曲に引っ張られて、全員が均等に進む。それはドラムでさえも。ドラムでさえも楽曲を歌うことを要求される。

ラウーも同じだ。楽曲がまずある。そしてそのメロディはトラディショナルなスタイルから派生しているだけあって極めてシンプルな事が多い。その楽曲に向かって、みんな演奏する。そして、もっと言えば楽曲に対する尊敬の態度がものすごく要求されるバンドなんだと言えるだろう。ラウーにおいて、アレンジ,演奏、すべてにおいて手抜きは絶対に許されない。



だから最近UPされたこの映像をみて面白いなーと思った。こんな風に一人のメンバーを中心としたアンサンブルとなると(下記映像参照)、とたんに「ラウー度」が消滅する。でも、これはこれで牧歌的でチャーミングだけどね。クリスの真剣にメロディを追う表情が可愛すぎるよ〜



そしてやっぱり言えるのは、世間には、この両方の、どちらも存在しないバンドがあまりに多いということ。楽曲か、演奏か… バンドをまとめる何か力強いものがないとバンド・アンサンブルとしては不合格だと思う。楽曲に対する真面目な態度もない、全体をひっぱる演奏者もいない。そういうバンドは単にのっぺりした演奏で、のっぺりと終わる。そういうインストバンドが世の中の95%じゃないかな。

音楽は素晴らしい。もうなんかネット上のディベートにおけるつまらない最大公約数の民主主義にはあきあきしたし(笑)くだらない音楽でも素晴らしいのは、はい、はい、はい(笑)分かっているけど、やっぱり私は良い音楽を聞かないと時間がもったいないと思うのである。これは生き方の問題だ!

ラウー来日公演はもうすぐ!! 聞き逃すなよーーー!

6月17日 梅田クラブクアトロ
6月18日 名古屋クラブクアトロ
6月19日 渋谷クラブクアトロ
すべての詳細はこちら!
http://www.plankton.co.jp/lau/index.html