メアリー・ブラック物語 18

そう! これは超嬉しい出来事だった。2009年3月。メアリーの次男ダニーが自分のバンド、ザ・コローナズを率いて来日したのだ。それはアイルランド政府観光庁さんのおかげだった。アイルランドの観光促進のため、そしてコローナズの宣伝のために、こんな映像も作った。コローナズがダブリンの町を紹介する、というクリップだ。




もともと企画としては伝統音楽バンドを呼びたいという話だった。でも伝統音楽バンド呼んでも、それだとを見に来る人はいつもと一緒ですよ、と私が提案したのだ。アイルランドについては新しいことをやらないとダメだ、と。決まった時期もギリギリだったゆえ、時間もなかった。3月にまともな伝統音楽バンドは、みんな北米で営業中だよ、と。スケジュールが空いている伝統音楽の連中といったら、ろくでもないのばっかりだ。そういうバンドの来日にウチが協力するのもイヤだったし、何より伝統音楽だともう来るお客さんの顔も想像できちゃう。そんなことしてもしょうがないでしょ、と。でも、このバンドならきっとアイルランドとは関係ない若い人をたくさん呼べる、と。そんな風に提案したのだ。

そもそも、あの頃はアイルランド伝統音楽の暗黒の時期で、ホントにろくなバンドがいなかった。ケルティックタイガーの名の元、ホントに音楽が詰まらなくなってしまっていた時期だったからね。

最初にダニーに会ったのはダニーが5歳くらいの時。左の写真は私が過去に作ったチラシ。ラジオ局とかに配る用に作ったもの。コナーとダニーの名前が間違っている(笑) まぁ、つまりこのくらい小さいときからダニーのことは知っているわけだ。

で、もちろんダニーが大きくなってからも何度か会っていた。メアリーのケリーのお家に遊びに行ったときとか。もう記憶がさだかではない。

で、最初にダニーが歌っているのを見たのはメアリーのステージの前座での事だった。キラーニーだかどこだかメアリーの地方公演で、やたらデカいステージ(5,000人くらい)だった。その時はアコギをかかえて一人で出てきた。自作曲よりも伝統曲のBlack is the colourを歌っていたのを記憶してる。フォーキーな感じでいいな、と思ったけど、それ以上のことは感想はなかった。楽屋で会ったデカくなったダニーに「ダニー、いい声してるのね」と声をかけたらダニーは照れたように笑っていた。でも、それだけだ。

その一方ではデイヴ・マネリーのギタリストのギャヴイン・ラルストンから「ダニーのバンドがいいんだよ。知ってるか? すごくいいんだよ、トリオでやっててさ。(当時コローナズはトリオだった)オレのスタジオに時々練習に来てんだけど、すっごい真剣にやってる。あれはきっと上手く行くよ」とも聞いていた。

でも私が実際コローナズを最初に見るまでには相当時間がかかった。で、やっと見れた時はびっくりしたね。デビューCDシングルの発売の記念ギグだったのだが、ダブリンのWhelansが見たこともないくらい満杯になっていた。たまたまダブリンにいた私は、Whelansのリスティングを見て、あれ、これダニーのバンドじゃない?と思い、ジョーに連絡を取ったのだ。ジョーは良く見つけたなーと呆れていたけどね(と、そのくらいジョーもコローナズの将来については、まだまだ本格的には考えていなかったようだ)。ソールドアウトだったのを招待で入れてもらい、私はメアリーやジョーたちに用意されたバンドメンバーご両親貴賓席(笑)に座らせてもらってゆっくり公演を見ることが出来た。お客さんはスタンディングの超満員でモミクシャだったが…。若い女の子ですごい熱気だった。私はメアリーの隣に座っていたんだけど、ずっとメアリーが一緒に歌うもんだから、うるさかったねー(爆) でもダニー、もうめっちゃくちゃかっこ良くて感動した。これはかっこいいなーとマジで持った。演奏もタイトですごくいい。

公演の翌日はHMVでシングル発売記念のインストアライブがあるというので、私はダニーの応援しなくっちゃ、と思って飛んでいった。人が少ないと可哀想だからね。インストアライブはいろんな意味で、すごく過酷だ。私は直前までルナサのトレヴァーのスタジオでミーティングがあり、このインストアの直後には御大PB様とのアポもあったから、もうバッタバタで、タクシーを飛ばした、飛ばした。ヒーヒー言いながらグラフトンのHMVに到着したらメアリーもこっそり観に来てた。もっとも演奏が終わるとスッと姿を消してたけどね。いや〜大変な人だかりでしたよ。私が心配する必要なんか1つもなかった。そして私はCDシングルを5枚も買って応援しなくちゃと張り切るただの親戚のおばちゃんだった。でも私の前にサイン会に並んだ子は10枚くらい買ってたよ(笑)。商品が足りなくなって店の人があわてて在庫を取りに走ったほどだった。サインの順番が来たら名前を聞かれ「ヨーコ」と言ったらダニーが「あっ、ヨーコ」と気づいてくれて、立ち上がって握手してくれて皆に紹介してくれた。か、可愛い♥ 

そしてその直後に、今度はポール御大と待ち合わせしていたので、私はポールとフレンチレストランでデート♥ そして買ったCDの1枚をポールにあげたのだった。その後一緒にフレクトーンズを観に行った。フレクトーンズの公演にはポールのマネージャーのジョンの息子のダラも来ていてダラは「なんでコローナズ知ってるんだ!」と言って本当にびっくりしてた。というのもダラはコローナズの専属フォトグラファーでもあり、時々キーボードを弾くサポートメンバーでもあったからだ。ホント世間って狭いわ…

そうこうしているうちにコローナズはファースト・アルバムが出て内容がとにかく良かったし、アイルランドですごく売れて、ものすごい盛り上がりを見せるようになった。そこからの展開はホントびっくらだ…

すごいでしょー。こんな大きなステージでやっちゃうわけ。で、お客さん、歌う,歌う、すごいんですよ!




…とまぁ、そんなわけで、その数ヶ月後に私のところに来た政府観光庁さんのオファーである。これは絶対にコローナズを呼ぶしかないだろ、と思った。

そしてコローナズなら、伝統音楽系では絶対に不可能なレコード・ディールもゲットできる!と思ったのだ。そうすれば普段自分が手の及ばないエリアまでアイルランドの音楽を広げることが出来る。そんなわけで、W音楽出版のSさんが、コローナズをビクターさんに紹介してくれた。やった。ホント、伝統音楽バンドじゃ、こういう展開はありえないからね。

写真は感動的なタワーレコード新宿! ううう、涙出ちゃうよ、これ…

ありがとう、ビクターさん…















でも、もちろん今回来日するのは、ダニーの母ちゃんの方です(笑)メアリー・ブラック再来日決定。5月19、20日。コットンクラブにて。詳細はこちら。メアリー・ブラック物語、まだまだダニー編が続きますよ。