メアリー・ブラック物語 8

こんな懐かしいもんが出て来た。おそらくラジオの洋楽番組へのエントリーシートだ。たぶんTBSとか、そのへんだと思う。

今見返してみれば、全然プロモーションのポイントが掴めてない恥ずかしくなるようなプロモーショントークだが、それでも先生方のコメントを付け加えたりしているところが可愛いオレ(笑) しかしせめてアイルランドで56週TOP30にチャートインとか、アイルランドでダブルプラチナとか、HOT PRESSの人気投票で女性アーティスト1位とか…もう少し具体的なデータが欲しいものよのう…

修正液でボロボロになっているところが、またいいね。おそらくファックスでのエントリーだったと思われる。

さて! 91年になってメアリーの2回目の来日。これもPENTAXの冠がついて、とにかく成功に終わった。

私はもうその頃にはホントに会社を辞めようと思った。そのくらい自分でも切羽詰まっていた。もう音楽の仕事はこりごりだと思った。レコード会社に2年間、契約社員として勤務し、その後正社員になって9ケ月目のことだった。当時、会社に女性社員はほとんどいなかったので、私とやはり同時期に入社した大阪のM林(やはり女性)が社員になったというのは会社内的には相当センセーショナルなことだった。M林はどうだったか知らないが、でも私にとってみればもともと会社に残りの職業人生ささげるつもりないし、特に無意味な組合活動に呼び出され時間が取られるのがホントいやだった。頼んでもいないのに社員にしやがってくらいに思ってた。

辞める、と言った私に部長は「せっかく社員にしてやったのに、社長になんて言えばいいんだ」と言ったが「結婚するとでも言っておいてください」と私もブチ切れた(笑)。でもホントに部長には悪いことしたよ。部長はその後、出世して2年くらい前に定年退職されているはずだが、最後社内NO2にのぼりつめた彼にとって唯一のキャリア上の汚点になってしまったかも、だ。ごめんなさい、部長。次回部下になることがあったら、もっといい子になります(笑)。

一方、仲良しの大阪のM林は会社に残った。もっともM林は偉いので、会社の言う物なら文句もいわず押す超優秀な会社員だった。その彼女も最終的にこのレコード会社を辞め今は某巨大レコード会社で超偉い宣伝部長になっている。私も次、会社勤めする機会があったら、部長職になるまで頑張ろうと今では思っている(ウソ)。

まぁ、とにかく私は会社の言う押しものを素直に押すことが出来なかったし、そもそも会社という組織には体質がまったくあわなかった。会社を辞め、しばらくバイトでつないだあとは、海外に行きたい、住みたいと思っていたこともあって旅行代理店に勤務することになった。海外拠点のたくさんある会社だった。

ちなみにレコード会社に入社する前は旅行代理店に2年ほど勤めていたんだよね。2年といっても実は大学の4年のときはほぼフルタイムで1年バイトし、そして卒業後正社員となって1年…という事で合計2年だ。当時は終身雇用が崩壊しはじめた時期で、外資とかがたくさん日本に上陸し、外資みたいな働き方や、キャリアアップのため転職する方がかっこいいとされていた。私も2年つとめたら次に行くのは当然だろくらいに思ってたところもある。もっともこの最初の会社がすごく良かったから、今こんなに元気に仕事が出来るのだと思うのだが、この会社のこともいつか機会があったら書いてみたいな〜。ほんとにお世話になったから…

と、また話がそれた。でも海外に行って海外移住の下調べをしてみれば、世の中そんなに甘くないのもすぐ分った。日本と違ってヨーロッパは大不況だったし、外国人に職などなかった。特にロンドンに行った時、当時からコーディネイターとして成功してらっしゃった某先輩が「私はどんなことをしてでもロンドンに残る。ウェイトレスしてでも」と言うのを聞いた時、私は目が覚めたのだ。「ウェイトレスじゃ意味なくね?」と。ロンドンには住みたいけど、ウェイトレスはいやだ。今でならどこに住むかではなく、何をするかという事の方がよっぽど自分にとっては大事だ、という事は分る。でも当時は先輩に言われるまで気づかなかったんだよね。

そんなこんなもあって焦ってへんな仕事をするよりは旅行業界でキャリアを積もうと思ったのだ。ここでも結構恵まれていた私は、普通代理店というとオペレーターを1、2年やらされる…というのが常識だというのに、いきなりヨーロッパ営業担当という花形部署に抜擢された。しかも自分が英国/アイルランドおタクなのをいいことに、ロマンチック街道とかパリとかローマとか、すべて無視して、英国オタク向けツアーばかり作っていた。だってハワイとかグアムとか行ったことないもんねー(爆)で、かなりワガママ放題に仕事をしていたが、でも良いクライアントさんや航空会社さんに恵まれそれなりに楽しかった。特にローバーの工場やシルバーストーンサーキットに行ったツアーは本当に楽しかったなぁ。そして旅行会社勤めしつつも、海外にはちょくちょく行っていた。私にとってはメアリーのコンサートともなれば行くのはまったく自然なことだった。

そして、ひょんなことから、メアリーに音楽業界に引き戻されることになる。

メアリー・ブラック再来日決定。5月19、20日。コットンクラブにて。詳細はこちら。4月23日に私がライナーを書き選曲もしたメアリーのベスト盤が出ます。